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町の電気屋さん
近所の商店街に電気屋さんがある。
ずいぶん昔からあって、もう老舗と言っていいほどのたたずまいだ。
ぼくはこの町に住んで15年以上たつが、そこに行ったのは、多分1回だけじゃないだろうか。
だいたい家電は大型量販店で買うし、小さい電化製品はアマゾンで済ますことも多い。
町の電気屋さんにいく用事はほぼないと言っていい。
しかし、困ったことが起きた。
お風呂場の蛍光灯が切れたのだ。
(今のマンションに住むようになって15年ほどになるけど、この蛍光灯を変えた記憶はない。そんなに持つものなのだろうか)
まずアマゾンで買おうと調べてみたのだが、1本が数百円と安いからか、10本単位でしか買えないようだった。
(しかも送料が本体よりも高いぐらいなのだ。)
大型量販店で買うにしても、結構な長さのある蛍光灯で、これを持って電車に乗るのは危険だ。
じゃぁ、あそこの電気屋さんで買うしかないね、ということになった。
いつも商店街を通るとき、横目でみているお店。
何年振りかに入ってみた。
蛍光灯のある一角に行ってみる。
種類が多すぎて、どれがどれだかさっぱりわからない。
店員さんは老夫婦二人だけだった。
おじいさんの方は足を悪くしているのか、両手に杖を持っている。
ぼくはiPhoneで撮影した型番を見せて、
「これと同じ型番のものが欲しいんですけれど」
とおばあさんに聞いてみた。
すると、おばあさんが大量の蛍光灯の中から探してくれたのだが、なかなか見つからない。
おばあさんは型番をおじいさんに伝えた。
するとおじいさんは、おばあさんに場所を教える。
「あぁ、これなら、ほらそのもうちょっと奥、もう少し、はいそこ!
そのピンクのカバーのやつ」
てな感じだ。
あっという間に、欲しい蛍光灯が見つかったのだった。
「これ白色って書いてあるけれど、結構赤いよ」
などと、まめ情報まで教えてくれた。
町の電気屋さんってなかなか侮れないなと思った。