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根を張る。幹を伸ばす。枝葉を育む。-京都で学んだローカルに生きる「よそさん」考

数えればもう10回以上。学生の頃に憧れた京都に絶えず通っている。社会人になってからは、毎年“年越しは京都で”と、京都に籠って1年の振り返りと新年の動き方を考えるのが自分だけの恒例行事になっていた時期もあった。

今回は、京都市と株式会社ツナグムが行う京都・西陣におけるローカルの暮らしとまちを巡る2日間に参加するために再び京都へ訪れた。2週間前に案内をもらい、たまたまピンポイントで予定がない日だったので,これはラッキーと往復夜行バスをとって1泊4日の京都巡りへ。

今回の目的は2つ。

・(日光でよく比較されがちな)京都・西陣での取り組みを学ぶこと
・京都・西陣での暮らしの種蒔き

「京都・西陣におけるローカルの暮らしとまちを巡る2日間」(以下、西陣を巡る2日間)では、2日間みっちりと西陣のまちをあるき、実際にその現場に訪れ、企業のことやまちのこと、暮らしについてなどを、活動をしているプレイヤーや企業の方々に直接話を伺い、ヒヤリングや意見交換を行った。


西陣のまちあるき


西陣織見学

その中で見えてきた移住者“よそさん”としての暮らしと仕事への向き合い方を以下にまとめる。


【根を張る】 – 虎の威を借る。京都で一番大切なのは紹介者


どこに根を張るのか。

今回は京都・西陣で活躍する様々な企業や事業者を訪ねたが、そのほとんどが移住者“よそさん”であった。縁もゆかりも無い土地で、何者でもない自分のアイデンティティを如何に定義するか。「京都人として認められるには三代かかる」と言われるように、親子何代と京都に暮らす人々が当たり前にいる中で、突然現れた“よそさん”は、もはや何者でも無いただの通りすがりである。そんな自分を自分たらしめるのは、実績でも立ち振る舞いでもないようだ。

“京都で一番大切なのは紹介者”

誰に可愛がられているのか。
虎の威を借る狐のように。
誰を虎にするのか…。

「何を言うか」ではなく「誰が言うか」

正直悔しく感じる部分もあるが、既存のコミュニティの中で暮らすというのはこういうことなのかもしれない。日光に移住して3年半が経つが、日光でも“一番大切なのは紹介者”な場面が往々にしてある。むしろ僕ら“よそさん”は既存の輪の中に混ぜてもらう立場なので、謙虚に、そして上手に虎の威を借りながら、そこでお世話になるのがまずは第一歩なのだろう。

そんな時にどこに根を張るのか。誰を虎にするのか。この入口一つで、その先に見える世界が大きく変わるようだ。ここは十分に時間をかけて、コミュニケーションを重ねながら、じっくり自分に適した入口を見定めるのが大切そう。これだけはインターネット上に答えがあるものではない。一人の意見ではなく、様々な人の話を聞きながら、自分の足で稼いで探すしかないだろう。

“よそさん”はまず、どこに根を張るのか。入口を上手に見極めたい。

【幹を伸ばす】 – 石の上にも3年。3年残れば、よく残ったなと


幹を伸ばし続けられるか。

根を張る入口を見定めたら、いざスタート!と思えど、時間という壁には抗えない。ここまではおそらく大勢の“よそさん”も辿り着いて、スタートを切れるが、もちろんやめていなくなる人も多いのだろう。

“3年残れば、よく残ったなと。”

石の上にも3年とは、まさにこのこと。うまくいくまでとことんやる。出て行かないことが何よりも自分の幹を太くする。いつか威を借りた虎さんに、何が返せるかと考えると、まずできることは、出て行かないこと、続けることなのかもしれない。自分は日光は移住して3年半だが、事業を始めてまだやっと1年。あと2年はとにかく辛抱して走り続ける。

“よそさん”は如何に、幹を伸ばし続けられるか。入口さえ見定めたら、考えることをやめて一旦走り続けたい。その先でようやく、“よそさん”にしかできない新しい風景が見えてくるかもしれない。

【枝葉を育む】 − “よそさん”にしかできないこと。


どんな枝葉を育めるか。

これだけ“よそさん”にとってハードルが高いローカルに、わざわざ挑戦する意味があるのか。その先にやっと、“よそさん”にしかできないこと、“よそさん”にしか創れない風景が見えてくる。




先代、先々代は仲が悪い。あいつとは手は組めない。

こうした問題はおそらくその地に長く暮らす京都人にはどうにもできない。だが、“よそさん”にはなんとかできる。適度な距離感も持って関係性をつなぐことで、地域に新しい風景を創ることができる。これが“よそさん”の強みであり、最大の楽しみなのかもしれない。

“見たことのない風景を創る”

“歴史を見て楽しんでいる我々は、歴史に何を残すのか”

“よそさん”はどんな枝葉を育めるか。ここでようやく自分のやれること、やりたいことと、地域のリソース(ヒト・モノ・コト)が絡み合って、いつしか自分にしかできないこと、自分にしか創れない風景に向かい始められる。

根を張り、幹を伸ばし、枝葉を育む。長い時間をかけて、一歩ずつ着実に続けていくことが“よそさん”として地域に関わる近道なのだろう。

【種を蒔く】 − 自分の現在地


どこにどんな種を蒔くか。

考えてみれば、今の自分が拠点とする日光も、時間だけで見ればもう長い付き合いになる。学生の頃の修士研究から通い始め、少しずつまちを知り、ひとを知り、関係性を構築しながらようやく移住、事業を始めるに至った。これだけかけてもまだようやくスタート地点。そう考えると“よそさん”としての種蒔きは早いに越したことはない。

数年前にいくつもの地域を行き来する自分の未来のライフスタイルについて書いたことがあったが今も基本的な考え方は変わらない。

現在は日光以外にも、北海道や山形での仕事もスタートし、定期的に通っている。

今の悩みは“よそさん”としての関わり方。

全国あちこちどこでも仕事がしたいわけではなく、その地を拠点として、自分の生活圏として、暮らしまで考えられる地域での仕事を増やしていきたい。外から口や小手先だけの“よそさん”としてではなく、その地にしっかり根を張る“よそさん”として。そんな関わり方ができる地域を見つけて増やしていくことが自分に暮らしをより豊かにすると思う。

自身の事業デザイン・ライフデザインとして、まずはそんな“よそさん”として今後も京都に種を蒔きに通おうと思う。


髙橋広野

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髙橋広野
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