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苦しみの先の幸せへ/町田そのこ「星を掬う」

私の人生は、私のもの。

「星を掬う」は、町田そのこさんの、本屋大賞受賞後第一作目です。

「ある夏の思い出」を募集するラジオ番組。千鶴は、小学一年生の夏休みに母親と共に旅をし、「母親に捨てられた」思い出を投稿して、賞金をもらいます。
そのラジオを聞いて連絡をしてきたのが、千鶴を捨てた母親の「娘」と名乗る女性・恵真。
千鶴は母と再会を果たしますが、現在の母親の姿は、想像とは全く違うものでした。
苦しみの中で、きらめく希望を見出だす物語です。

この本はこんな人におすすめ

①「母と娘」について考えたい
②認知症、介護問題について考えたい
③感動する作品を読みたい

それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*すれ違う母と娘の関係

主人公の千鶴は、小学一年生の夏休み、母と様々な場所を旅し、たくさんの思い出を作ります。しかし、その直後、母に「捨てられて」しまいます。
千鶴は、現在DVを繰り返す元夫から逃げるような生活を送っており、ラジオ番組がきっかけで出会った恵真の勧めで、彼女と千鶴の母親が住む家に同居することになりました。
読んでいて胸が痛くなるような描写も多いので、心が元気なときに読むのがおすすめです。
自分の不幸の理由をどうにかして見つけ、それを憎まなければ生きていけない、という悲痛さに、胸が詰まります。
「親ガチャ」という言葉についても、深く考えさせられるような物語です。

*社会派小説の側面

千鶴が再会した母は、認知症を患っていました。千鶴のことをすぐに覚えることはできず、二人は何度もすれ違ってしまいます。その中に見え隠れするのは、認知症患者自身の苦悩と、周りの葛藤、介護問題など。
その他にも、虐待やネグレクト、DVなどの重いテーマを抱え、それらについても鋭い切り口で綴られています。
登場する女性たちは、皆なにかしらの家族間でのトラブル、辛い経験を抱えており、一人一人の事情も段々明らかになっていき、ページをめくる手が止まりませんでした。

苦しみと葛藤の先で、幸せの光を掬い取る物語、ぜひ読んでみてください、ぴょん!


(2022年1月21日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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