演技レッスン #2「表現」
柴田です。
第二回目のテーマは「表現」です。
今回も、主に未経験・初心者の方に向けて記載していきます。
「表現力」と行った方がわかりやすいかもしれませんが、それだと、「今現在出来る表現」と言った意味合いになってしまうような気がして、敢えて「表現」と言わせていただきます。
エンターテインメントの根底には常に「表現」を楽しむ事がある。
「表現する事の楽しさ」というものは、ついつい忘れてしまいがちです。
何事もそうです。最初は成長率と成長速度がとんでもないんです。グングン伸びる。それがいつの間にか鈍化する。そうこうしているうちに、「演じる」事に負荷がかかってしまう場合があります。
芸術・創作に産みの苦しみは付き物なのですが、始めたて~2年目までは、前向きに楽しんで「表現」する事をおススメします。
勿論、演じる題材によっては前向きとか楽しんで、という言い方が上手くハマらない場合もあります。
「自殺願望がある人物」とか「狂気じみた人物」とか・・・
「楽しんで!」って言われても・・・
って感じでもあります。それでも、役へのアプローチは楽しんで貰いたい。
「悪人を演じる方が楽しい」なんて言葉を聞いた事がある方も多いはず。
作る側が楽しんでいる事は観る側にも伝わります。
さて、どうやって?
お前、自分がやらないからと言って適当な前向き感出すなよ。
わかります。
正直、自分も役者だったときは、前向きを強要する講師に違和感がありました。
でもね、色々経た上で、やっぱり前向き、前のめりなんですよ。
と、いうわけで、まずは役作りのアプローチからお話ししていきます。
役作りとは?
「役作り」と言ってまず思いつくのはなんでしょうか?
「デニーロアプローチ」とか、聞いた事ありますかね?
ロバートデニーロの外見から内面に派生させる役作りです。(だいぶ簡単に言ってます。詳しくは別で記事で)
僕が思いつくのは「職業性」です。
衣装ひとつ取ってもそうです。制服着たらそう見える。というか、着た方もなんかそんなテンションになってくる。
映画やドラマに出演している俳優さんだと、その職業を演じる為にその職業の為の訓練をする期間が設けられます。
「医者」ならオペの動きを勉強するし、「ピアニスト」ならピアノを練習する。
青春もののスポーツも同様です。
「野球」「バスケ」「水球」「チア」
などなど。動きに信憑性を出すために、専属のトレーナーがつきます。
アクションもそうです。ヤンキーものから剣術まで、殺陣の特訓をする事も役作りの一貫と言えます。
演技初心者が、「仕事として」ではなく、「レッスンの為に」役と向き合う為に、プロの指導を受けるというのは、現実的(殺陣は受けて損はないですが)ではありません。
映画、ドラマ、ドキュメンタリーを観る事で役を掴むのが現実的なラインでしょう。
実際に、そのアプローチで間違っていません。やれる範囲で全力を尽くす。その繰り返しです。
それに、「役作り」を必要とするのは、特殊技能だけにありません。
医者もスポーツ選手も一人の人間です。
役の人物の「性格」や「行動原理」を台本から読み解いて、それを自分に落とし込むことも重要な「役作りの要素」です。
詳しい役作りへのアプローチは後日、別な記事にて記載させていただきます。
今回は一例として「4つのw」を記載させていただきます。
役作りの方法「4つのw」
演技経験者なら必ず一度は、一度どころではなく耳にする事になるスタニスラフスキーという演技の神様が提唱する「4w」というメソッドです。
かみ砕いて説明します。
誰が (who)
いつ (when)
どこで (where)
何を (what)
「W」は、これらの頭文字を取ったものですね。スタニスラフスキーは、これらの質問なしでは演技は無意味だと言いました。台本を読解して、役の人物を掘り下げながら、この4つの「W」を埋めていきます。
「誰が」
その人物の名前は? 何歳? どんな人物だろうか?
「いつ」
何時? 何曜? 今年? 大昔かも?
「どこで」
正確な場所は? 地方によっては方言も? 日本? 異世界転生しちゃった?
「何を」
役の人物の目的は? 譲れない物は? そのシーンで何をする?
リストアップしたそれらを落とし込んで表現する。
注意店としては、
「リストを作ることで安心しないこと」
があります。あくまでも手がかりです。考えることで役を深く理解できるきっかけにする、ヒントを模索するための方法のひとつです。
大きく演じる
映像向けワークショップ(舞台に特化していないもの全て)においてしばしば喩えとして出てくる「舞台芝居」という言葉があります。
「大きな表現」が、大きいだけでリアリティがないと言う意味の、あまり良くない喩えの場合が多い。相手役ではなく、客席を向いて芝居していたりの、表現方法的な事を含めて。
もちろん映像の芝居は、客席ではなく相手役を感じるという感覚で違いないですが、現場レベルでいうと相手役なしの芝居だってあります。
カメラに向かって、相手が目の前にいる「てい」で芝居をすることだってあるんです。
「舞台芝居」という言葉の中には、その認識が甘い場合があります。
その言葉が使われる場合の大抵が、単純に表現の力が足りなくて、それが言葉で説明出来ないから、そう言っている!という事が多いように思います。
逆に言うと、内面が落とし込まれていれば、どんなサイズ感の表現であろうとも、役に信憑性を持たせる事は可能である。と言えます。
さて、前置きが長かったです。
未経験者・初心者の方々には、リアリティよりも大きく演じる事に取り組んで貰いたいと思っています。
「実際はこうする」「そんなに大きく反応しない」という壁を最初から作るのは勿体ないです。
指導者側からの視点で言うと、大きいものをアジャストさせるのと、小さいものを大きくしていく事では、圧倒的に後者の方が難易度が高いのです。
まずは大きく表現する。
ひとつだけ忘れてはいけないのが、相手役を「感じながら」大きく表現する事です。
「言い方」や「やり方」を「現象」として「起こす」のです。
演じる事に答えはありません。突き詰めれば突き詰めるほどに、面白く、難解なものです。
苦しくなる日は必ずやってくるでしょう。ですが、苦しみが訪れるその日まで、全力で楽しんで「表現」しましょう。
それでは、また次回お会いいたしましょう。
柴田孝介