極上の美味しいミステリー/近藤史恵「ビストロ・パ・マル」シリーズ
「パ・マル」
フランス語で、「悪くない」の意味。
「ビストロ・パ・マル」シリーズは、近藤史恵さんのフランス料理をテーマにした、とあるビストロが舞台の連作短編シリーズです。「シェフは名探偵」という題名で、ドラマ化もされています。
風変わりな三舟シェフが営む「ビストロ・パ・マル」は、美味しいフランス料理を出す小さなフレンチ・レストラン。個性的な従業員たちが和気あいあいと働き、その気取らない雰囲気が魅力です。また、三舟シェフは、美味しい料理を出すだけでなく、お客さんが持ってくる小さな謎や不可解な事件を、持ち前の洞察力で解決していきます。
既刊は、「タルトタタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」「マカロンはマカロン」の三冊です。
この本はこんな人におすすめ
①美味しい料理が出てくる小説が読みたい
②人が死なないミステリーが好き
③人間ドラマが読みたい
それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!
*小さなビストロが舞台の美味しい連作短編
ビストロ・パ・マルは、カウンター7つ、テーブル5つの小さな店です。三舟シェフの出す料理はどれも絶品、お客の心と胃袋をつかんで離しません。フランス料理というと格式張ったお洒落な印象が強いですが、本作では素朴な家庭料理を扱っています。
こうさぎは、「マカロンはマカロン」に出てきたタルタルステーキが気になりました。牛肉や馬肉を粗くみじん切りにして味をつけ、薬味と卵黄で食べる料理です。ちょっと調べてみた所、起源はモンゴル帝国の遊牧民の料理だとか。乗用の馬の固い肉を食べやすくするために、工夫を凝らしたのが始まりだそうです。馴染みのない料理についても知ることができます。
*シェフの謎解きミステリー
また、三舟シェフは美味しい料理を出すだけでなく、お客さんが巻き込まれた不可解な事件やちょっとした謎を、話を聞くだけで華麗に解いてしまう名探偵でもあります。一貫して「人が死なないミステリー」となっているので、ライトに小説を読みたい時にもおすすめです。安楽椅子探偵モノとしても読みごたえがあります。
また、第2巻の「ヴァン・ショーをあなたに」では、三舟シェフの過去も明かされるので、そこも要チェックです。
個人的に、近藤史恵さんの作品は後味が良いところがとても好きです。最後のワンシーン、ひとこと、ラスト一行で、爽やかな読後感を作り出すテクニックは、本当に流石だといつも思っています。
個性的な従業員たちと、並外れた洞察力をもつシェフが織り成す、美味しいミステリー。外食に行くことも難しい今、ビストロに行く気分を小説で味わってみませんか、ぴょん!
(2021年6月13日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)