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無視できの備忘録 #3

ワクチン接種の話から始めるのもあれですが、そういう時期での活動であったという記録のためにも。やるやらないは任意であり強制ではないけれど、今やれることと言えばワクチン接種ぐらいしか今は武器がないのだからやることをデメリットメリット含め、選択した。RPGのようにずっと木の棒では魔王は倒せない。

8月11日に1回目のワクチン接種。熱がそれなりに出て、落ち着いて、上がっての繰り返し。頭痛はもともと頭痛持ちのため副反応ゆえの頭痛かはわからず。こうして体温を頻繁に気になって計る日々が続いたものの、人間の体温は起床から就寝までに変動するもので高い時に計れば高いわけで、とある医師の話では一日のうち2回ぐらいの体温計測でよいとのこと。確かに上がった下がったと一喜一憂すること精神衛生上よくない。と思う。

8月30日に2回目の接種なわけだがひとまず1回目から30日まで外出をやめた。1回目のちに感染するわけにもいくまいて。昨年から続くコロナ禍だが、食品含めて外出をせずにすませる体制を整えていたので問題ない。ただ私が患ったのは外出をしないこと、歩かないこともあっての膝の関節痛である。医者からは週に3回リハビリに来てくださいと言われたが一回目行っただけで終わってしまった。まあ、その病院が家から片道2時間もかかることも終わった要因の一つである。

今回の舞台(突如話を戻すというか正しい道にぎゅいんと舵を切ったわけで)では三原桜という24歳の女性が主役であり、タイトルが示す通り、無視している自分の心とやり場のないエネルギーと共生している人間その人である。

恐らくこの物語では本当はこうしたい、こう生きたい、こう言いたい、という気持ちとは裏腹に何人もの人間がその気持ちと折り合いをつけながら自分とは違う自分を演じつつ生きねばならない環境下にいる。桜だけが耐えている、自分の気持ちを無視しているわけではないのだろうと思う。

いくつになって本当は自分の人生はこうだったはずなんて思い描いてはため息とともに馬鹿なことをと思うに至る日々の繰り返しを送っている人も多い。私もその一人かもしれない、いやその気は大いにある。とはいえ一日一日、一週間、一ヶ月、半年、一年と仕事に追われて、その時その時の忙しさにかまけてそれを言い訳にしてしまうことも多いように思う。桜はまさにそういう人生を送っている。

子供の頃から歌手になりたいと思っていて、高校時代にはボーカル部に所属して文化祭などでは軽音楽部の部員とコラボしつつ盛り上げていた。彼女は楽器が弾けない。その代わり親に買ってもらったPCで作曲をし、作詞の才能にも恵まれていた。同じボーカル部所属の川島楓とはいいライバル関係でありつつも親友いや、仲間と呼べる関係を築いていた。彼女とともに作った楽曲を録音したデモテープ(この時代はデータだろうか。テープって、、、)を音楽会社に一方的に送りつけるという日々を送っていた。棚からぼたもち的にラッキーな展開があるかもしれないという若い、青い、期待に胸を膨らませつつも、そんなラッキーは早々に起きはしない。

私も一時期映像制作会社の音楽部門に所属していたこともあり、定期的に送られてくるデモCD-ROMがあることは知っている。誰もがチャンスを求めているのだ。

さて、そういう高校時代を経て、卒業する桜と楓だが、進路が分かれる。桜は地元の大学に進学。楓は夢を追いかけて東京へと出ていく。とは言え、桜もまだ夢を捨てたわけではない。大学の4年間は猶予期間、つまりはモラトリアムなのである。この間に本当にやりたいことはなんなのか、現実と夢を天秤にかけて、どうすべきかを考え、行動できる期間である。

桜の姉、裕香は高校卒業後、大学に通いながらレコード会社でバイト。その際に運良く見出され作詞や作曲の仕事を得るようになる。

姉妹揃って音楽に才能を得たのは何のめぐり合わせだろうか。いいとも悪いとも言えない。努力や才能だけではなく、運もまた実力の内であり裕香にはそのチャンスが訪れ、そして彼女は好機を逃さなかったのである。

桜は姉のことをずっと尊敬している。それは今も変わらない。どんなに羨ましい、本当は自分がなりたいのに、と思ってもそこにいるのは姉なのである。憧れ、妬み。笑い、おめでとうと言いながらも心のなかでは畜生と、私にだってチャンスが有ればと思わないではいられない。その心の醜さに耐えられないのである。

姉に抱いた感情は同様に楓にも抱く感情だった。確かに進路を考えた時に、東京に出ることも一つの選択肢だったはず。しかし頭の中をそんな簡単に夢を叶えられるわけがない。もっと地道な、現実的な将来設計をすべきではないかと思ったのだ。それはリスクヘッジと言うか、夢を前にしてひよったと言うか。どちらにも言えるわけだが、桜は今も思っている。あの時、あの瞬間、私は怖気づいたのだと。

東京に出ることが出来た楓を羨ましくも思いながら、何で私は一緒に行けなかったんだろうとも思い、勝手に膨らませる嫉妬の嵐。楓が東京で夢に胸弾ませて生活をスタートし、バイトをしつつ、レッスンをして、オーディションを受け、路上で、時にはライブハウスで歌っている姿を想像するだけでも叫びたくなる。自身の浅ましさを感じて。

しかし楓は楓で順風満帆とも言えない、さらに言えばもっと過酷な状況へと追いやられていくことを桜は知る由もない。

ちなみに私はライブハウスに行ったことがない。一度くらい行っておけばよかったと思う。チャットモンチーや赤い公園のライブは生で観たかった。私が行ったコンサートと言えば坂本龍一とデヴィッド・ヘルフゴッド。大昔にマイケル・ジャクソンぐらいなものだ。

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