見出し画像

The Golden Age(黄金時代)

“The golden age of America begins right now.”

 1月20日、トランプ新大統領の就任演説は「Golden Age」の幕開けの宣言から始まった。何をもって「Golden Age」なのか、レトリックで飾られた彼の演説を最後まで聞くと、まさに「常態(Normalcy)への復帰」を高らかに宣言しているようにも思えた。つまり、「黄金の20年代」の再来である。

黄金の20年代

 「黄金の20年代」、とか「狂乱の20年代」とか、呼ばれる第一次大戦後のアメリカ合衆国の経済は、自由放任、大量生産・大量消費社会によって繁栄を極めた。経済発展に支えられながらジャズやフラッパーといった大衆文化が成長し、名実ともにアメリカは世界一の国家になったわけである。
 そんな20年代を象徴するのは3人の共和党の大統領は、ハーディング・クーリッジ・フーバーである。その中で最初に大統領になったハーディングは「常態(Normalcy)への復帰」を選挙スローガンに、1921年に当選。
 彼の孤立主義(国際連盟加盟に反対)・保護貿易主義・自由主義・ワシントン会議に見られるような強硬な外交政策、などはトランプと通ずるものがあるだろう。
 一方、「常態」というのは経済のみを指すのではなく、保守主義への回帰、という意味も持つ。彼が大統領になる少し前の1919年に制定された禁酒法は共和党主導で達成された(当時の民主党ウィルソン大統領は大統領拒否権を行使したが、否決された)。まさに伝統的キリスト教道徳に基づく精神主義の流行が背景にあったわけだ。また20年代はWASP(White・Anglo-Saxons・Protestants)と呼ばれた保守層と、新移民(19世紀後半から20世紀初頭に移民した南欧・東欧系)の間の対立が激化。結局1924年の「移民法」で新移民の数は制限、日本人移民に関しては禁止された。

1920年代と2020年代の様相

 第一次世界大戦からの”経済”復興と”保守”主義への回帰が1920年代。ならば2020年代はコロナ危機からの”経済”復興と行き過ぎたポリコレ・多様性の強要から”保守”主義への回帰。トランプ大統領が「Golden Age」と表現したくなるのも納得だ。
 これが現実となれば、「狂乱の20年代」が達成されるかもしれない。しかし、狂乱の後には恐慌があることを忘れてはならない。

いいなと思ったら応援しよう!