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第3話:医療殺人⁉ 見えない痛み

父が「頭が痛い」と言い始めたのは、老人ホームに入居してから数週間後のことでした。89歳という高齢ではありましたが、父はこれまで大きな病気を患ったことがなく、家族の中でも「健康優良児」と呼ばれていました。少し耳が遠くなった程度で、日々の生活も問題なく送れていた父。しかし、ホームから「頭痛がある」との報告を受けたとき、私たち家族はただの疲れや軽い風邪だろうと軽視していました。

「特に大事ではありません。ただ様子を見ましょう。」

ホームの医師からそう言われた私たちは、安心してその判断に委ねてしまいました。しかし、それが父との最後の会話になるとは誰も予想していなかったのです。


突然の別れ

それから2日後、ホームからの突然の連絡が私たちを震え上がらせました。「お父様が今朝未明にお亡くなりになりました。」

信じられないという気持ちと共に、すぐにホームへ駆けつけました。そこにいたのは静かに横たわる父の姿。数日前まで元気だった父が、なぜこんなにも急に命を落としたのか。その理由を尋ねると、ホームの医師は「年齢的なものでしょう」とだけ答えました。具体的な説明はなく、私たちの疑念は深まるばかりでした。

「頭痛の原因は何だったのか?」 「もっと早く病院で精密検査を受けさせるべきではなかったのか?」

これらの疑問が次々と浮かび上がりましたが、誰も明確な答えをくれませんでした。


カルテの矛盾

父の死後、私たちはホームから提出された医療報酬の請求書を確認しました。そこには「ターミナルケア加算」や「看取りケア加算」という項目が記載されており、驚くべきことに、これらの請求が父の死後に発生していることが判明しました。父は本来、緊急の医療措置を必要としていたはずですが、カルテには「延命処置希望無し」「救急搬送希望無し」「DNAR」などが記載されており、ホーム側が家族への相談なしにこれらの判断を行った可能性が浮かび上がりました。適切な対応がなされていなかったことへの疑念が深まります。

さらに、頭痛についての記録は「強度の頭痛。経過観察」と簡潔に書かれていただけで、具体的な治療内容や経緯の説明はありませんでした。この記録から、家族に何の説明もなく経過観察と判断されたことが浮き彫りになり、私たちは対応の不適切さに納得できませんでした。強度の頭痛にもかかわらず、なぜ経過観察という判断がなされたのかについて、医療側がどのような基準や根拠で判断したのか明確ではなく、私たち家族には一切知らされていませんでした。この無説明の対応に、私たちは強い疑念と憤りを抱かざるを得ませんでした。この記録をもとに、父が適切な医療を受けるべきタイミングを逃していたのではないかという疑念が膨らみました。


不正請求の疑い

父の死後、ホームの医療費明細を確認している中で、さらなる問題が発覚しました。明細には、不必要と思われる医療行為や過剰な投薬が含まれており、それらが高額な請求項目として計上されていました。例えば、義父が苦しんだ頭痛に対して必要以上に多くの鎮痛剤が処方されていたり、明らかに必要のない検査が実施されていたことが判明しました。専門家に相談したところ、「これらは明らかに不正請求にあたる可能性がある」という指摘を受けました。

これが単なる過失なのか、それとも意図的な行為なのか――私たちは真実を求めて調査を開始しました。不正請求の背後には、利益を最優先する医療機関の姿勢が浮かび上がり、父が命を落とした理由が「医療殺人」によるものではないかという可能性が強まっていきました。


医療殺人の現実

「医療殺人」という言葉が頭をよぎるたび、胸が締め付けられる思いでした。父の死が防げたかもしれない事実を知りながら、それをただの不運と片付けることはできません。医療現場での透明性の欠如や、不正な利益追求が家族の命を奪うという現実を目の当たりにし、私たちは戦う決意を固めました。


家族としてできること

この経験を通じて、私たちは多くの学びを得ました。そして、同じような悲劇を防ぐために家族ができる具体的な行動を以下にまとめます:

  1. カルテや医療記録の確認

    • 不自然な点や矛盾がないかを徹底的にチェックする。

  2. セカンドオピニオンの活用

    • 医師の診断や治療方針に疑問を感じたら、他の医療機関に相談する。

  3. 不正請求を疑った場合の対応

    • 明細書を精査し、専門家の意見を仰ぐ。

  4. 声を上げる勇気

    • 異常を感じた場合は、躊躇せず公的機関や弁護士に相談する。


未来への希望

父の死を無駄にしないためにも、私たちはこの問題を広く伝える必要があると考えています。「医療殺人」という言葉が持つ重みを真剣に受け止め、より良い医療システムを築くために行動することが、私たちの使命です。この物語を通じて、読者の皆さまにも医療現場の現実に目を向け、共に声を上げる一助となることを願っています。

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