シビック・クリエイティブの力で東京からイノベーションを #CCBTレポ
2022年10月、アート・テクノロジー・デザインがテーマの新たな創造拠点、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]が渋谷にオープンしました。CCBTは、街・スタートアップ・大学・研究機関などと連携し、東京からイノベーションを生み出す原動力となることを目指しています。
今回は、都政の構造改革戦略「シン・トセイ3」のリーディングプロジェクトの一つにもなっているCCBTについて、今年2月に開催したオープニング記念トークイベント「シビック・クリエイティブとイノベーション:デジタルクリエイティブが提起する、これからの社会」の様子も交えながら、ご紹介していきます。
デジタル関連の特集が多いこの「シン・トセイ」のnoteですが、今回はデジタルとアートの融合がテーマ。普段とは一味違うアーティスティックな内容です!
CCBTとは?
CCBT(シビック・クリエイティブ・ベース東京)とは、アートとデジタルテクノロジーの活用を通じて、人々の創造性を社会に発揮する(シビック・クリエイティブ)ための活動拠点です。「発見」「共創」「開発」「連携」という4つのコンセプトのもと、さまざまなイノベーションを生み出す場として機能を発揮していきます。
CCBTでは、ラボ・スタジオ等のスペースを備え、「CCBT Meetup」「アート×テックラボ」「アート・インキュベーション」「未来提案型キャンプ」「ショーケース」を中心に、アート・テクノロジー・デザインをテーマにさまざまなプログラムを開催していきます。
下記のWEBページからイベント情報にアクセスできます。皆様のご参加、お待ちしています!
トークイベント「シビック・クリエイティブとイノベーション:デジタルクリエイティブが提起する、これからの社会」
2023年2月3日、CCBTオープニング記念特別企画として、トークイベントを実施しました。
イベント当日は、アーティスト・研究者・開発者として社会に問いを投げ続ける福原志保さん、CCBTの名付け親であり社会にクリエイティブなアクションを仕掛けているCCBTコラボレーションメンバーの齋藤精一さん(パノラマティクス主宰)、そしてCCBTスーパーバイザーの宮坂副知事が「シビック・クリエイティブ」というキーワードを中心に、CCBTに期待される役割などについてディスカッションしました。
「シビック・クリエイティブ」に込められた想い
CCBTの「CC:シビック・クリエイティブ」とは、「シビック・テック(※)」から着想を得た造語です。齋藤さんと宮坂副知事が「シビック・クリエイティブ」に込められた「想い」について語り合いました。
※市民がテクノロジーを活用して社会や地域が抱える課題の解決を目指す取組みや技術のこと
齋藤さん:
東日本大震災の後、code for Japanさんが2013年に設置され、みんなで力を合わせて何かを作っていく、もしくは問題を解決していくっていう「シビック・テック」の時代になったと思っています。そのための手段として、「テック」以外にもデザインやアートなど様々な手法があるので、それを道具としていろんな方々に渡して行くような場所になるといいなと思い、「シビック・クリエイティブ・ベース東京」という言葉を発信しました。
宮坂副知事:
シビック・テックに近い語感の言葉ですよね。そもそも、インターネットそのものがシビック・テックの塊みたいなものですが、そういうものがアートやクリエイティブの世界ではありそうで無いような気がします。でもデジタルという新しい道具ができたことで、アートやクリエイティブの世界にも可能性が広がるとすごく思うので、今日ぜひ皆さんと議論しながら言語化したいと思います。
アートとサイエンスの関係
芸術文化領域のみならず、技術やサービス開発の分野でもご活躍の福原さんからは、CCBTのコンテンツであるアートとサイエンスの関係について、ご自身の経験も踏まえながら語っていただきました。
福原さんは小学生の時、「みんなが同じようなことができて、みんなができることができないと駄目」ということが苦手で、学校が窮屈だという記憶があったそうです。
福原さん:
小さい時は学校か家、その狭い世界で生きているので、どうにかしてOut of the boxしてやろうと思っていました。でもまだ小学生なので留学もできないし、悶々と中学校も過ごし、18歳になりやっと外に飛び出しました。
福原さん:
みんな「美しい、綺麗だな」と絵を鑑賞しますが、アートはそれだけではなく、いろんな問いかけ方でたくさんの議論や意見、答えを生み出します。サイエンスであれば多様な問いかけ方があるものの、一つの答えにみんなで集約していこうという動きなのですが、アートはオープンになっていきます。百人いたら1万個ぐらいの答えがあってもおかしくありません。
例えばテクノロジーが進んでいったら、倫理問題はどうするんだろう?もちろん専門家が考えているのですが、一般人として「もやもやする」「なんか不安だな」そういったテクノロジーが発展する中で置いてけぼりにされている視点や声を作品を通して語りあったり、気づきを与えるのもアートができる役割です。
「自分のまちを、自分も参加して創る」コンピテンシーという考え方
続いて齋藤さんからは、CCBTにとって重要なキーである「コンピテンシー」についてお話がありました。
齋藤さん:
最近アートがソーシャルセクター(※)や社会課題解決にも興味を持ち始めました。アートは探求のためであるというのはまさにその通りで、だんだんと今の時代に何ができるだろうってことを考え始めたと思います。デザインの方も大量生産、大量消費ではなくて、今の人たちに必要なものはなんだろうということを考え始めています。
※社会課題解決を目的とした組織・団体
齋藤さん:
CCBTのキーは「コンピテンシー」という考え方だと思っています。オードリー・タンがよく言っていることで、コンピテンシーは「能力」や「適性」という意味ですが、「あなたが作り手である」ということを意味しています。
「自分のまちを、自分も参加して創る」。まずCCBTで活動するアーティスト、デザイナーの創作発表等を通して市民自ら行動するきっかけを創る。思考方法や手法や技術、いろんなものを置いて帰る。そしてそれをいつでも使える状態にしておく、もしくは使えるきっかけを与えるような企画をするというのがCCBT。足りないものを補い合い、持ち寄り、共有してアクションを元にまち・社会を作る。CCBTはそのプラットフォームとなります。
アーティストやデザイナーではなくても、自ら創り手となる。
宮坂副知事:
「作り手を増やす」ということ、僕はそういうイメージだったので、本当に素晴らしく言語化してくれたなと思います。
行政が行政サービス作って、市民が受け手。それはどうなんだといった話をよくしています。ダウンロードする側になるよりもアップロードできちゃう、「参加できる」のがデジタルのすごいところ。熱狂的に消費する人はあまりいないと思いますが、熱狂的に作ってアプローチする人は結構いると思います。
もちろん、消費することもそれなりに楽しいんですけど、アップロードしたりとか、作る人を増やすのはすごく大事だと思っていて、コンピューターの世界はそれが本質的に合っていたんだと思います。こういったクリエイティブの世界でもそういったものが起きるとすごく面白いですよね。
福原さん:
「一般的な価値はまだ見つかっていないけれど自分の中では大事にしていること」は人それぞれあるから、そういう事をオープンに話したり、作ったりする場所があるとクリエイティブってそんな難しくないと思えるのかなと。
お年寄りの方たちにも参加して欲しいと思っています。慣れていない人たちが見るデジタルツールの視点も面白いんじゃないかと。例えばうちの父が耳が聞きづらく、話す時にアプリを使っているんですけど、自分なりの使い方、ハックが出来上がっていて、こういうナレッジを増やしていったらものを作る方のインスピレーションになるだろうなと思っています。
齋藤さん:
宮坂さんのおっしゃってた「アップロード」ということがすごく重要。自分の何か得意なことを、ずっとアップロードできるような環境を作っていくっていうのは、一つすごく大事なことなのかなと思っていて。
また、それまでのプロセスを公開するとか、どういうフローでプロジェクトのゲートが開いて閉まったのかが、CCBTの過程で大事だと思っています。
この後も参加者からの質疑応答など、熱い議論が交わされ、大盛況のうちにトークイベントは幕を下ろしました。
『アーティストやデザイナーではなくても、自ら創り手となる。』
みなさんもぜひCCBTにお越しいただいて、あなたのクリエイティブを発見してみてください!
CCBTでは、6月29日に「東京をもっとクリエイティブに、もっと良くするには?」と題し、シンポジウムを実施します!
行政・ビジネス・アートそれぞれの分野の第一線で活躍されている方々をゲストに「東京に必要な新しい仕組や挑戦」や「アーティストの役割」「これからのCCBT」等について議論します。
6月29日のイベントの様子も、後日noteに掲載予定ですので、お楽しみに!