【縦漫画原作】逆行してクセつよ家族に溺愛される闇患い《厨二病》公爵の娘は、強固な運命を砕きたい! 1話
あらすじ
「もしやり直せるなら、おれは貴女を…幸せにしたいんだ」
結晶と静寂に覆われた寂しい世界で、ターニャは胸元に埋め込まれた結晶ごと体を貫かれて死んだ。
…はずが、目を覚ますと幼女へと逆行していた!
このままでは、大人になってもまた殺されてしまう。
今度は幸せになりたいと思った彼女を、騎士見習いの少年と父を名乗る公爵が助け出すが…。
「ククク。漸く相まみえる刻が訪れたな、我が血を分けし一片よ!」
父は重篤な闇の病にかかっていた!?
そのうえ、護衛騎士見習いの声は、逆行前に聞いた声とよく似ていて…?
結晶のない優しい世界で始まる、クセつよ一家の愛情に包まれるターニャのやり直し物語!
補足
シナリオ形式での表記です。
このシナリオの一部では、「縦漫画」を想定した表現・演出を記載しています。
シナリオ中の縦カラー特有の演出がある場所は、太字で記載しました。
キャラクター
●ターニャ【主人公】
「わたし、ずっとずーっと、おとーさまやラズたちと…みんなといっしょに暮らしたいの!」
物心ついた頃には、胸元に結晶(見た目はルチルクォーツ)が埋め込まれていた少女。
赤子の頃にレピドにさらわれ、監禁され続けていた。
逆行前はレピドに人形のように扱われ無気力だったが、逆行後は年相応に様々なことに興味を向けるようになる。
外見:
白髪だが光が当たると虹色に煌めく髪。黒目。胸元に結晶が埋め込まれているが、衣装で隠している。
●ラズ【ヒーロー】
「おれはもう二度と、あなたを…殺したくない。…いや、今度こそあなたを守ると、そう誓ったんだ…!」
どこか大人びており、一途でふんわりと優しく、そしてときに頑固で使命に忠実な見習い騎士。
外見:
明るい夜空の青紫色の髪の毛。澄んだ水色の瞳。
●レピド
「その力こそが、ぼくとルチルを繋ぐ絆…! ぼくだけが、彼女に誰よりも一番近い存在なんだ…! お前じゃない!」
傍から見ると、監禁ドSヤンデレロリコン青年魔法剣士。
魔法使いを率いて、研究塔でターニャの胸元にある結晶に関する研究を行っている。
ターニャを誘拐し、監禁。ターニャのことをルチルと呼び、人形のように愛でては執着している。
外見:
血に染まったような朱色の髪の毛。赤褐色の瞳。
●シディアン
通称、闇患い公爵(厨二病患者)
ターニャの実父。
普段は厨二病と共に威厳を纏っている格好つけたがりだが、油断すると寂しがり屋の素が出るポンコツパパ。
外見:
黒髪、黒目。
第1話
■場面<逆行前:室外・新月の夜>
満天の星が煌めく、新月の夜空。
ターニャ〈キラキラ星が輝く夜〉
天空から地上に目掛けて、草木や生き物、大地、なにもかもが結晶化した未来の世界観をスクロールで見せる。
鳥も結晶化して飛べなくなり、地面に転がっている。
ターニャ〈星の光を受けた木々や大地も〉
※ここからターニャ視点の見え方※
結晶物の景色を霞んだように描き、剣の刃が光で一際煌めく様子を描く。
ターニャ〈みんなが光を放つ中で、あなただけは…〉
ぼやけた景色の向こうに、青年ラズの青紫色の髪がふんわりと明るくぼけて見える。
ターニャ〈煌めきの向こうの空のように〉
※ここまでターニャ視点の見え方※
ラズが素手で、ターニャの頬に触れる。
ターニャ〈暗くて…なのにほんの少しだけ淡くて明るい、切ない彩りをしていた…〉
ほっとした表情で彼の手に顔を摺り寄せるターニャ。
ターニャ〈何もかもが眩しくて、なのに冷たい世界の中で〉
ラズ「申し訳ありません、お嬢さま…」
ターニャ〈この手だけが、とてもとても、暖かかくて〉
ラズ「もし、やり直すことができるなら…」
ターニャ〈もっともっと、この手に触れられたら…って、思ったの〉
ラズの手が離れていき、追うようにターニャも手を伸ばす。
ラズが左手でターニャの右手を握る。
ラズ「おれは、あなたを…」
ラズの右手の甲が輝き、ターニャの胸元の結晶を右手の剣で深く貫くラズ。
結晶にヒビが入り、胸元から血がポタポタと溢れていく。
ターニャ「か、は…っ」
ラズ「守れる騎士に、なりたい」
ターニャの瞳からポツリと涙が落ちて、胸元の結晶に零れる。
ラズ「あなたがずっと、幸せでいられるような騎士に…!」
ターニャ「し、あわせ…?」
目を閉じて力なく項垂れるターニャ。
ターニャ〈わたし…幸せに、なりたいな…〉
ターニャ〈さっきみたいに…暖かい手で優しく触れてほしいの〉
ターニャ〈だって。わたしはずっとずっと冷たいところに閉じ込められて…寂しかったんだよ…〉
ラズ「でもおれには、そんな資格なんて…!」
胸元の結晶が輝いたあと粉々に砕けて、スクロール先に欠片がパラパラと落ちる描写。
ターニャ〈だから…ね。次があるなら…わたしは…〉
繋いだままの手を、ターニャがぎゅっと握りしめる。
ラズが剣から手を離し、両手でターニャの右手を包むこむ。
ラズの左手の甲が再び明るく光る。
ラズ「ターニャ…お嬢さま…」
上の画面で砕けた結晶がふたりが繋いだ手へと集まる。手のほかに欠片も淡く光り、場面転換。
■場面<逆行後:レピドの魔法研究塔・昼間>
注射器が落ちた演出。
痛覚で意識が覚醒するターニャ。ターニャの姿は幼女。
胸元の結晶が見える、可愛らしいデザインの真っ白なワンピースを着ているが、袖には真新しい血がついている。
ターニャ「いっ!?」
ターニャは思わずむき出しになった胸元の結晶に触れたあと、さする。
ターニャ(あ、あれ? 痛くない…。それに、結晶が…壊れてない? でも血が出てる?)
ターニャ(わたし、刺されて死んだ…んじゃなかったの? 生きてる…? 生き返った…の?)
ターニャは周りをきょろきょろ見回す。
ターニャ(でもここは…見たことあるような…?)
レピド「何をしている!!」
レピドの怒鳴り声に、びくっとするターニャ。
ターニャの近くに、注射器を落とした魔法使いとレピドが立っていた。
魔法使いA「も、申し訳ございませんッ! レピドさま!」
ターニャ(レピド!?)
レピドがターニャを監禁する場面の回想。
回想中と現在のレピドの姿は変わっていないが、回想中のターニャは成長した姿。
ターニャ(わたしをずっと閉じ込めていたひとだ…!)
レピドが人々や動植物を結晶化させて、それを見ていることしかできないでいるターニャの場面の回想。
ターニャ(それにここは、ずっと前に居た場所!?)
レピドがラズに殺される場面の回想。
ターニャ(でもレピドも、あのひとに殺されたはずなのに…)
回想が終わり、きょろきょろとあたりを見回して、鏡で自分の姿を見るターニャ。
ターニャ(あれ、わたし…小さい…?)
ターニャ(もしかして…わたしは生き返ったんじゃなくて…時間が巻き戻ったの!?)
魔法使いを脅すように叱責するレピド。
レピド「忘れたのかい? ルチルの血の採取は許すが…彼女に一切の痛みを与えるなと言ったことを…ね?」※レピドはターニャをルチルと呼ぶ。
魔法使いA「そんな無茶な…」
レピド「ルチルを好きに扱うことは、ぼくだけに許された特権なんだよ」
レピド「喜びに満ちた眼差しも、苦痛に歪んだ顔色も、ぼくだけのものなんだ」
薄笑いしたレピドが、魔法使いAに剣を向ける。
レピド「だから、ね? 言いつけが守れない奴は、ぼくには不要だ」
レピドが魔法使いAを斬りつける。相手は絶叫し、血を吹き出して倒れた。
魔法使いA「ぎゃああ!!」
その様子を目の当たりにしたターニャや他の魔法使いは、恐怖で震えている。
ターニャ「っ!?」
レピドは剣から血を振り払うと、有無を言わさぬ殺意を薄笑いに潜めて、残る魔法使いに問いかける。
レピド「お前たちも、ルチルの扱いを誤るとどうなるか…わかるね?」
魔法使いたち「は、はいっ!」
ターニャへと振り返り、狂気の宿った瞳を向けて微笑み近寄るレピド。
レピド「大丈夫かい?ルチル」
レピドと目があってしまい、怯えるターニャ。
ターニャ「あっ…」
ターニャの顔を覗き込み、不思議そうに首を傾げるレピド。
レピド「ん? 最近はぼくのことをそう怖がることはなくなっていたと思ったんだけど…どうしたんだい?」
レピド「ああ、血が怖いんだね? きみは見なくて良いものだよ」
ルチルの目を手で覆い隠すレピド。
レピド「ルチルの怯えた様子も、抱きしめたくなるくらいに可愛いけどね?」
不安を煽るように暗い微笑みを見せて、ターニャの結晶を(ターニャではなく、結晶に執着しているように)愛おしそうに触れるレピド。
次話のラズの「怖いですか?」と対象的になるよう描く。
レピド「大丈夫、ぼくは怖くないよ。…だからずっと、そばにいてね。ぼくだけのお姫さま」
ターニャ(やだ…!)
ブルブルと震え、ぎゅっと目を瞑るターニャ。
ターニャ(巻き戻ってもわたしは、このままこのひとに捕われ続けるの? そんなの…やだ…!)
ドタバタと騒がしくなる室外。室外から室内に、魔法使いBが慌てた様子で飛び込んでくる。
魔法使いB「レピドさま!! た、大変です!!」
レピド「何事だ!? ここにはルチルがいるんだ、静かに…」
魔法使いB「それどころではありません! 闇患い公爵がこの研究所に…ッ!」
レピド「なんだって!?」
ターニャ「やみわずらい…こうしゃく?」
魔法使いB「うわああ!!」
扉の外から中へとぶっ飛ばされる魔法使いC。
突入するシディアン(通称:闇患い公爵)と、公爵家騎士団が現れる。
シディアン「ククク」
右手に剣を持ち、左眼を手で隠してシリアスにポーズを取るシディアン。
シディアン「随分と影と同化していたつもりのようだな? だが、我が闇の力の前では無意味なものだ。こうして貴様の影を捕らえたからな。…長きに渡りし、我が仇敵よ!」
魔法使いD「いまなんて?」
魔法使いB「あ、あいつです!」
ターニャ(あのひとは…誰? 巻き戻る前は、見たことがないひとだけど…)
ターニャを後ろに隠し、再び鞘から剣を抜くレピド。
レピド「ちっ。どうしてここが分かったのかな?」
シディアン「未来を嘆く小さき風が、我に告げたのだ…。さあ、返してもらおうか! 我が貴き片翼が混沌たる世界に芽吹かせた、華憐なる最期の一片を!」
レピド「なにを訳のわからないことを…!」
睨み合い、剣を構えるシディアンとレピド。
シディアン「ゆくぞ! 我が片翼の残し…」
シディアンのセリフを鬼気迫る表情でさえぎり、騎士たちに号令する騎士副団長。
騎士副団長「お嬢さまをお救いし、魔法使いらを捕らえろ!」
公爵家騎士たち「おおおおお!!!」
レピドも騎士たちを指さして、魔法使いたちに指示を出す。
レピド「お前たち! あいつらを退けるんだ!! ルチルに近づけるな!」
魔法使いたち「わああああ!!!」
剣や魔法を扱って戦う騎士と魔法使いたち。
ターニャの手を掴んで逃げ出そうとしたレピドに襲い掛かるシディアン。
レピドがターニャの手を離す。
シディアンの剣を受け止め、因縁関係にあるふたりが刃ごしに睨み合う。
シディアン「逃がすと思ったか? 仇敵よ。貴様の相手は、この我だ!」
レピド「僕とルチルを引き裂くつもりか! この、闇患い風情が!」
シディアンとレピドの戦いが始まり、あたりを見回しながら後ずさりするターニャ。
ターニャ(もしかして、逃げるならいま? でもどこから逃げたら…)
ターニャの背後にある窓から、カタッと物音が鳴る。
びっくりして振り返るターニャ。
ターニャ「だ、だれ?」
ターニャが恐る恐る振り返ると、少年ラズが窓に足をかけて部屋に身を乗り出していた。
ラズはターニャを見つけると目を見開いて泣きそうな表情をする。
ラズ「…!」
彼の表情にドキリとするターニャ。
すぐに深刻そうな顔つきになったラズが、唇に人差し指を当てて言った。
ラズ「しー」
(第1話・了/第2話へ続く)
第2話リンク
https://note.com/koutounokarin/n/n21d27c02442e