見出し画像

衝動のままに「しっそう」したいんだ

数年ぶりに再会した友人、1年ぶりに再会した友人、1ヶ月前にも会った友人。

10月上旬、そんな日があった。鹿児島の友人が宮崎市内で展示をしていた。その最終日の終了間際に会場へ入ると、これまた約3年ぶりの友人に会った。

引き寄せ合うというか、趣味趣向が合うとはこういうことか。

久しぶりに会うとみんなの成長を感じる。
ちなみに僕は5年ぶりの健康診断で身長が1.5cm伸びていた(そういうことじゃあないよな)。

3年ぶりの友人に「はんちゃん」と呼ばれて嬉しかった。
1年ぶりの友人には「はんちゃんに会えるのは嬉しい」と言われて嬉しかったがこそばゆかった。

「はんちゃんは今、何に関心があるの?」と聞かれ、声に詰まってしまった。

あれ、俺は何に関心があるんだっけ。

すぐに言葉が出なかった。取材原稿書いてるときなんてサクサクと言葉が出るのに、いざ自分のこととなると何を言えばいいのかわからなくなった。

他者の述べたことを「まとめる」言葉は数多く持っているのに、自分のことを「言い表す」言葉が見つからなかった。

少し間を置いて、「衝動…」と口にしたがその理由をちゃんと口にすることができなかった。

36歳、その場に年男が僕を含め3人揃った。そのとき不意に大学1年生の記憶が蘇った。アルバイト先の社員、Oさんのことだ。

2008年、初めてのアルバイトは緑のファミレスだった。入ったときにいた社員のOさんは当時36歳だった。当初は嫌味なところが目立ち嫌っていたが、一緒に仕事をする時間が長くなるにつれて深夜の退勤後に飯食いに行ったりカラオケ行ったりと仲良くなった。大晦日のバイト終わり、一緒に神社まで初詣に行ったりもした。

大学のOBということもあり共通の話題も多かった。

Oさんを見るたびに36歳ってオッサンだなあと思ってた。大好きだったELLEGARDENの細美武士も当時36歳だった。全然Oさんと違うやん、とよくネタにしていた。

Oさんはその見た目とは裏腹にカラオケでは黒夢や清春を歌っていた。昔はそんな感じだったらしい。Oさんにいつも大人になっていくことの縮図を感じていた。

意識は現在に戻ってきた。2024年、あっという間に36歳になってた。Oさんと同じ地点に立っていた。あのときも心ここに在らずだったが、今もそれは変わらない。体はここにありつつも、意識と目線はどっか別のところにいる。

「衝動」と口から漏れた理由もなんとなくわかった。

そうだ、衝動だ。

体の内側溢れてくるなんかよくわからんパワーだ。それに飢えているんだ。展示物に囲まれ、肌でそれらを受け取るなかでそう感じた。そして、会場にいた友人たちは、衝動と生活が深く結びついてる。勘違いかもしれないけれど、そう感じた。

今週、久しぶりに体調を崩して床に伏していた。
目眩がするなかで時折り家の近くを通る選挙カーの音が体に響いた。HPはゼロになった。

目を瞑りながら猪瀬浩平『野生のしっそう』に出てくる"兄"のことを思った。猪瀬さんの兄はどこまでも走っていく。失踪もするし疾走もする。フォレスト・ガンプみたいだ。

そうか、自分は衝動的に走ることに憧れているのかもしれない。
それはそのままの意味通りでもメタファーとしても。

いいなと思ったら応援しよう!

半田孝輔|ライター・編集
執筆活動の継続のためサポートのご協力をお願いいたします。いただいたサポートは日々の研究、クオリティの高い記事を執筆するための自己投資や環境づくりに大切に使わせていただきます。