空気の読める後輩 #あな空
舞台の仕込みはほぼほぼ終わりに近づき、現在音響さんがサウンドチェック中です。開演前ラジオや前説が流れています。
本日ご紹介するのは栞里の高校時代の後輩、森由姫さん演じる川澄莉乃について。観劇を迷っている方の参考にでもなればと思っております。
※森さん扱いのチケットは上記お名前のリンクから飛んでください。
莉乃と栞里は高校の天文部からの付き合いで、それ以来ずっと振り回されている関係が続く。きっと誰もが声をかけやすいのだろう。いい意味で。
天文学に興味がある栞里と真司とは異なり、学校の制度として絶対に何かの部活に入らないといけないという校則の中で、最も楽そうな部活動として莉乃は天文部を選ぶ(そんな背景が実はあります)。
若干暴君の空気を垂れ流す栞里に対して、他の部員、関係各所に頭を下げる火消し役の真司。その2人をしれっと観察している莉乃を含む部員たち。
莉乃は飄々としているキャラではあるが、人の評価や実際にどう見られているのかなどを気にしてしまうタイプだったりする。その自分という人間、心を守るためにも、のらりくらりとした明るい空気を漂わすキャラを作っているのではと思うことがある。こう言ったら嫌われないだろうかとか、こんな行動したら浮かないだろうかと瞬時に計算する頭の良さも持ち合わせている。
栞里や真司を通じて千尋、陽、結衣と出会い、関係を深めていく。きっとそれは本来の自分、考えてから行動しなくても、素の自分でも受け容れてくれる人たちだから、彼女はとても今は楽に呼吸ができているのではないかと、場面の会話などを聞きながら、やり取りを見ながら思わずにはいられない。良い友人たちと先輩たちと出会えてよかった。どんなに不貞腐れても、怒っても、決して莉乃のことを嫌いになることはない故に安心して素顔を見せるようになったという過去に思いを馳せてみる。
これは書いてもいないし、森さん含めて誰にも言ってはいないが、実は莉乃は真司のことを好きだったんじゃないかと。先輩を慕う気持ちとは異なる気持ちがあったんじゃないかという裏設定を考えたことがありました。台本を書き始める前に。栞里と真司がお互いを大事に、大切にしていて、その関係がちんたらと進んでいく中で、人知れず、自身の気持ちをなかったことにしたんじゃないかと。そして彼女のことだから1ミリも未練なく吹っ切って、2人を100%の力で応援しようと思ったんじゃないかと。ま、実際はどうだったのかはわかりませんけど。
莉乃を演じてくれている森さんとは「セーブポイントからもう一度」から数えて本作で3作品目のご出演になります。「無視できない私の中の感情」では今回栞里を演じている鈴木ゆうはさんとは親友という関係で芝居をしてもらいました。今回は後輩になりますが。
本人からはうちに出ると大体明るい役が回ってくると、そんなことを伺いました。私個人の考えにはなりますが、森さんの表情を見ていると、どうしてもそういう役が合いそうな気がしてくるんですよね。勿論、そういう役とは反対のキャラというのも観てみたいと思ったりもしますが。
「セーブポイントからもう一度」の稽古時は大人しい性格の人だなと思ったものの、次お会いした「無視できない私の中の感情」の稽古では、大人しかったのは緊張とかもされていたのかなと。私だって誰も知り合いがいない中に飛び込んでいくのはかなりの勇気がいるし、喉が渇くほどに緊張もするし、何を言っているんだか覚えてないこともあります。役者さんの場合、そんな状態で芝居(読み合わせ含む)をして、また、稽古途中からの合流なんてなったら、関係性ができた中に飛び込むことになるのだから、私なら勘弁してくださいよって思うし逃げたくなる。逃げないんだから強いんだと思う。
今回の稽古では比較的よく話す機会があるけれど、私はその森さんが醸し出す空気感ってとても微笑ましくなるし、莉乃を作っていく上でも活かされるのではと思ったりしました。そして稽古風景を見ていて思うのは自信を持って芝居をしてくれたらいいなということ。私は正直役者のいいところを褒めるのが苦手なタイプの演出家でやってきているから、不安にさせてしまうことも多いかもしれません。でも森さんが莉乃を演じてくれることでしか表現できない、シーンを作れない、栞里、陽、千尋、結衣、茜たちと絡むことで生まれる空気は最早森さんにしか作れない気がしています。
台本ではト書きにも書いていない細かい動きや芝居、リアクションは私の予想していない部分が多くありました。ああ、その動きいいよね、ってことは今回の稽古時にも伝えては来たかなと。
高校時代から見守ってきた、応援してきた先輩たちの恋の果てに思わず関わることになった時、莉乃はどういう気持ちでいるのだろう。空気を最大限に読む女の子が見せる、あるいは見せない、そんな感情を、表情を観にいらしてほしい。
公演詳細
公演情報は劇団Twitterから