雪女と蟹を食う に見るINFPとINFJの心理
2022年放送のTVドラマ『雪女と蟹を食う』のキタ (INFP) と彩女 (INFJ) を通して両タイプの心理を探りたい。
【あらすじ】
キタは冤罪により友人、家族、婚約者と何もかも失って死を決意する。しかし、最期を迎える前に北海道で蟹を食べることを思い立ち、強盗を決行。そのターゲットとなったセレブ妻・彩女との数奇な駆け落ちの旅 (心中旅行) が始まる。
キタ (INFP) の境遇とその心理
流されやすい面があるが基本的には人が良い (Fi) 人物で、逆に言えば現実的な問題に立ち向かう強さに欠ける部分がある (Te劣等)。誰であれ冤罪に強く立ち向かうことは困難なことかもしれないが、キタについてはその弱点がもろに露呈する形となった。
一方、行き詰った現状 (Si) を変えるために強盗という突拍子もない策を思い付く (Ne)。INFPが多様なジャンルの創作物で主人公になりがちなのも、こういったマイペースながらも周囲を巻き込んでいく性質に依る所が大きいのではないだろうか。
また、INFPの心理として「人とは異なる自分を受け入れてほしい」というものがあると思われる。客観的な属性 (Te) に囚われず素のままの自分を受け入れてほしい (Fi) というのが内向感情型の基本心理としてあると思うが、INFPの場合外向機能としてNeを有しているので、とりわけ自分の人間としての幅の広さ、いわゆる多様性を認められたいと考える。
つまり、INFP・キタにとって彩女とは、社会から見放された挙句、法を犯してしまった自分を優しく包み込むように受け入れてくれた女神のような存在であったのだ。
最も、深い洞察力で全てを見透かすかのような雰囲気を纏う彩女は、女神というよりは菩薩と言う方が相応しいかもしれない。
彩女 (INFJ) の境遇とその心理
彩女を語る上では「理想」がテーマとなる。それで全てを説明できるとまでは言わないが彼女の根源には強い理想主義があると思う。そういった彩女の気質は既に学生の頃から強く出現しており、本編では教師 (後の夫) を誘惑するというエピソードで表現されていた。
年頃の女子が大人の男性に憧れる心理は特に珍しいものではないが、実際に行動に移す、それもかなり積極的に誘惑するという点で彩女の異質さは際立っており、彼女が孤独な少女であったことが推察される。
その背景には人一倍優れた洞察力と、その知性を妥協できない高い志があったと考えられる。その孤独を満たしてくれる稀有な理解者が文芸の才に秀でた教師であり後の夫であった。
だからこそ不倫を始めとする夫の不徳に目を瞑ってきたが、大衆小説を執筆するまでに落ちぶれてしまったことで遂に生きる意味を見出せなくなってしまった。ここにINFJのいわゆるドアスラムの心理があるように思う。
すなわち、孤高の小説家を支援する妻という理想のもと (Ni) 献身的に尽くしてきたが (Fe) 、大衆に迎合した作品を執筆するという形 (Se) で ”裏切られ”、遂に自分の中で何かが弾けてしまったといった所だろう。
ドアスラムに限らずINFJの複雑さはFeに依る所が大きい。理想主義ながらも物理的・実用的 (Te-Fi) に割り切るINTJと異なり、より精神的な満足度を追求する気質 (Fe-Ti) があるため越えるべきハードルが高くなるのではなかろうか。