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第2話:医療殺人⁉ 帰らぬ短い滞在

それは、穏やかな日常の中で突然訪れた悲劇でした。義父をショートステイの老人ホームに預けたのは、私たち家族が久しぶりに海外旅行へ行くためでした。88歳の義父は自立した生活を送っていましたが、私たちが不在の間、安全で快適に過ごせるよう、短期間だけ老人ホームにお願いすることにしたのです。

ホームのスタッフは皆、優しく親切に見えました。「どうぞご安心ください。お義父さまはここで快適にお過ごしいただけます」と笑顔で送り出してくれたその言葉を、私たちは信じて疑いませんでした。

しかし、その信頼が揺らぐのは、わずか数日後のことでした。旅行先で聞いた衝撃的な知らせ――「お義父さまが転倒されました」という連絡が入ったのです。

「大丈夫です、すぐに対応しましたので安心してください。」

ホームからのその言葉に、一瞬だけ胸を撫で下ろしました。しかし、その2日後、次に入った連絡は、まさに悪夢のようなものでした。「残念ながら、お義父さまが今朝早く亡くなられました。」

信じられない現実

突然の知らせに、私たちは言葉を失いました。老人ホームに預けたのは、わずか数日間。元気だった義父が、なぜ亡くなったのか。転倒が原因なのか、それとも他に何か重大な問題があったのか――疑念が次々と頭をよぎります。

帰国してすぐに老人ホームを訪ねました。スタッフからの説明は、義父が転倒し、軽い打撲を負ったが、大事には至らないとのこと。しかし、亡くなる2日前に医師が診察を行い、鎮痛剤を処方したという話には疑問が残りました。

さらに、義父のカルテを確認する過程で、奇妙な点がいくつも浮かび上がってきたのです。特に、「救急搬送希望無し」という記載には愕然としました。義父は転倒後も意識があり、話すことができていたと聞いていたのに、なぜ救急搬送が検討されなかったのか。その理由について尋ねると、スタッフの説明は曖昧で、何度質問しても明確な答えが得られませんでした。

カルテに潜む闇

カルテをさらに詳しく調べると、記録に不自然な修正跡があることに気付きました。義父が転倒した時間や医師の診察時間に矛盾があり、まるで何かを隠そうとしているかのように感じられました。最も驚いたのは、転倒直後の対応について詳細な記録がほとんどないこと。医療従事者として最低限の義務すら果たされていないのではないか、そんな思いが胸を締め付けました。

医療殺人の可能性

これが「医療殺人」でないなら、何なのでしょうか。救急搬送の判断が遅れたこと、適切な治療が施されなかったこと、そしてカルテが偽造されている可能性――これらが重なり、義父の命が奪われたのではないかという疑念が次第に確信へと変わっていきました。

私たちは、義父の死の真相を追求するために動き出しました。弁護士に相談し、医療専門家にカルテの内容を精査してもらった結果、驚くべき事実が次々と明らかになりました。義父に処方された鎮痛剤は、高齢者にとって危険な副作用を引き起こす可能性があるものでした。さらに、「救急搬送希望無し」の記載は、家族に一切相談せず、施設側が独断で決めたものであることが判明しました。

医療現場の透明性を求めて

義父の死を無駄にしないためにも、私たちは声を上げ続けることを決意しました。この問題は、単に一つの施設の問題ではなく、医療現場全体の透明性や責任感の欠如に起因しているのではないかと考えています。高齢者が適切な医療を受ける権利を守るためには、社会全体で声を上げる必要があります。

医療殺人を防ぐためにできること

この物語を読んでくださる皆さまにお願いしたいのは、医療現場での対応や記録に疑問を持った際には、決して見過ごさず、適切な対応を求めることです。高齢者は特に、医療ミスや不適切な対応の被害を受けやすい立場にあります。だからこそ、家族として、私たちにできることはたくさんあります。

  • 医療記録の確認: カルテや処方内容をしっかりと確認し、不審な点があれば医療機関に問いただす。

  • セカンドオピニオンの活用: 他の医療機関や専門家の意見を求め、適切な判断を下す。

  • 声を上げる勇気: 異常を感じた際には、家族や社会に問題を共有し、改善を求める。

未来のために

義父が亡くなったことは、私たち家族にとって計り知れない喪失でした。しかし、その喪失を無駄にせず、同じような悲劇が繰り返されない未来を築くため、行動を続ける決意をしました。この物語が、医療現場の問題に目を向けるきっかけとなり、一人でも多くの命が救われる未来に繋がることを願っています。

**「医療殺人」**という言葉が現実であってはならない。その思いを胸に、私たちは今日も真実を求めて歩み続けています。

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