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都税事務所の私たちがデジタルで変える新しい仕事の進め方
東京都内には23区と立川、八王子に25の都税事務所があり、都税の課税・徴収等の業務を行っています。都税収入は2021年度決算で5兆8,000億円を超える規模となっています。
東京都主税局では、キャッシュレス納税や各種証明申請の電子化など「スマート都税」の取組とあわせて、「未来型オフィス実現プロジェクト」としてそれぞれの都税事務所でオフィス改革やデジタルツールを用いた仕事の進め方の変革などの取組を行っています。
今回のnoteでは、都税事務所で行われている取組と、事務所の若手職員が宮坂副知事と直接意見交換をしたことをきっかけとして、事務所の取組がさらに発展していった様子を追いかけました。
■都税事務所でデジタルで変える仕事の進め方
都税事務所で若手職員が中心となって進められているデジタルを用いた新しい働き方の実践をご紹介します。
板橋都税事務所では、2022年3月に業務に応じて自由に変形可能な執務スペース「ミーティングゾーン」を導入し、大型ディスプレイとWi-Fiを整備し、所内会議・研修等のペーパーレス化を実現するとともに、集中ブースを設置し、所外とのWeb会議・研修等に参加しやすい環境を整備しました。
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「ミーティングゾーン」を整備することで、これまでの打合せでは課長だけが専用端末の画面を見て、その他の職員は紙で資料を持参していたところ、参加者全員で同時に同じ画面を見ながら協議することができるようになり、多角的な指摘で議論が活性化し、ペーパーレスが進みました。
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若手職員が自発的に「DX推進委員会」を構成し、ミーティングゾーンの効果的な活用方法等について積極的に検討を重ねています。まずは徴収課において、一人1回の利用を促すルール作りを通じて、17日間の短期間で課題を抽出・改善し、その後の事務所全体での取組に繋げるなどスピード感を持ってアジャイルに実践を重ねてきました。
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板橋都税事務所内でミーティングゾーンの活用が広がり、今では所課長会や協議会の運営のほか、DX関連のオンラインセミナーなどで活用されています。税目に関する事務担当者の協議においてもミーティングゾーンを活用し、事務所を超えた情報共有を行っています。
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墨田都税事務所では、「デジタルチャレンジプロジェクト」と題して若手職員が中心となってPTを結成し、DX推進に関する研修を企画したり、Web会議によるランチミーティングを通じてデジタルの知識の共有を図るなど、デジタルツールを活用した新しい仕事の進め方を実践しています。
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墨田ではDX推進の第一歩としてまずは事務所の職員全体でデジタルツールに慣れ親む機運を作るべく、昼休みの時間を活用してTeamsを利用したランチミーティングを実施し、はじめは接続するだけでも大変だったTeamsを通じて職員同士のコミュニケーションが活発になりました。
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■副知事と話して感じたこと
9月14日、都税事務所で新しい動きがあることを聞きつけた宮坂副知事が板橋都税事務所を訪れ、板橋、墨田(オンライン参加)の若手職員が自分たちの取組について説明し、副知事と直接意見交換をしました。
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さて、宮坂副知事と直接意見交換をしてみて、都税事務所の職員はどんなことを感じたのでしょうか。直接話を聞いてみました。
板橋都税事務所の職員に聞きました
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【佐藤さん】
宮坂副知事が「小さくてもいいので、自分たちの手で"変革"を起こしたという成功体験が次につながる」ということをおっしゃっていて、まさに自分たちが考えていたことと同じだと思いました。ミーティングゾーンの活用を考えるにあたって、いきなり板橋都税事務所全体でやっていこうとすると物事がうまく回らないと思ったので、まずは小さい単位、期間で始めて、小さくてもいいので「実績」を作ることを意識して取り組んでいました。
【丸山さん】
副知事に「デジタル化に無関心な人をどうやって巻き込んでいけばいいか?」という質問をしたところ、「最初から全員ができるなんてことはない。まずは新しいことに飛びついてくれる少数の"アーリーアダプター"をつかまえて、そこから徐々に広げていくことが大事だ」とおっしゃっていたことが印象に残りました。また、「まずは業務時間の1%でもいいから職場を良くすることに時間を使おう」とおっしゃっていたことも印象的でした。
【佐藤さん・小久保さん】
最初はとにかくみんなに集中的に使ってもらうことが大事だと意気込んでルールを作ったものの、内心は不安でした。でもやってみると、DX推進委員会のメンバーではない方からもここはこうしたほうがいいんじゃないか、といろんなアイデアをもらうことができて、職員が自分事としてとらえて参加できるきっかけを作ることができてよかったと安心しました。
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【嶋本さん・太田さん】
副知事が「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」ということわざを紹介していたことが強く印象に残っています。「"のどの渇き"を得るためには、外に飛び出して"気づく"ことが必要。民間などの先進的な事例を実際に見に行ってほしい」と副知事から問いかけがあり、外の世界を見てみたい、と思いました。
【斉藤さん】
コミュニケーションの重要性について副知事が話していることも印象に残りました。今回の取組は板橋都税事務所だけでやっていることなのですが、事務所を超えて連携していきたいと思いました。
墨田都税事務所の職員に聞きました
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【山岡さん】
副知事が「ツールが人の振る舞いを変える」とおっしゃっていて、まさに私たちのやっていたことだと思いました。墨田都税事務所にはデジタルツールに慣れ親しんだ人は少ないので、大きな変革に取り組む前にまずはツールに触れて、楽しんでもらうことからはじめようと考え、所にTeamsのアカウントが配備されたことを機に「ランチミーティング」を発想しました。
【西岡さん】
副知事と意見交換ができると聞いて、最初はこんな小さな取組で大丈夫か、もっとすごい変革を起こしていないとダメなんじゃないかと思って不安だったのですが、副知事からコミュニケーションの重要性、特に「民間ではランチの時間を大切にする」という話があって、「自分たちの考えていたことは間違いじゃなかったんだ」とわかりうれしかったです。
【別所さん】
私もそうなのですが、コロナ禍でなかなか職員同士の横のつながりを作りにくくなっていて、このランチミーティングはそうした人のつながりを作ることができているなと感じています。
【西岡さん】
墨田都税事務所ではだいたい3分の1くらいの職員がTeamsを使ったランチミーティングに参加してくださったのですが、野望として、あとの3分の2だけでなく、他の都税事務所の職員ともつながっていけないかと考えています。「いいアイデアは"会議"より"会話"から生まれる」と副知事がおっしゃっていたのですが、事務所を超えて意欲の高い人同士で集まればそこからイノベーションが生まれてくるんじゃないか、とそんな期待をもっています。
■デジタル化の輪を広げていく
9月の訪問後、副知事からそれぞれ宿題を受け取った都税事務所の職員は、それだけにとどまらず「行動」を始めました。
10月31日、墨田、板橋、江東の都税事務所の職員でTeamsでつながり、ランチミーティングを行いました。事務所の垣根を越えて職員が個人同士でオンラインでつながるのははじめてのことです。副知事と話したときには構想段階でしかなかった事務所を超えた連携が早くも実現したのです。
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板橋都税事務所のメンバーは、副知事からのアドバイスをもとに、実際に外部へ飛び出し、新たな知見を取り入れる行動を起こしました。DXに関する展示会「CEATEC2022」に行ったほか、11月9日には渋谷区役所の新庁舎を訪れ、最新のデジタルツールを用いた新しい働き方を実際に目にしました。
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また、12月11~13日にかけて、海外研修「国際競争力強化プロジェクト」の一環として、墨田、板橋、本庁の職員で韓国ソウル市に赴き、現地の様々なデジタルサービスの視察を行ったほか、現地機関との意見交換を通じ、税務事務のデジタル化の先進的な事例を学んできました。
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さらに11月8日、10日には板橋、墨田の若手職員が主税局内職員向けの「DXウェビナー」に登壇し、本庁を含めた局内の職員に向けて、それぞれの事務所からTeamsを使ってリモートで自分たちがこれまでやってきたこと、そこで考えたこと、感じたことを自らの言葉で伝え、主税局のDX推進に向けた更なる機運醸成につなげました。
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ウェビナーでは聴講している職員からチャットで質問が寄せられ、多くの意見交換が行われるなど、盛り上がりを見せていました。
最後に
都税事務所の職員が自ら考え、行動することで自分たちの働き方を変え、さらに副知事と直接意見交換したことをきっかけとして、さらなる行動につなげ、自分たちの経験を局内の仲間に伝えることでその輪を広げていこうとするダイナミックな変化をこの数か月で目の当たりにしました。「自分たちのできるところから小さくはじめよう」と若手が中心となって主体的に行動していることが強く印象に残りました。
「変革」というと派手な取組ばかりが注目されてしまいますが、都税事務所のこうした現場の地道な変革にも光を当て、「自分たちのオフィスは自分たちで作る」のコンセプトのもと、構造改革推進チームとしても都税事務所だけでなく、東京都のあらゆる事業所を対象として変革のムーブメントを起こしていけるようサポートしていきます。
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