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「政策って、デザインだ。」都庁職員みんなで実践する #デジタル10か条
2022年3月、都民のみなさまに品質の高いデジタルサービスを継続的に提供していくため、すべての職員で共有していく「価値観」として、「デジタル10か条」を都庁としてはじめて定めました。
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この10か条はもちろん作って終わりではなく、職員に広く知ってもらい、理解いただくことが不可欠です。そこでこのたび、こんなポスターを作成しました。
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今回のnoteでは、担当のデジタルサービス局の幸田さんと高松さんにお話をうかがい、このポスターを入り口として「#デジタル10か条」についてご紹介します。
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■デジタル10か条を作った経緯
―――「デジタル10か条」を定めた背景を教えてください。
【幸田さん】
これまで、都庁のデジタルサービスは局ごとにバラバラに提供されていて、紙の申請や窓口での手続といったアナログのものを単にデジタルにした行政手続や行政の都合で作られたサービスなどもあり、満足度の高いサービスを生み出しているとはお世辞にも言える状況ではありませんでした。
そこで、デジタルサービス局の発足を機に、サービスをリリースするにあたって共通認識として最低限意識してほしい「価値観」を定めることにしました。民間企業で言えばパーパスやバリューなどと呼ばれるものの都庁版を作ることにしたのです。それがこの「デジタル10か条」です。
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―――デジタル10か条をどのように職員に浸透させていくのでしょうか。
【幸田さん】
デジタル10か条のことが記載された「東京都デジタルサービスの開発・運用に係る行動指針」は40ページを超える方針で、大切なことを記載してはいるのですが、いかんせん行政の固い言葉で表現しているため、読み通すのは職員にとってハードルになります。そこで、正式名称ではなく「デジタル10か条」というキャッチーな通称を設定し、ポスターなど日常業務の中で認識できるよう親しみやすい形で浸透させていくことにしました。
■デジタル10か条、ポスターでご紹介します
「デジタル10か条」をすべての職員に知ってもらうため作成することになったポスター。そこに込められた意味を高松さんに教えていただきました。
【高松さん】
デジタル10か条を浸透させていくため、まずは職員のみなさまの興味を惹くよう、こんなキャッチコピーを作ることにしました。
〈キャッチコピー〉「政策って、デザインだ。」
行政の政策(サービス)の根幹は都民や事業者のためにあるもので、そのために「デザイン思考」を持つことが最重要である、という思いを込めています。コピーでは、はじめて見た方に「どういう意味だろう」と関心を持ってもらえるような「ひっかかり感」を大事にしました。
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コピーが象徴しているように、「デジタル10か条」の一丁目一番地が、【#1】"顧客視点でデザインしよう"です。ポスターのために作成したイラストでは、都民の意見をもとに粘土をこねるように、「都民の声をもとにサービスをデザインする」ということを表現しています。
【#2】"シンプルなサービスを心がけよう"のイラストでは、複雑な形をシンプルな円の形に転換していくことで、サービスを「シンプル」にすることが使いやすさにつながるということを表現しています。
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【#3】"誰ひとり取り残されないようにしよう"のイラストでは、「取り残されないように」というコンセプトをポジティブに転換し、年齢や障がいの有無、言語などに関わらず「みんなが使いやすく、満足できるサービスに」というニュアンスを表現しました。
【#4】"資源(データ)を最大限に活用しよう"のイラストでは、他の行政機関や民間の既存データを連携により取得するなど、イノベーションの源泉としてのデータ活用を意識するため、様々なデータを探している様子を表現しました。
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【#5】"安全安心なデジタル社会をつくろう"のイラストでは、安全安心はサービスの大前提であるという認識に立ち、安心感を「ハート」で表現しました。
【#6】"オール東京一丸となって取り組もう"のイラストでは、都民にとっては、都も国や区市町村も同じ行政サービスであるという認識に立ち、国や区市町村と連携して価値の高いデジタルサービスを提供していくため、3種類の色を使ってみんなが手を合わせている様子を表現しました。
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【#7】"都政の見える化をしよう"のイラストでは、都の保有データは都民の財産であり、オープンにすることで都民からより良いフィードバックがもらえる可能性がある、という視点を持って進めていくため、都民が双眼鏡で取組を眺めている様子を表現しました。
【#8】"都民と共創しよう"のイラストでは、都民は一緒にサービスを作り上げていく仲間であるという認識から、行政と都民がともに「積み木」を積み上げている様子を表現しました。
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【#9】"つねに見直しチャレンジし続けよう"のイラストでは、サービスに完璧なものはない、という認識のもと、小さく始め、試行錯誤を繰り返しながら物事を「見直し」、火をつけて「チャレンジ」し続けるという2つのイメージを表現しています。
【#10】"ともに学びつづけよう"のイラストでは、職員の経験やノウハウは財産であり、そのことを言語化することで、職員同士、あるいは都と区市町村の職員とともに学びつづけ、行政全体の知恵にしていくということを表現しています。
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■ポスター作成の裏話
―――このシンプルなイラストにこんなにも思いが盛り込まれていたとは驚きです。ポスターを作るまでどんなことをしましたか?
【高松さん】
デザイナーさんからポスターの第一案が来たとき、すぐにそれを印刷してハサミでイラストと10か条を切り離し、意図通りに一致させることができるかどうか、部長まで巻き込んでチームで「福笑い」をしてみました。
やってみると、当初のイラスト案と各条の文言がなかなか一致せず・・・。実は満点正解できた人は誰もいなかったんです。文言をイラストでシンプルに表現することの難しさを実感しました。福笑いの結果やチームメンバーの生の声を基にデザイナーさんとお話し、より分かりやすいイラストになるよう、改善を繰り返しました。振り返ってみると、ポスター制作の過程でも「顧客視点でデザインしよう」の実践として、ユーザーテストをできたのかな、と思っています。
―――心がけたことはありますか?
【高松さん】
一目見れば内容がわかるようにイラストの情報量を減らし「ユニバーサル」になるようにしました。また、たとえば、スカートをはいた女性、ズボンの男性といった固定的なイメージに縛られないよう、「ジェンダーレス」なイメージにすることも心がけました。
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■10か条を都庁内に浸透させるために
―――デジタル10か条をどのように職員に浸透させ、行動を促していくのでしょうか。
【幸田さん】
デジタル10か条は「価値観」ですが、具体的な現場での行動を促すため、そうした自主的なアプローチだけでなく、サービスを作る段階で守ってもらう制度的なアプローチとして「ガイドライン」も新たに作っています。既にあるシン・トセイの「ユーザーテストガイドライン」もそうしたガイドライン群の一つとして位置付けていく予定です。
とはいえ、まずはこの10か条を職員のみなさまに知っていただき、存在を認知してもらうことが第一歩として重要です。今回作ったポスターはすでに都庁内の各局のトップである局長室に貼っていただき、幹部のみなさまにも政策決定を行うレクの場で見ていただけるようになっています。
【高松さん】
縦型のポスターだけでなく、横版のデータも作成し、PCの壁紙、オンライン会議の背景として活用してもらえるようデータを配付しています。さらに、eラーニングやワークショップを活用して、職員のみなさまにより知っていただけるように取り組んでいきます。
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―――幸田さん、高松さんありがとうございました。
「デジタル10か条」について記載している「東京都デジタルサービスの開発・運用に係る行動指針」の概要は以下の資料をご覧ください。
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