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坂本龍一【opus】。
あと三日で今年も終わり。
冬休みに入り、いろんなしたかったことを終えて、子供たちと実家に帰省しています。実家に帰ってからも、子供達を見てもらって用事を済ませて、ついでに展示にったり、今年やり残したことは、もうないかな、というところ。
今日は娘の年内最後の習い事の送り迎えをして、その間美味し過ぎていつも体が斜めになって「くぅ〜〜」と言ってしまう焼肉屋さんに行って一人焼肉をしました。(美味しいものなら一人で焼肉でもラーメンでも食べます)
あんまりに好き過ぎて(驚くべき安さで今までの人生の中で一番美味しい焼肉で、さらに提供も早く店員さんもみなさんやさしい)月に1〜2回通っていたら、「来年もよろしくおねがいします!」と帰り際にごあいさつされてしまい「こ、こちらこそ!!良いお年を」となんだか照れてしまいました。
年末は坂本龍一さんの映画「opus」を109プレミアムシネマ新宿で観てきました。きっかけは、現代美術館の「坂本龍一展」のチケットをいただいたこと。戦場のメリークリスマスを観たらいろんな意味で衝撃を受け、一体この人は何者なのか?とずーっと曲を聴いていました。
そういえば、友人がこの頃観た映画でよかった、の中に「坂本龍一が、観客のいない空間で、ひたすら演奏しているんだ、予告で泣きそうになってしまって、観たら泣いてしまった。劇場でもう一度観にいくと思う」と言っていた「opus」という映画を思い出しました。
それがもう数ヶ月前のこと、終わっているかな、と思いつつ調べたら、行けるところで一館だけヒットしました。
お迎えに間に合う!もうこの機会しかない!と調べて電車に飛び乗ったのですが、ぎりぎり。新宿の迷路みたいな地下通路で迷いまくり、地上を走って歌舞伎町のタワーに。汗をかきつつ室内でもエレベーター無い!!と迷って、上映開始5分後に辿り着いたら「現金は使えないんです…」とスタッフさんに言われてプチパニックになりながらカードで支払い。料金が普通の映画館の倍以上と内心「たっか!!」となりましたが、こちらです、と通されるとそこは天上の世界でした。
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ポップコーンも飲み物も無料、さらにはトイレはアメニティが充実、ラウンジのソファも最高。そして何より感動したのは、
「坂本龍一が音響をプロデュースした」という音でした。
私は普段音響で映画館を選ぶことはありません。子供のお迎えに行ける時間か、場所かということが最重要だからです。
そうとは知らずに入った映画館で、慌てて座ったフカフカのシートで、それを知った時の衝撃。そしてその後に始まった本編の、生きている音。
ああ、今日、ここで、これを観られたのは、なにか奇跡みたいだな、と思ったのでした。
中盤で、坂本龍一はもうこの世にいないのに、居るみたいな、夢か現かの間をふわふわしているみたいな感覚になりました。
鬼気迫るものがあったり、まだまだ弾いていたいような楽しそうな感覚だったり、研ぎ澄ましていくこと、
坂本龍一が、きっと人生で見てきた景色。
風や雨の音、その強さや質感、晴れた日の光の柔らかさ、するどさ、草原に、海原、雨の降る日の静けさ。
言葉より、もっと肌に沿うような繊細さで。
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真っ直ぐに届くのが音楽で、ピアノは道具なのだけど、手の身体の延長で、
ごみごみとした世界の上空で、美しい音について考えると、くらっとするものがありました。
上映後、ぐにゃぐにゃになって、ラウンジのソファでだらけながら、
「言葉より、音楽や絵画の方がほんとうはずっと早くて正確なのかもしれない」
そんなことをただ感じていました。
Ars longa, vita brevis
思い出すと、泣きそうで、鼻の奥がつんとする。
けれど
なんで泣けるのかわからない感じ。でもきっと、私はそれを知っている。
初めて行った映画館でびっくりするくらいプレミアムで(価格もサービスも設備も)ひええってなりましたが、
行けてよかったし、観られてよかった。
モノクロなのもよかったな、と。
帰りの電車でアルバム聴きました。というかここ数日聴いていたから、映画の中で、それらの音が現実に生み出されていくのが不思議でした。
教えてもらわなかったら行かなかった映画で、もし坂本龍一展に行くことが決まっていなかったら、こんなに一生懸命行こうとしなかったかもしれない。
私にとって坂本龍一は音楽の人ってイメージはもちろんあったのですが、ただその人が一体どんな人なのかと言うところは、私の中ですごく曖昧でした。
それがこの頃曲を聴いたり、戦場のメリークリスマスを見たり、映画を観、彼の生き様みたいなものを人生の一番最後に、最後って言っても少し前ですが、それをもう振り絞るように、全部美しいものに昇華するように、取り組んだ作品を見て、その姿そのもの、生まれた場所も、生まれてきた音たちも美しいと、心から思いました。
展示にいくのがすごく楽しみです。
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