主治医制について考える
今回は主治医制についてのお話です。
・主治医制とは?
主治医制とは、患者さんが1人いたとしたらその1人をずっと診療する医師(主治医)が決められ、いつ、どんな時も主治医が治療方針を決めるやり方です。
逆に患者さん1人に対して何人かの医師で診療することをチーム制、当番制と言います。このチーム制、当番制であっても名目上は主治医は決められることが多いです。I.Cや治療方針は基本的にその決められた主治医がやりますが、休日、夜間でなにか対応が必要なことがあれば当番医の医師が治療方針や処置を決定します。
・主治医制のメリット、デメリット
主治医制のメリットはなんといってもその患者さんのことをしっかりと把握している医師が常に対応してくれることでしょう。特に高齢者の内科入院では発熱、転倒、不穏、せん妄、急変、誤嚥など状態の変化の可能性は常にあります。その場合に主治医制であればすぐに一番状態の把握している主治医にcallし、判断を仰ぐことができるため対応が迅速になります。
当然、患者家族も主治医を信頼していれば安心感はこの上ないでしょう。たとえ不幸な結末になってしまったとしても主治医にお看取り、お見送りまでしていただければ感謝の念も強くなると思います。
一方、デメリットはその主治医の生活が安定しないことが挙げられます。状態変化はどんなに名医だとしても予測できません。となれば当然、主治医制の病院で入院患者が増えれば増えるほど休日夜間のcallが多くなります。
待機や当直などとは無関係に自分のスマホに病院からのcallがあれば気は休まりません。旅行やイベント中に対応しなければならないことがあれば中断して対応せざるを得なくなります。
嘘か本当か、自分の親の葬式にも行けなかったなんて笑えない話もあるくらいです。
・なぜ若手医師に主治医制が敬遠されるのか
自分も含めてですが、主治医制というのは若手医師には敬遠されがちです。その理由は単純に時代に合ってなさすぎるからです。上記の主治医制であれば理論上365日待機であり、時間外労働も膨大になることは想像に難くありません。
研修医の自殺や医師の働き方改革など医師の労働時間にフォーカスが当てられることが多い昨今ではそのような勤務体系が歓迎されるはずはないでしょう。
しかも「お医者様」と拝み奉られてた時代とは違い、今は何でも訴訟、訴訟の時代です。何かあらばたとえ100%の治療を施しても(勝ち負けは別にして)訴訟を起こされてもおかしくない時代なのです。
・今後はどうすれば?
がむしゃらに働く時代ではないので今後は当番制を敷く病院もあります。しかし、ここで弊害があります。当番制を敷けるほど医者がいる病院や診療科であればいいのですが、すべての病院が人員が揃っているわけではありません。極論を言えば診療科に医師が1人しかいなければ当番制もなにもないわけです。
そういった主治医制を敷かざるを得ない病院や診療科はどうなっていくのか、、、若手医師に敬遠され続け消滅していくか、残った医師で延々とリスクを抱えて主治医制を敷くしかないです。主治医制が敬遠される→医師が辞める→人がいないから余計に主治医制となる。の悪循環に陥ってる病院も少なくないのではないでしょうか。