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尿膜管がん摘出手術
この記事の続きです
手術が怖い。
と怯えていたけど、ちゃんと睡眠はとれて(睡眠導入剤服用)目が覚めた。
来た。来てしまった。手術の日。
私はお臍をみた。
ジーッとお臍を見ることもあまり無かった。
もうこのお臍ともお別れだ。
お臍とお別れってなに?
私の想像してこなかった事ばかりが起こる。
主治医のA先生も、担当医B先生も回診に来て、
「今日手術ですね。頑張りましょうね」
と声をかけてくれた。
どうやらお臍は無くなっても、お臍っぽいくぼみが出来ると聞いた。
そういえば前日の看護師さんが私に、
「A先生とB先生で良かったねー。
とりのさん穏やかな先生だからね。良かったわー」
と話をしてくれた。いい先生コンビが担当で手術なんだ。それは嬉しい。
お臍は無くなるけど、お臍の掃除はあった。
看護師さんが
「オリーブ油なんですよ。これ」
と説明しながら、掃除をしてくれた。
私は、バイバイお臍と思いながらまるで、お別れの儀式をしているように、お臍がきれいになっていくのを見ていた。
あっという間にお臍はきれいになり、手術の準備は整っていく。
弾性ストッキングを履き、手術着に着替える。
そして肩にタオルをかけて、看護師さんと病室から出ていった。
看護師さんは私の事を気にかけてくれて、話をしながら一緒に歩いていると、談話室に両親が座っているのが見えた。
看護師さんが両親に声を掛け、私を見つけると心配そうに私に声をかけてくれた。
「頑張ってね」
「頑張れよ」
そして、看護師さんと両親と私は、一緒に手術待合室の前まで歩いた。
「いってきます」
と両親に声をかけ、私は大丈夫だという意味も込めて拳を挙げた。
自動ドアは閉まってしまう。
両親は心配そうに私を見ていた。
強がってみたものの、手術待ち合い室の椅子に座ったら、ボーッとしてしまう。
看護師さんが私の顔を覗き、
「大丈夫ですか?」と聞いてくれた。
「大丈夫です」と言ったけども、
目では『めっちゃ怖いでございます』と言う感じで看護師さんに顔をむけた。
ふるふると震えていると、隣に6~7歳位の男の子とお母さんと思われる女の人が座った。
子供用の手術着を着て、お母さんと話している。
お母さんは私より年下だと思う。
コロナ禍、面会は出来ない。
男の子も、寂しいし心細いと思う。
お母さんも、ずっと手を握りしめていたいと思う。
2人をみて、私は
「あの子も頑張っているんだ。大人の私が弱気になっちゃだめだ」
と思い自分を奮い立たせた。
頑張る。
10日乗り越えてみせる。
オペ担当の看護師さんに呼ばれ席を立ち、病棟の看護師さんと別れた。
「いってらっしゃい。また終わったら迎えに来ますからね」
オペ担当の看護師さんと手術室に入った。
先生、看護師さん、検査手術の時よりも多い。
私はベッドに横たわると、点滴、心電図など手術の準備の様子を見ていた。
本当に始まる。
看護師さんの
「眠くなる薬入りますよ」
という掛け声を聞くと、フッと意識がなくなった。
私は白い部屋にいた。
白い服を着て座っていると
「とりのさん」と呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、私は手術台に横たわっていた。
看護師さんが
「夢見てました?」と声をかける。
「見ていません」と私は話した。
意外と冷静なもので、「白い部屋にいた」と私が言っても、看護師さんは「???」ってなるかも。と思い言わなかった。
上を見ると、6人位の人が私を見ていた。
視界がぼやけててはっきり顔が見えない。
でもお礼を言わなきゃ
「ありがとうございました」
すると男の人が
「いやいや。僕は何もしてないです」
と手を振っていた。
皆笑っていた。
もう一度
「ありがとうございます」と伝えた。
皆にありがとうと伝えたかったから。
ちゃんと言えて安心した。