【駅間徒歩紀行】JR北海道 千歳線植苗駅~ウトナイ湖~苫小牧西港フェリーターミナル
1.植苗駅~ウトナイ湖
駅と駅の間を歩く徒歩紀行について以前記事を書いたが、今回はその実践編である。
JR北海道の大動脈・千歳線の植苗駅から苫小牧西港フェリーターミナルまでを歩く。
沼ノ端~室蘭間はすでに歩いている(虎杖浜~登別のみ危険なので特例免除)ため、植苗~苫小牧駅間を歩く。なお今回、沼ノ端駅は経由しないが、かつて苫小牧~沼ノ端を歩いた際に通った道を経由しているので、植苗~沼ノ端も歩いたとみなすことにした。
早朝の東室蘭行列車に乗る。デクモになったことで乗り心地がやや低下した感があるけれども、すぐ降りるので問題ない。
植苗駅到着。クルマでの訪問経験はあるが、降りるのは初めてである。かつて廃止された美々駅と並び、秘境感が漂う。駅ノートもあるし。
一応駅近くに民家はあるが、少し歩いた後は人の気配がしない無人森林区間が続く。あまり考えたくはないが、熊との遭遇を警戒し、一応熊鈴を鳴らしながら歩く。これほんとに効くんだろうか・・・?
大自然を歩くと狩猟採集民時代のDNA、野生動物としての感覚が蘇ってくる。わずかな植物の揺れに動物の気配を感じ、周囲に危険がないか気を配り、張り詰めた気持ちで先へ進む。都会ではまず味わえない緊張感を感じながら、たったひとりで森の道を辿って国道を目指す。
国道から遠いため、歩いてくる人は殆どいないはずだが、歩道はしっかり整備されている。この点は安心だが、人の気配がしないのが不気味だ。
大自然に対する自分の小ささが際立つ。
やや歩いた所で民家、学校が現れる。人の気配を感じると少し安堵の気持ちが芽生えるが、まだ生きて帰れるとは限らない。用心を続けながら先へ進む。
国道36号の合流点が近づくと川が現れ、キャンプ場も発見。
先程までの静かな雰囲気からガラッと変わり、途端に騒々しい走行音が響く。いつもなら耳障りなクルマの音だが、今回ばかりは安心感がある。
国道36号に合流。これより南下し、ウトナイ湖を目指す。
この国道36号区間も歩く人は皆無だろうが、歩道はきちんと整備されている。千歳~苫小牧間では歩道が途切れるところもあるのに、謎だ。
まあこちらとしてはありがたいのだが…。
騒がしく疾走するクルマの横を、それと比べると亀のようにゆっくりと進む私。早歩きしているのだが、さすがに自動車には勝てない。まあいい。速さが全てではない。そうした思いでこの企画を始めているのだから、気にせず行こう。
ウトナイ湖到着。苫小牧の観光スポットとして有名だが、沼ノ端からも苫小牧からも遠く、アクセスが面倒な場所として知られている。
道の駅が併設されていることから、クルマ時代は結構世話になったが、廃車になって縁遠くなった場所だ。
まだ朝早く、売店なども営業していないので、湖を少し眺めて休憩し、すぐに出発する。今回の目的地はあくまで港だ。立ち止まるわけにはいかない。
今回の目的は2つ。
1つは植苗~苫小牧を徒歩でつなぐこと。
そしてもう1つはフェリーターミナルの場所を確認することだ。苫小牧からの船旅を予定しているので、下見に行くというわけだ。駅からの体感距離も測っておきたい。私は方向感覚が鈍いのかよく迷うので、下見は重要なのだ。
2.ウトナイ湖~苫小牧西港フェリーターミナル
かつての天皇が訪れたらしい場所が石碑になっていた。クルマで通過していた時代は全く気づかなかった。まあ、そりゃそうだ。歩きか自転車じゃないと気づけないだろう。
沼ノ端の街に入る。大きな公園があったので休憩する。
歩行距離はそんなに長いわけではないが、とにかく交通量が多くしかも大型車がたくさん走っているので、心理的負担が大きい。そんなときは素直に休ませてもらおう。
出発し、臨海道路の方へ向かう。この道路は北海道屈指の広さを誇り、ドライバーなら走りごたえのある道といえるが、歩行者にとっては世知辛い道である。コンビニもぽつぽつあるが、とにかく休む場所がない。緑地なき灰色の道ほど歩行者の精神を削る道はない。
歩行距離も12kmを超え、累計3時間は歩いている。肉体的疲労もそうだが、精神的疲労がやはり大きい。早く着きたいという思いが焦りを生み、心眼には目的地が遥か彼方に見えてしまう。
だが、終わらない道はない。長く果てしなく続くかに思えた臨海道路もやっとフェリーターミナルとの合流地点にたどり着いた。
しかし、ここからもまだ歩かなければならない。もうひと踏ん張りだ。
太平洋セメントを横目に、フェリーターミナル到着。
長かった…。とりあえず食事を摂りたいが、まずは中を探索しよう。
以前訪れた大間、函館、青森より遥かに巨大なターミナルとなっている。船も3会社が乗り入れており、まさに北海道の海運ターミナルの風格をまとっている。桃鉄で長い間ワープ駅に設定されていた理由も頷ける。まあ、室戸や八丈島には行けないけどww
1階が乗船手続きフロア、2階にお土産屋、食堂、乗船口、ストリートピアノ、3階にターミナルの展示室が設けられている。
展示室は歴代の船紹介、ターミナルの取り組み、震災時の資料など、なかなか見応えがあった。
食堂はあんかけ焼きそばが名物のようで、早速注文。ボリュームもなかなかあり、厳しい歩行を耐えてきた腹に豊穣なエネルギーをもたらしてくれた。
空港と同じく、使う予定がなくても見学してみるのもありだろう。
探索終了。
バスも出ているが、駅までの道も確認する必要があるので、再び歩く。臨海道路に入ってひたすら進むと、国道36号とぶつかる。さらに進むと苫小牧駅南口に着くが、とにかく国道から遠い。1時間少々で歩けるので、徒歩でのアクセスも特に問題はなさそうだ。道も把握したので次回は迷うこともないだろう。
なお、距離が長くてしんどく感じる方は、途中のサンガーデン(図書館を併設している植物園)に立ち寄って休むのがおすすめだ。徒歩旅もドライブ同様、休憩や栄養補給は大切。無理せず歩こう。
というわけで、植苗から苫小牧西港フェリーターミナルまでの徒歩紀行でした。これで植苗~室蘭歩路が完成。ただ、千歳~植苗が道路の都合上絶望的なので、ここは飛び地になりそうです。安平の方に迂回する手もなくはありませんが(自転車では訪問済み)、森を通るのでリスクもあります…。無理はしないでおきましょう。
そのうち室蘭から先、伊達方面も歩いてみたいですね。坂は急ですが、歩きごたえもありそうですし。
昔の人は徒歩で旅をしていました。現代人はやれ飛行機だ、新幹線だ、電車だ、クルマだ、という感じで一向に歩く意欲がないらしいので、たまにはこういう旅もよいのではないかと思います。
それでは、次回の記事でまた会いましょう。
ご精読ありがとうございました。