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【デジタル教科書】令和6年度の本格導入に向けた方向性

21年(令和3年)5月27日に「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」が、2024年度(令和6年度)のデジタル教科書本格導入に向けた検討結果の報告書案をまとめました。
この検討会議は、「児童生徒1人1台端末環境におけるデジタル教科書・教材の活用促進について専門的な検討を行うこと」を目的として20年(令和2年)6月に発足した検討会議となります。
検討事項は以下の通りです。

(1)児童生徒1人ひとりが端末を持った際のデジタル教科書の在り方に関すること
(2)(1)を踏まえた制度的な位置づけに関すること

以前、別の記事でもこの会議の中間まとめについて取り上げましたが、今回の報告がほぼ確定した内容となりそうです。
(以前の記事:【デジタル教科書】今後の在り方、中間まとめ公表
今回は、中間まとめから変わったことをまとめながら、サマリーをお伝えしたいと思います。

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議
(第一次報告案)

1.デジタル教科書をめぐる議論と変遷

デジタル教科書に関する議論については10年くらい前から行われていたように筆者は記憶していますが、制度化されたのは2018年(平成30年)の学校教育法等の一部改正の際でした。その時は、「紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録である」ことと定義されました。
そして、2019年(令和元年)から一定の基準の下で、必要に応じ、教育課程の一部において、紙の教科書に代えて使用することができることとなりました。しかし、この時には文科省によって「デジタル教科書の使用を授業時数の2分の1未満にするように」と決められていました。ですが、GIGAスクール構想の推進に伴い、さまざまな会議帯にて「デジタル教科書の在り方を検討すべき」という提言がなされ、この検討会議にて2020年(令和2年)12月に2分の1ルールの見直しに関する議論がなされています。

2.報告案の全体的な内容(サマリー)

デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議
(第一次報告案)

上記、報告案は大きく分けて4つの構成となっており、中間まとめとの大きな違いは「検討を進めるに当たって留意すべき事項」という項目が追加された箇所になります。

1.デジタル教科書をめぐる現状
2.デジタル教科書導入の意義
3.デジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取組
検討を進めるに当たって留意すべき事項

1.デジタル教科書をめぐる現状
ここでは、「1.デジタル教科書をめぐる議論と変遷」で記載したようなデジタル教科書の今日までの変遷や、現在のデジタル教科書の普及率、海外の現状について簡単にまとめられています。普及率については、筆者が表としてまとめてみました。

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2.デジタル教科書導入の意義
デジタル教科書導入の意義は、以下のような項目を主な内容としています。

● 全ての人がデジタルに関わる社会になってきている
● ICTは「個別最適な学び」と「協働的な学び」を充実させ、子供たちの可能性を引き出すために不可欠なツールである
● デジタル教科書ならではの機能が、子供たちの学習を助ける
例)音声読み上げや大きさを変化させることができたり、直接的な書き込みができる、など
● デジタル教科書と他のICTツールと組み合わせることで、より子供たちの学習を助ける
例)先生が子供たちの書き込みを一覧視して理解度を把握できたり、子供たち同士の回答を共有することで知識の広がりを助ける、など
● 令和2年度に実施した「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」における調査結果によれば、例えば、「いろいろな情報を集める活動ができる授業だった」、「自分の考えたことを、文字や図にして書いたり、他の人に話したりすることができる授業だった」、「友だちとお互いの考えを比べることのできる授業だった」の項目について、「デジタル教科書の方がそう感じる」と回答した児童が約4割、「デジタル教科書と紙の教科書も同じくらい」と回答した児童が約4割みられた

3.デジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取組
今後必要となる取り組みを以下のようにまとめています。

● 全国規模の実証事業を行い、事例を多く集める
● デジタル教科書の機能などに関する標準規格を統一する
● デジタル教科書とデジタル教材の連携を検討し、学習履歴を残すことをも検討の要素に含んでいく
● 障害のある児童生徒に対する配慮するようなデザインや機能を配慮に入れる
● 外国人児童生徒等に対する配慮をする。日本語での理解が難しい場合におけるルビや音声での学習補助、帰国などによっても学習したものをデータとして取り出せるような工夫など
● 健康面にも配慮をする。すでに指針は示されているので、それらを周知・徹底していくこと
● 教師の指導力向上の方策
● デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保
● デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討
● 本報告書の内容を元に、継続的な検討を行うこと

3.中間まとめからの変更点

今回まとめられた報告書を作成するにあたり、21年3月に中間まとめを発表し、4月に関係各所への意見聴取をし、意見募集するということを行いました。その意見などを受けて、中間まとめに変更点を加えて今回の報告書が完成しました。その変更点は「検討を進めるに当たって留意すべき事項」としてまとめられています。以下のような内容が追加されました。

● 令和6年度からの本格的な導入を目指すに当たり、以下に挙げるような技術的な課題については、実証研究と並行して、ワーキンググループで専門
的に検討することが必要である。
 ・デジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性等
 ・デジタル教科書の供給をクラウド配信により行う場合、一時的にオフラインでも使用できるようにするための仕組み
 ・過年度のデジタル教科書を使用できるようにするための方策(ライセンスの期間や費用の在り方等)
● 教育データ利活用をはじめとする他の分野の検討状況を踏まえる必要がある。
● デジタル教科書は、より良い授業を構築し、児童生徒の学びの充実を図るための新たなツールとして期待されるものである。デジタル教科書の使用は、あくまで教育の質を高めることが目的であり、その使用自体を目的としたり、紙かデジタルかといった、いわゆる「二項対立」の議論に陥ったりすることのないよう、留意しなければならない。
● 児童生徒のより良い学びの実現に向けて、紙とデジタルのそれぞれの良さをどう適切に組み合わせるかという視点を常に持ちながら、検討を進めるべきである。

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