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【連載】第5次本州紀行~小樽→新潟→酒田→青森→北海道 第7話「海辺」(長万部駅~苫小牧駅) ※ホテル禁止

(2)長万部駅~苫小牧駅「海辺」

特急北斗号、てっきり大混雑かと思いきや、意外と余裕がある。これは運がいい。
コナンによる期間限定の車内アナウンスが流れ、映画とイベントの告知がなされた。今回結構ツイてるな。苦あれば楽あり、か。
洞爺駅を過ぎ、伊達紋別駅で下車。バスで通ったことはあるが、鉄道で下車するのは今回が初めてということで、楽しみだ。

室蘭本線・伊達紋別駅。趣のある駅舎。

予想通り自動改札機はない。途中下車印を押してもらい、改札を出る。さあ、これで私は自由だ。列車の中という狭い空間から、広大無辺の大地へ降り立つ。この瞬間が一番楽しいかもしれない。
旧国道と思しき道を一人静かに歩いていく。国道37号はバイパスとなっており、ロードサイド型の店舗や道の駅もある。私も何度か通っているが、既にクルマ生活に関して隠居している私にとって、もはやバイパスはうるさくて危険で無機質なファスト風土的空間でしかなくなってしまった。そこではただ、消費者としての存在が一応許容されるだけで、誉れ高き文化を担う一員にすらなることはできない。クルマを使って大地からすっかり離れた匿名的な根なし草が一面に生えている。
私も流浪の民ではあるが、ファスト風土はもうごめんだ。現地の本当の姿を見たい。そのために歩くのだ。

沿道のラーメン屋は休日の昼間ということもあり、そこそこ繁盛しているようだ。
道沿いの小さな神社に参拝し、先へ進む。
道に自信がなくなったので、ナビを起動する。やはり、地図をもっと読み込んで研究しないとダメだな、と今にして思う。文明の利器に使われているようでは、旅のプロは名乗れまい。攻略サイトを見ながら攻略するようなものだし。

そんな文明の利器を活用する自分を情けなく感じながら、到着したのは北舟岡駅。北海道では釧網本線の北浜駅と並び、海に近い駅として有名だ。

北舟岡駅。大平洋はすぐ近くだ。


ロケーションの良さから多くの旅人の憧れの的になり、駅の階段が整備されたり、駅ノートも充実するなど、無人駅ながら旅情あふれる素晴らしい駅となっている。
保線工事の人たちが連絡を取り合いながら線路の状態を確認していた。
駅ノートをじっくり読み、海を静かに眺めながら、やがて来た列車に乗って向かうは東室蘭だ。

この区間は特急・貨物街道ではあるが、普通列車の乗客はさほど多くなく、和やかな雰囲気に包まれている。稀府、黄金、崎守、本輪西、そして東室蘭へ到着。次の苫小牧行まで少し時間がある。となるとやはり、「あの場所」に行かねばなるまい…。
そう、「駿河屋」だ。第2回本州紀行においてはここで宮脇俊三の本を多数見つけるという僥倖に巡り合っている。今回も期待できそうだ。
やはりドリキャスソフトが結構充実している。室蘭は新潟よりはるかに人口が少ないが、どういうわけかゲームはなかなか多い。札幌から120km以上離れていながらこれだけの商品を扱っているのは驚きで、室蘭市及び沿線市民のゲーム愛の深さが感じられる。
だが、今回は書籍に的を絞ろう。
あった。今回も宮脇俊三本があった。旅路で見つけられるとは運がいい。
さあ、目的達成だ。駅へ戻ろう。

苫小牧行列車がやってきた。北海道内では人口が多い地域を通るので、乗客も結構多い。ダイヤ変更によって特急が値上げ・煩雑になったのも大きいだろう。アジア系外国人の方も少しおり、高校生が元気に談笑している。彼らもやがてはこの地を去り、クルマを手にし、列車に乗らなくなる日が来るのだろうか…。先行きは不安だが、公共交通の未来を考えるべき時に来ている。急かせかと新幹線など作っている場合ではない。やるべきことは他にあるのだ。
観光客は登別で下車。苫小牧まではそれなりに乗車した状態で終着となった。
さあ、自宅も近くなってきた。いよいよラストスパートだ。だが急ぐことはない。駆け抜ける時と風の流れを感じながら、優しさを抱きしめて行こう。大空を自由に飛び立つ、鳥のように。
(続く)

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幸運の笛吹き
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