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【連載】第5次本州紀行~小樽→新潟→酒田→青森→北海道~ 第3話「不快」(新潟駅~酒田駅) ※ホテル禁止

(2)新潟駅~酒田駅「不快」

日本海を望める路線ということで、車窓に期待しつつ、列車は定刻通り新潟駅を発車する。日本屈指の米処であることから、都心を離れると田んぼが広大に広がっている。楽しめそうだ。
…と思ったのもつかの間、問題が発生する。
後ろに子連れの女性が乗ってきたのだが、この子どもが大声を出すわ、席を蹴ってくるわ、肘にぶつかってくるわ、と散々な迷惑行為を働いてきたのである。当の女性は、
「すみません…」
聞こえるか聞こえないかレベルのか細い声で、私の目も見ずにつぶやくだけだった。
自由席なら即移動レベルの案件だが、今回は指定席だったので動くに動けない。まあ、1時間程度で子どもが寝てくれたおかげで被害は抑えられたが、その女性は降りるとき、私に謝罪もせずそそくさと降りていった。

モータリゼーションの弊害についてこのブログでは何度も言及しているが、こういうことがあるとやはり、マイカーによる移動を袋叩きにはできないな、と感じる。多くの人が乗る公共交通はモラルの低い人が乗る可能性もあり、不快になるリスクを常に抱えている。今回は運悪くそのリスクが顕在化してしまったわけだ。
もちろん、寛容の精神が重要なことは承知している。しかし、どこの誰かも知らない母子に優雅な旅路を邪魔されるのは、私としても気分の良いものでは決してない。
子連れが公共交通を使うのは自由だが、周りへの配慮もできないのはさすがに問題だ。「親が親なら子も子。子が子なら親も親」と言わざるをえない。

まあいい、車窓と沿線の話をしよう。不快な思い出も、紀行文に書き起こせば、それは一段高い思想を生み出し、やがては薄れてゆくことだろうから。

新発田駅の近くにブックオフらしき建物が見えた。今回は寄れないが、次回来ることがあれば寄ってみたいものだ。
村上駅にて電源交換をした後、日本海がよく見える景勝区間に入る。トンネルも多いが、それなりに楽しめる。
しかし、乗り心地はいまいちで、首や肩が辛くなってきた。まあ、重い荷を背負って歩いてきたのも一因ではあろうが…。
村上以北は「川」駅名が多い。越後寒川、桑川、今川など、函館本線の砂川、滝川、深川…に通じる何かがある。
坂町で米坂線、余目で陸羽西線と接続するが、ともに災害で不通となっており、バス代行輸送になっている。自然の厳しさを改めて感じざるを得ない。

2時間ほどかけて酒田到着。ようやく自由になれた。自分の足で歩けるというのは何という幸福だろう。やっと歩けるのだ。
列車を見送ると、新潟駅で私に挨拶した女性が黙礼したので、私も返す。
人懐っこいとまでは言わずとも、感じの良い女性であった。無愛想で事務的なすべての女性事務員は見習うがよい(男性もそうだが)。
自動改札機を抜け、酒田の街に入る。
さあ、ここは山形県酒田市。青森、秋田、岩手、宮城に続き、東北5県目到着だ。残るは福島県のみ。さすがに全都道府県制覇は難しくとも、東北地方くらいはコンプリートしたいものだ。
酒田は羽越線の運転系統が分かれる拠点で、秋田への中間地点だ。既に時刻は14時を回っているが、旅もいよいよ後半戦である。
次の列車まで約30分。
これだけあれば簡単な観光はできる。
本格的な観光は次の機会に回そう。
酒田には訪問すべき場所があるのだから…。
(続く)

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荒野の旅人
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