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「自分たちのオフィスは自分たちで作る」都庁の未来型オフィス:環境局自然環境部編
都政の構造改革では、「自分たちのオフィスは自分たちで作る」を合言葉に、デスク、固定電話、紙などに制限された働き方を抜本から見直し、フリーアドレスの導入等により、柔軟で自由に働けるオフィスを都庁内に展開する「未来型オフィス実現プロジェクト」を進めています。
今回、昨年度整備した6部門のうち、環境局自然環境部の未来型オフィスにお邪魔しました。
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今回のnoteでは、整備の中核を担った課長代理の粕谷さんと若手の高橋さんに、オフィス改革までの道のりやそこに込めた思いについてお話を伺いましたのでご紹介します。
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まずは若手のプロジェクトチームの結成から
―――今回のオフィス整備はどのようにはじめたのでしょうか。
【粕谷さん】
構造改革推進チームからの依頼をもとに、環境局長から自然環境部で未来型オフィスを整備してほしいと打診が来たのですが、はじめは戸惑いました。部の管理担当として、このまま進めてしまうと「やらされている」感が出てしまうのではないかと危惧していました。
でも、どうせやらなきゃならないのなら、前向きにやりたい。自然環境部長とも相談し、オフィス整備の推進役として、若手を集めて未来型オフィスを検討するプロジェクトチーム(PT)を立ち上げることにしました。
そこで、まずは私から自然環境部全体に対しこんなメールを送りました。
今年度、我が自然環境部が未来型オフィス整備職場に選ばれました!!!
生産性を高めるオフィス空間(集中作業スペース、非対面型デスク、多摩産材の活用など)を自分たちの意見を取り入れながら作り上げていくことはとてもやりがいがあることだと感じております。
つきましては、自分たちがこれから働くオフィスを自分たちで考え、作っていく部内PTのメンバーを大々的に募集いたします。
ワクワクする仕事だと思いますので、興味がある方、やってみたい方、粕谷までご連絡をお待ちしております。
一緒にかっちょいい職場を作っていきましょう!
メンバーは、部内のそれぞれのラインに人を出してもらう形とはせず、フラットな形で募集して、前向きに検討してくれる人を集めることにしました。
はじめはなかなか手が挙がりませんでしたが、徐々に参加してくれる人が増え、最終的に12人のメンバーが参加してくれることとなりました。
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スローガンを決めて、みんなで進める
―――未来型オフィス検討PTでは、具体的にどのような議論が行われたのでしょうか?
【粕谷さん】
PTではオフィスのレイアウトについてはもちろん、新しいオフィスでの働き方や文書管理のルールについても議論し、部内から意見や要望の吸い上げなども行いました。
PTの最初の段階で決めたのは「スローガン」です。
私たちの目指す自然環境部らしいオフィスとはどんなものか、全員の認識を合わせるべく、PTメンバーから自由に意見を募り次のように決めました。
「みんなが主役、つながるオフィスへ」
「つながり」という言葉が複数のメンバーから出ました。デジタル化、フリーアドレス化で情報共有がしやすくなり、部内の横のつながりが発展する。そして、部の全員が当事者意識を持ち、主役としてオフィスを作っていきたい。そんな思いで決まりました。
PTでの議論は、メンバーが持ち回りで部内に「ニュースレター」として議事録を付けてワクワクする文面でメールを送るなど、みんなで作り上げていく空気を作ることを心がけました。
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【粕谷さん】
未来型オフィスの参考になるような民間企業のオフィスにもPTメンバーで視察に行きました。とあるオフィスを視察した際にテントを見たことがきっかけで、自然環境部のオフィスのシンボルとして導入することにしました。
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未来型オフィスで「窓口」をどう整備するか?
―――オフィス整備にあたって議論となった点を教えてください。
【粕谷さん】
自然環境部では、狩猟免許の更新や狩猟者登録、開発計画等に伴う緑化計画書の届出等や開発許可、温泉掘削等の許認可など、都民や事業者の方に応対する「窓口」を持っています。
この「窓口」を新しいオフィスでどう整備するか、議論になったのですが、当時のPTには、水環境課の都民対応の窓口に関する担当者はいませんでした。そこで水環境課で窓口の担当を行っていた高橋さんに声をかけ、途中から参加してもらうことにしました。
―――粕谷さんから声をかけられていかがでしたか?
【高橋さん】
実は、未来型オフィスPTは最初の粕谷さんの募集メールを見た時から興味を持っていましたが、なかなか手を挙げることができず、ニュースレターを読みながら大変そうだなと思って遠くから見ているだけでした。PTへのお誘いを受けて参加する決心をしました。
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―――窓口の整備について工夫した点を教えてください。
【高橋さん】
自然環境部の窓口には日々いろんな方がいらっしゃいます。普段の業務では事業者の方から、申請書類の事前相談のための来庁を希望されることも多くあり、対面での窓口は残しておく必要がありました。
これまでのオフィスでは課ごとに窓口を設けていて、一度に多くの方が来訪されるとお待ちいただくことになるので、部内に1つあった打ち合わせスペースを使って応対することがよくありました。ただ、その打ち合わせスペースも埋まってしまっていると、庁内で空いている会議室を探さないといけませんでした。
そこで、新しいオフィスでは、すべての窓口を一体化させてそれぞれのスペースを融通しあえるようにし、来庁者用カウンターには可動式テーブルを設置することで、来庁者の人数に合わせて柔軟に対応できるようにしました。
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その結果、窓口に大人数で来られた場合も、机を組み合わせることで対応できるようになりました。
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新しいオフィスでは中間什器を減らした分、ほかにも打ち合わせスペースが増えたので、スペースの確保で悩むことがなくなりました。
文書を削減し、管理職の理解を得る
―――オフィス整備をする中で特に課題となったことを教えてください。
【粕谷さん】
文書の削減は難しい作業でした。フリーアドレス型のオフィスにしていくためには、袖机や収納棚などの中間什器を減らしていく必要があります。そのため必然的にデスクや職場にある紙も減らしていくことが必要となりました。
そこで、部で使用・保管している文書の全量を調査し、どの文書を廃棄/電子化するかの判断基準や電子化した際の管理方法など、デジタルサービス局の構造改革推進チームの担当者にアドバイスをいただきながら進めました。
とはいえ、今まで紙でうまく回っていたことを変えていくわけですから、「なんでこんなことをやらなければならないんだ」と思っている職員もいたと思います。でも、新しいオフィスとなったいまとなっては、紙を使わなくてもなんとかやっていけるもので、部内でも理解は確実に進んでいると感じています。
―――みなさんで議論されたオフィスレイアウトですが、管理職のみなさんの反応はいかがだったでしょうか。
【粕谷さん】
自然環境部長の存在は大きな助けとなりました。部長からは「これから何十年もオフィスを使う若手で決めてほしい」と言っていただき、私たちの意見を尊重してくださいました。
また、部長自ら「部長室、いらないから」と言っていただき、これまで部長室として使用していた個室は新しいオフィスでは打ち合わせスペースとなりました。部長もいまではフリーアドレスで、私たちのすぐ隣で仕事をしています。
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新しいオフィスで働いてみて
―――未来型オフィスとなった職場で働いてみて皆さんどう感じていますでしょうか?
【高橋さん】
公用携帯としてスマホが支給されて、テレワークがしやすくなりました。また、ディスプレイも配備されたことで、紙を出力する機会は減り、これまでは紙を出力して行っていた打ち合わせも、ペーパーレスで行うことが普通になりました。
フリーアドレスになったことで課長にも話しかけやすくなって、コミュニケーションも活発になったと思います。
オフィスを変えてもらったことが、仕事の進め方を変える、良いきっかけになったと思います。
【粕谷さん】
「変えてもらった」んじゃなくて、僕たちがオフィスを「変えた」んだよ。
【高橋さん】
そうでした!
―――働く中で見えた課題はありますか?
【粕谷さん】
窓口に来られた都民の方が職員に声をかけづらそうにしている様子が見られることがあり、そこは課題だと思っています。また、テントの周辺にいると、打ち合わせの声がかすかに漏れてきてしまうことがわかったので、そこも改善したいと思っています。支給されたスマホの音声が聞こえづらいという声も出ていて、その点はデジタルサービス局に対応を相談しているところです。フリーアドレス化で誰がどこに座っているかわからない、という声も聞こえてきました。
こうした課題も踏まえて、今年度は新たに未来型オフィス運用PTを立ち上げました。高橋さんにも引き続き参加してもらって、新しいメンバーで検討を進め、オフィスをバージョンアップしていきたいと思います。
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これからの未来型オフィスの展開
都政の構造改革では、今年度新たに15部門へのオフィス整備を予定しています。
オフィス整備には困難も伴いますが、今回ご紹介した自然環境部のように、それぞれの職場で働く職員が自分事として「変えていこう」と前向きに取り組んでいただけるよう、構造改革推進チームもサポートを行い、すべての職員が自分の理想のオフィスで働ける環境を目指し、一歩ずつ着実にプロジェクトを進めていきます。
【ご意見募集】
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