【連載】第5次本州紀行~小樽→新潟→酒田→青森→北海道~ 第5話「男女」(秋田駅~青森フェリーターミナル) ※ホテル禁止
(4)秋田駅~青森FT「男女」
停車駅ごとに人が降りていき、大館に着く頃には車内はだいぶ静かになっていた。さすがに弘前まで乗り通す人はあまり多くないようだ。花輪線から乗り換え客が多少入ってきたが、それでもそんなに多くない。まあもう夜だし、主要な観光施設は閉まっている。こんな時間に動いても仕方ない、というのもあるだろう。
花輪線は第1回本州紀行時点では災害不通の路線だったが、現在は復旧済みのようだ。機会があれば乗ろう。
長い駅間と騒々しいジョイント音を感じながら、列車は弘前へ向かう。このジョイント音こそ、奥羽本線の名から漂う、山越えの厳しさを感じる音だ。乗ったことがない人はぜひ一度聞いてみてほしい。これは紀行文では表現し難く、実際に聞いてもらうより他はない。
列車は弘前へ到着する。このまま対面乗り換えで青森方面へ向かう。いよいよラストスパートだ。接続はよいが、補給の時間はない。新潟で補給しなければかなりの苦労を強いられたことだろう。忙しない旅だが、ホテルが使えない以上、乗れる列車は全て乗り、突き進むしかないのだ。
青森まで直行することも可能だが、船の出航まで時間があるため、途中下車することにした。
隣駅の撫牛子で下車。弘前の隣だが周りは住宅ばかりで何もないように見える。ただ、明るい時間に訪れれば何か発見できるかもしれない。
ここにも乗車駅証明書が設置されていた。やはり北海道より設備が多いのは間違いない。
軽食を摂り、鰺ヶ沢行列車に乗る。五能線の列車だが、次の川部まで行けるので問題ない。雰囲気は奥羽本線と全く違い、静かな感じだった。同じ線路でも乗客や車内の雰囲気が全く違うのが面白い。
川部駅で下車し、次の列車を待つ。第2回で下車&探索をした駅で、りんごの木もある風光明媚な場所だが、暗いので列車を待つしかない。分岐駅だけあってホーム上の椅子の数も多い。かつて有人駅だった頃の栄華を偲ぶことができる。
今回は時刻表を持ってきていないので、待合室まで行かないと時刻がわからない。東日本のコストカット至上主義により、ホーム上の時刻表がなくなってしまったのだ。乗り遅れると嫌なので、そのままホームで列車を待つ。
さて、もう一度途中下車することも不可能ではないが、待ち時間が長くなる上、辺りが暗くて怖いので、目的地に直行することにした。ちなみに津軽湯の沢駅は既に最終列車が通過しており、訪問できない。まあ、列車があったとてこんな暗い時間帯に訪問するのは心理的難易度が高すぎるけどwww
やってきた青森行列車にはカップルが何組か乗っており、うち2、3組は女性が目を閉じて男性にもたれかかる格好になっていた。ギャルゲーでありがちな構図だが、実際に見るとこっちが恥ずかしくなってくる。
読者に青森県民がいたらお尋ねしたいが、意外と羞恥心なくああいうことができる人が多いのだろうか?地元ではあまり見たことはないが…。
何となく気恥ずかしさを覚えながら、目的地を目指す。
まあ、こういう光景を見て「リア充爆発しろ」との思いを強くする御仁もいらっしゃるだろうが、殊私の場合、そのような思いは抱かなかった。ローカル線の日常風景、といった感じで景観とマッチしていたからだ。別に目障りではない。目障りなのは、景勝地でイチャついているカップルだ。あれは景観破壊といっていいだろう。欲望丸出しではせっかくの風情が台無しになるし。
まあそんなことはどうでもいい。ハキハキ話す女性車掌のアナウンスを聞きながら、目的地の津軽新城駅で下車。乗降は私だけのようだ。降りる客が自分ひとりしかいない時の謎の高揚感。しかも私は地元民ではない。異郷に紛れ込んだようなこの感覚は、なんとも形容し難い。
津軽新城駅は私の本州紀行始まりの場所であり、思い出深い。訪問回数もこれで3回目で、現在本州で最も訪れた場所になっている。
観光地化されていないローカル駅という風情が非常に良い。木材の匂いも懐かしい。
さすがに3回も訪問すると足取りは軽い。地理を身体が覚えているからだろう。体力が有り余っていた朝の新潟よりもスムーズに足運びができた。やはり、知っている場所を歩くのと、未知の領域を歩くのでは、精神的な負担が全く違うらしい。まだ3回しか来ていないというのに、ホームグラウンドに帰ってきたような安心感を覚える。
まずは国道7号を目指さなければならないのだが、そこそこ距離がある。新青森駅を過ぎ、アンダーパスをくぐって国道7号へ。まあ、この国道からも遠いのだが…。
面白みのない国道を横切り、青森フェリーターミナルへ到着する。
出航まではまだ時間があるので、待合室で休む。乗客はぽつらぽつらいる程度で、静かな雰囲気である。
さすがに眠気は抑え難く、うつらうつらと夢の世界へ片足を突っ込む。
出航が近づくと、乗込口への送迎バスがやってきた。前回は見かけなかったバスだ。別に歩けるのだが、せっかくだから乗ってみよう。
家族連れ、男女ペアもいるが、深夜便なので騒がしさはない。静寂の夜行船は旅を彩り、無限の旅情を掻き立てる。
第2回と同じく、2:40出航のビューシートに乗る。ちなみに外は真っ暗な上、カーテンは閉めっぱなしなので景色は全く見えない。
まあいいや。寝るだけだし。
乗船後、冷凍クレープを食べる。ひんやりしていて美味い。
さあ、眠ろう。ふるさと目指して。
(続く)
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