見出し画像

演技レッスン #3-2「読解」

柴田です。

前回の続き、「読解」について学んでいきましょう。

前回の記事では、「読解力の上げ方」と、「読解力の無さによって起こる弊害」をお伝えしましたね。

今回はそれを踏まえてもう少し深堀りしていきます。

脚本全体を把握する。

プロの脚本家が書いたホンであれば、そこに無意味なシーンは存在しません。一見ストーリーとは関係ないように見えるシーンだとしても、役の人物の状況や心理を表すためのギミックになっている筈です。

主人公、もしくはメインの登場人物だった場合、シナリオの全体の中で変化を遂げる筈です。

「精神的な成長」ですね。

そうでない展開の作品もあるにはありますが、基本的に主人公は首位の人物との関係性の変化によって、成長するのです。その道のりはジェットコースターのレールのようにうねうねと曲がりくねったものです。

いい脚本は、とにかく主人公を虐めぬくとも言われています。その過酷な状況を乗り越えた主人公が、「精神的に」成長するのです。

その変化の過程で起こる差異、葛藤を表現しなければなりません。

そして周囲の人物は、主人公の状況や心境の「変化」を与えるための行動を取ります。「変化させてやろう」ではなく、役の人物として生きた結果、そうなるべく行動した。ということです。ワンシーンだけしか登場しない人物だとしても同じです。

役の人物が作品の中で担う「役割」を理解するのです。

前回も登場した「ビートチェンジ」にもつながります。物語の展開を、主人公の運命をチェンジさせる役割を逃してはなりません。

その上で、いかに魅力的な表現をするのか? 人物を立体的にするのか? 作品の中で輝くのか? それを目指す。

演出家の想像と「別方向に行く」のではなく「超えていく」のです。

脚本構成

遊び感覚でも構いません。脚本を書いてみてください。

ストーリーを構築するという経験は、ストーリーを読み解くという力をつけるひとつの訓練になります。

俳優を志す人の殆どは、物語が好きな人だと思います。

そして、作家を志していなくても、描きたいテーマは持っているはずです。上手くまとまらなくてもいいので、それをぶつけてください。

脚本というフォーマットになっていなくても構いません。あらすじでも、プロットでも構いませんので、作ってみましょう。

その中でひとつ意識して欲しいのが、「三幕構成」です。脚本執筆の基礎中の基礎なのですが、ここで語るとながくなりますので、とても似た、親しみやすいもので代用します。

それは「起承転結」です。

物語の「起」こり。前提の説明。

それを「承」った事件の発生。

ある出来事をキッカケに「転」じる。

「結」末を迎える。

です。

一番シンプルな桃太郎で喩えます。

「起」ドンブラコ。桃太郎が産まれる。

「承」鬼を退治するために旅立ち、仲間を集める。

「転」仲間が集まり、鬼ヶ島へ乗り込む。

「結」鬼を退治し、財宝を手に村へと戻る。

※ 所説あります。

「4コマ漫画」も起承転結で構成されていますね。

これをベースに書いてみてください。

細かく言うと、時間配分などなどいろいろあるのですが、そこはざっくりでかまいませんので、「とにかく展開する」その「キッカケを自分の中で明確にして書く」ということを意識してください。

先に書いた「三幕構成」も「序破急」も、似たような事を言っています。つまり、物語の完全たる基礎なんです。

「作る」から「読み解く」のヒントを得られるはずです。

アウトプット

前回の記事で、「観る」ことからも読解力を得られるという事を説明しましたね。映画を観ながら、物語が動いたポイントを発見する事は読解力を鍛える手段として実に有効です。

ですが、昨日の夕飯のメニューも忘れてしまうわたしたちです。どうしても記憶に定着していきません。多くの作品に触れれば触れるほどです。今まで食べたパンの数を覚えていない私たちでは仕方ないことです。

その記憶に定着させやすくする為の方法。

それが「アウトプット」です。

気付いたポイントを「メモにまとめる」でもいいですし「誰かに話す」でも構いません。どちらの場合でも、正式に人に伝える事を前提にしたものの方がいいです。

きちんと書く。きちんと話す。「アウトプット」をする事によって、経験値として蓄えやすくなります。

「読解」のまとめ

脚本は「設計図」に例えられます。一流が集まる現場では、「おお、そこをそう表現したのか!」ということが多々巻き起こるでしょう。それと同じくらい、「あ、そこそう表現したのね」もあるはずです。

出来上がったものが全てです。それが俳優としての評価になり、次の作品につながるかどうかの一因になります。

ある程度カンが良くて、思い切りの良い俳優だと、何となく躍動して演じられているように見えてしまうのです。ですが、「読解」の下地が無いと、必ず手詰まりになります。

「読解」は、俳優にとって最も大切な要素だと考えています。呼吸レベルでしみこませるべき技術。

「自由に演じる」とは、脚本を味方にして俳優が演じる事で、「役の人物を紙に書かれた文字から、人間に昇華させる」ことだと思っています。

一朝一夕で身につくものではありませんが、必ず身につける事が出来るものだと信じています。読解力を身につけて、役の人物を立体化させましょう。


いいなと思ったら応援しよう!