足尾探索記(エスネコ視点)1
どうも、エスネコです。
今回は、足尾銅山の旅行日記です。
多分大方の人は知っているであろう足尾銅山。
銅山へ行った体験を、一人称視点で語った小説風に書いてみました。
何本かの記事に分けて投稿するので、
次回の記事を投稿次第URLを貼っておきます。
まあ、言ってもただの体験記なのでのんびりと読んでください。
それでは本文へどうぞ。
小山駅で相方の香風音(かふぇいん)と合流する。
こいつと旅をするときは、カロリーメイトとカルピスを買うことが自分の中で恒例となっている。現在位置は栃木県小山駅。ぐんまワンデー世界遺産パスを購入して、両毛線に乗り桐生駅まで行く。
……電車に揺られ、窓の外を眺める。聞いた話によると、この路線は山際に沿っているらしく、窓一面山が広がっている。未知への興奮で胸を高鳴らせながら、相方と談笑する。こいつとは週1、2回のペースでビデオ電話をしているが、実際に会って話すのとはやっぱり違う。お互い暇つぶし用の本を持って来ていたが、どうやら必要ない様だ。話題が尽きることはない。種が落ち、芽が出て、花が咲く。話が新たな展開の予兆を見せたとき、我を忘れて楽しくなる。
桐生駅に到着。で一度この駅で下車し、西桐生駅でとある車両を撮るらしい。下車し相方の後に続いて歩く。改札の上にホームがある構造で、階段を降りた先に改札が見える。トイレを済ませ、駅の外に出る。ホームから見えた広場に出ると、先の方に大きな道路が見える。少し歩くと商店街があった。人気がないせいで、どこか寂しい。ほぼすべてのシャッターが降りている……。
そんなこんなで、風に周りの観察をしながら歩き続けること5分。西桐生駅が見えてきた。外装が大正的な雰囲気を出している。
中に入る。内装は和洋折衷といった装飾になっている。改札が木造で、横に立っている駅員が棒で開ける仕組みになっている。ワンデーパスを駅員に見せ、駅構内に入る。被写体を待つ。遠くの方に見える踏切が鳴り始め、少しの後車両が見えてきた。減速しながら近づき、目の前で止まる。ぐんまちゃん(群馬のご当地キャラ)が貼られている。車内を覗き見ると整理券の発行する機械が見えた。電車にも有るんだ。
車両が発車し、ホームから出て待合室を見て回る。切断されたレールが展示されていたり、油絵が飾ってあったりと歴史を感じられる。その中に券売機があったり扇風機があったりというギャップがいい味を出している。
一通り見て西桐生を後にする。桐生駅に戻り始めるが、次の発車時刻には間に合わないだろうということで、早く歩きながらも走りはしなかった。
桐生駅に着き改札を通ってホームに出る。ちょうど乗る予定だった車両が去っていくところだ。なんだよ、走れば間に合ったじゃん。相方と文句を言い合って椅子に座る。まあ、言って10分程度だ、待てる。談笑をしながら待機する。昔行った相方との鉄旅で、お目当ての車両を1,2時間待ったこともあるくらいだ。
そんなことを考えていると列車が見えてきた。相方が写真を撮るのも見て車内に入る。2011年に製造されており、見た目はとても綺麗だ。ここからわたらせ渓谷鐵道、通称わ鉄となっている。窓の外に観光地といった雰囲気が漂い始めてきた。
次の目的地は間藤駅、現在わ鉄で運行されている範囲での終点だ。外の風景は田舎に近づいていく。鉄橋、川、暫くすると山景色変わった。周りが全て木に囲まれている。時折木々の隙間から覗く川の眺めがど迫力だ。視覚全体に自然が作り出した地形が広がり壮大さを肌で感じる。写真に撮るが、どうもうまく表現できない。自分の写真技術にもどかしさを感じながら、今しか触れることのできないものを全身で受け止める。やっぱり実際に訪れることは本当に貴重な体験だ。動画じゃ分からない、揺れる感覚、香り、そして視界全てを取り囲む光。なぜこんなにも異なるのだろうか。きっと、秋に来たら、紅に化けた紅葉樹たちでさぞ美しくなるのだろう。
途中駅に近くなると建物が見え始め、特に多いところに駅がありそこで停車する。停まっている間に周りを観察する。見る駅のほとんどが木造になっている。無人だろうか。街には人影が見えない。閑寂で物静かな人にとってはいい環境だ。建物そのものや配置、道路の形が田舎特有のエモさを引き立てている。
発車時刻になり、車両が動き始める。進む車両の中から後方を覗くと、真上まで木で覆われている。木でできた自然のトンネルみたいだ。
空いている窓から外の空気に触れる。植物特有の香りや湿気が感じられる。まさに山といったところか。山の空気を堪能していると、窓枠のそばに置いた手に蔓が当たってきた。痛くはないが普通に入ってきて驚いた。しかもちょっと濡れてる。スッと窓から離れて逆サイドを見る。だいぶ山奥に入り、正に上流といった河がある。今乗っている車両が通った道を見る。落ち葉の上に線路が敷かれているのかと思うくらい、葉の量が多い。両サイドは完全に木々で満たされており、真上まで枝葉で覆われている。
長い深緑のトンネルを抜け、コンクリート造りのトンネルに入る。入り口が遠のいていく。感染症対策のために窓を開けているせいで壁に反射した音が入り込み、かなりうるさい。耳を塞いで窓から離れる。10分ほど経ったところでトンネルが終わる。閃光を伴い、一気に騒音が消える。目の前には白色の輝きを放つ石灰岩の群が居た。水流によってその姿を流麗と変え続けている。白色でなければこの美しさはなかっただろう。
夢中で写真を撮りながら、今しかできない体験に心を満たす。貴重な感覚にできるだけ触れるために、大きく息を吸い込む。非日常茶飯的な体験に、少年だけが持つ無知な感動を抱く。
窓の外を眺めていると、突然鉱山施設が見えた。——足尾銅山だ。教科書で見たことのある、とても寂れた見た目をしていた。が、ここでは降りない。更に奥にある廃駅、足尾本山駅へと向かう。気動車は進み、そして間藤駅へと到着した。