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無視できの備忘録 #6
台本、シナリオ、戯曲。言い方はそれぞれだけれど、私はあまり戯曲という言葉を使わない。まあ、正確に言うのであれば舞台、演劇で使われる台本としては戯曲が正解で、正確なのだろうけれど、ぎきょくがもつ古風で、重いイメージ。そして多くの人と共通としての言語としては戯曲が通じないとは思わないけれど、伝わりにくいケースも有るので使わないようになった。
台本を書いている時はあまり演出のことは考えていない。もちろん人が出たり入ったり、照明がついたり消えたり、音楽やSEが入ったりなどはそれなりに踏まえて書いてはいるけれど、演出のしにくいシーンがあるとかないとかは考えてあげる余裕が執筆時にはない。余裕綽々で台本を書いた記憶もない。
とはいえ、私はあまり優しい演出家ではないと思う。優しいというか親切なというのか。0.5秒セリフを遅らせてとか、今の1.5倍感情を高めてそのセリフ言ってみてとか細かいオーダーをすることもあったように記憶している。いつからかそういうことを言わなくてもよくなった。出演者が細かい微調整を数回稽古を重ねることで対応してくれていることもある。
それなりに今回の台本は書き終わって、もうこの範囲では書き直しは不要というシーンも増えてきている。まあ、最悪シーンごと書き直すとかはあるかもしれないけれど、それは最悪のケースではということで。まあ、この数日シーンごと書き直すことが度々あったものの、もうなくていいでしょうよ、という時期に差し掛かっている。1万字ぐらいを書き直すのを3,4回と繰り返していると、書き終わる際には2作品ぐらいの文字数を書いていることにもなる。無駄かというとそうでもなく、書きながらキャラクターの本質、性格などを見極める重要な時期ではあった(過去形としておく)。
9月になっていること自体が恐ろしい時間の経過速度で、昨日今日は予定があったものの、執筆の進みがかなり厳しいと感じて全ての予定をキャンセルした。まあ誰かに迷惑がかかるような予定でもなかったのでそれはそれとして私だけが数ヶ月前から楽しみにしていた二日間だったのでただひとり嘆き悲しめばいいだけの話である。
本作ではオーディションやライブ、コンテスト、コンペ、グループ、ユニット、色々なアプローチが出来たために、ここまで中心となる物語が作りにくく、あっちにいったりこっちにいったり、そして舞台上にいる人の数を制限して書いていたこともあってなかなかに進まなかったという言い訳も思いつくが、、、未だに終わりがどうなるのか見えていない。誰のシーンで終わるかはそれなりに思いつくが、きっと変わるだろうしな、と今は思っている。
この作品では歌唱シーンはあるが多くの人に聞かせるようなオーディションやライブシーンとしては描かれないはずだ。それはただ一人のために歌うものであるはずだとは書き始めて思ったこと。
またこの手の作品、夢を追いかける人を主人公にした場合、サクセスストーリーを作っていくのが一つの手だが、私はサクセスストーリーは一種のファンタジーであると思っており、もっと明るいタイプの話、設定であればそれもできたかもしれないが、劇団の舞台にはなじまないとも思った。私がサクセスしたいぐらいだがそれは別の話。
夢を追いかける主人公がどう現実と向き合うのか、人と向き合うのか、自身と向き合うのか、その果てにどういう答えを出すのか、私はその流れ、導き、道筋をなぞり、文字に起こしているに過ぎない。幸せなのかもしれないし、不幸せな結末なのかもしれない。私はそれなりに答えを持って作品を送り出すが、パズルのピースは埋めずに送り出す。そんな余白づくりを私は芝居づくりにおいて重要だと思っている。
そして書き終わった時、劇作家としての私の仕事はもう終わっているので、解説はしない。勿論、役に立つかはわからないようなキャラ紹介やらは別の仕事。どちらかと言えば演出ノートのようなものだと思う。稽古をした時に生まれた設定もあるだろうし、言葉を変える時もあるだろう。
ちなみに今回はコメディパートではなくシリアスパートでお願いしようと思っていた役者さんもいるにはいるが、今の所シリアスパートの人というイメージがない。前回よりもコメディのキャラになってしまった人もいれば、この役は感情が忙しないと思うキャラも居る。キャラによっては怒り過ぎかもと思う人もいるが、きっとその役者さんが演じることでマイルドになるはずだと思うのでこのままにしておく。まあマイルドにならなかったら全体像がどう見えるかによって調整するでよい。が、それは演出の仕事として委ねる。
繰り返し書いておくこととしては、今書いている限りではこれは夢追い人の物語だがサクセスストーリーではない。とはいえ失敗する物語でもない。じゃあ、何かといえばなんやかんやと言い訳を考えて、誰かのせいにしてしまう弱い自分に負けずに「せーの」と一歩を踏み込む物語と言えようか。