現代日本で旅する価値はあるか?
今年JR東日本が「みどりの窓口大幅削減」を発表したとき、大批判を浴びたのは記憶に新しいだろうか、それとも既に忘れてしまっただろうか。
まあこの国の人たちは忘れるのが得意なようだから、覚えておられない方も多そうだが、私はしっかり記憶している。とりわけこういう「悪事」に関しては。
本来窓口削減を断行するのであれば、券売機の機能強化などを併せて行う必要があるはずだ。が、相変わらず券売機の無能ぶりは皆さん知るところである。ちょっと経路を複雑にした程度で「この経路は窓口でお尋ねください」となるし、あるいはお金を入れて発券しようとしたらなぜかきっぷが出てこず、お金も帰ってこず、返金処理に20分以上かかって危うく乗り遅れそうになったこともある。声高にコストカットを万歳三唱しながら、余計な手間を増やしているわけだ。
こうした利用者や現場の声を無視して露骨なサービスカットを行うあたり、もはや完全に株主資本主義に毒され、利益のことしか頭にない。そのようにしか思えない。そういうわけで、私の本州紀行も第6回で停止しており、第7回の目処は立っていない。一応弾丸旅行計画を立てることは立てたが、新幹線という無機質な乗り物を使って多額の「献金」をすることになってしまうことから、とりあえず断念(というか雪かきがあるので安易にお出かけしづらいのもあるが…)。
で、次にホテル業界の話。
第2次本州紀行を最後にホテルは使っていないが、聞くところによるとホテル代がやたら高いらしい。まあ物価高騰の煽りを受けているのかもしれないが、いわゆる訪日客の増加で殿様商売が始まったせいだろう。けれども日本人専用のお得価格が示されることはなかった。どうやら外国人と同じ額を払ってほしいらしい。コロナで大変だなんだと騒ぎながら、落ち着いた途端日本人旅行者の足元でも見てるのか知らないが、価格を一気に釣り上げたのだろうか。正直、ただ泊まるだけの施設に私はあまり高い金を払いたくない。宿泊を躊躇するとなると、必然的に旅先の選択肢も限られてくる。
後は山本夏彦の言葉が結構効いている。すなわち、
「学問のない者が旅行しても得るものはない」
である。
まあ私も学問のない者なので、この台詞はなかなか耳が痛い。そろそろ年末年始という名のミーハー増殖期間に入るので、今時期は尚更得るものがなかろう。
まあ以上のような理由でもって、私の旅行モチベーションはここ最近、あまり高くない。
で、最近、
「あれ?旅行行く意味もしかしてもうない?」
と思うようになった。
正直な話、今の物価高状況を鑑みれば、その一点をもって「価値はない」と言えるだろう。高すぎる。何もかも。家で本読むかゲームした方が色んな意味で良いだろう。積読・積みゲーも相当あるし、今のうちに消化しといた方がよいかもしれない。
しかしまあ、仮に物価高が落ち着いたとしても、ホテルやJRのサービスが向上するとも思えない。となると、ここらが「潮時」やもしれぬ。まあ第六回の旅は問題こそあれ、終わり方はこの上なく綺麗だったので、さほど未練はない。あれが最後でも後悔はしないだろう。
とはいえ、旅人というのは一種の病人のようなもので、何かあるとすぐに出かけたくなる。私も旅人の端くれ。その運命からは逃れられないかもしれない。
現状、旅に行くなら、「たとえ物価高だろうと絶対にそこへ行きたい」という強い意志が必要になるし、そのための工夫も求められる。ハードルは上がってしまったが、前向きに捉えるのであれば、一つ一つの旅に「重み・深み」が生まれるとも言える。
正直、旅が大衆化・世俗化しすぎた感じはあるので、ここらでひとつ、真の意味で崇高・孤高の旅人になれるよう、今のうちに準備しておくのも一手であろう。
まとめると、
・現代日本で旅をする価値はない(費用対効果が悪すぎるため)
・しかしながら、旅をしたいと思ったときに旅ができるような準備はしておくのが良いだろう。そのさい、様々な旅なあり方を考案し、つまらない旅にならないよう気をつける。なぜなら、「一票の重み」同様「一旅の重み」がかつてより重量感をもって、我々の前に立ちはだかっているから・・・。
以上で終わります。
とりあえずしばらくは静観となりそうです。