阪九フェリー「いずみ」に乗ってみた。2018年9月23日新門司港から乗船。
はじめに
2018年1月からセミナー講師業を始めたことで、急な出張が増えた。天災の影響を受けて、直前に交通手段の変更を迫られることもあった。
9月前半までに、飛行機、新幹線、有料特急、高速バス、知人のクルーザー、そして各地域の路線バス、在来線、私鉄などさまざまな交通手段を利用したことになる。
8月のある日、唐突に「フェリーにはまだ乗っていないなぁ」と思いついた。
フェリーがどういう航路で運航されているのかも知らなかったので、日本長距離フェリー協会の「航路案内」を探して、初めて「こんなにあちこちに、フェリーで行けるんだ」と知ったくらいだった。
行き先を「新門司」にした理由
旅程を決めたのは下記の理由だった。
1.初めてのフェリー旅なので、見慣れている大阪南港あるいは泉大津港から発着している航路であること
2.今年はどうやら天災の影響を受ける旅が多いので、万が一のことがあっても陸路などで行き来できる地域であること
3.値段
「さんふらわぁ」の弾丸クルーズも魅力的に見えたのだが、2.の条件に不安があった。ほかのフェリーを利用する場合でも、自分の手配の仕方で、弾丸クルーズと同じような旅が実現できるだろうと気を取り直す。
しかし心配もあった。
4.体力的に疲れすぎないこと
現地0泊(船中2泊)3日の旅になると、体力的にどうだろうか?
片道はほかの手段を使ったほうがいいのでは?
あれこれ考えているうちに、大阪を台風21号が襲い、関西空港が甚大な被害を受けて運用停止状態となる。
山陽新幹線で移動するとなるとチケット代がかかる。
そうなると、往復フェリーを使うことを考えなければいけないのか?
決断がつかないまま9月1度目めの連休に突入したころ(自宅には台風21号の影響がまだ残っている)、あれほど運用再開に時間がかかると言われていた関西空港が運用再開されることが決定!
これには大変びっくりしたが、同時にありがたく思い、ピーチ航空・福岡空港行きをともかく予約する。
写真は福岡空港で撮影したMM151便。
フェリー選びの決断を
新門司から大阪に戻るためのフェリー予約についても、決断を迫られる。
最終候補は3つあった
1.名門大洋フェリー
2.阪九フェリー、神戸六甲アイランドに到着する便
3.阪九フェリー、泉大津に到着する便
1.は、ホームページを見ても、客室の設定や料金の詳細わかりにくく却下。今はかなり理解できるようになったが、調べていたときはフェリーの料金体系に触れるのが初めてだったので。
2.は大阪市内でセミナーの予定がある日にフェリーに乗船する場合は、こちらのほうが便利と気づいて一応候補に入れたが、日程の調整がついたので今回は選ばず。
そのため、3.に決定した。
客室選び
阪九フェリーの、大人1名の旅客運賃は次の通り。
皆さまへ::より役立つ情報をお届けしたいので、平成30年10月1日から平成30年12月31日までの料金を掲示します。阪九フェリーホームページを参照
スタンダード・和室 6,680円
スタンダード・洋室 7,710円
デラックス・洋室4人部屋 9,770円
デラックス・シングル 11,310円
デラックス・和室 13,880円
デラックス・洋室2人部屋※バリアフリー対応 13,880円
デラックス和洋室 13,880円
スイート 19,020円
ロイヤル 25,200円
インターネット予約をすることで、上記料金から20%割引が適用される。
私は1人旅なので、デラックス・シングルを選ぼうとした。でも、客室写真などを見ていて気になったのが「窓がなさそうだ」ということ。
せっかくの船旅なので、窓からの風景も楽しみたい。そうすると、定員が2,3人のデラックス、スイート、ロイヤルなどの各部屋を選ぶことになる。
他社のフェリー予約ページと違って、阪九フェリーの予約ページで手続きを進めるうちに「貸切料金はどうなるのか? 相部屋などはあり得るのか?」が、明記されているページがあって安心する。
結果的には、デラックス和洋室を選ぶことに決めた!
小倉駅新幹線口から送迎バスに乗車
乗船当日の朝、ピーチ航空で福岡空港に飛び、そこから在来線で小倉に向かう(注::博多、小倉の観光について、予想以上にあれこれ収穫がある取材旅となったので、後日、別記事にて詳細を)。
小倉駅新幹線口で送迎バス(フェリーの予約時に送迎バスも予約)を待つ人は長蛇の列となっていた。そのためか、送迎バスは2台つらなって到着。途中、門司駅でさらに旅客を乗せても、車内ではゆったりと過ごすことができた。
乗船手続き
新門司港に到着し、「いずみ」の姿を視界にとらえながら送迎バスを降りる。そして、フェリーの煙突のような形の建物へ。写真の煙突型建物のすぐうしろには「いずみ」が待っている。
泉大津で、遠くから写真のデザインを見ると、なんだか日本郵政のマークみたいに思えてしまうこともあるのだが(笑)。
チケットカウンターで予約番号をスタッフの人に告げ、チケットや客室のカードキーを受け取る。かなりの人数がカウンター前に並ぶけれど、クーポンをすでに持っていて並ぶ必要のない人が、誤って並んでいるケースも多々ある。そのため、行列が進むのはとても速い。
建物4階の乗船口まで上って、いよいよ船内へ!!
乗船
レストランのある6階の客室を割り当てられた。
船内はあちこちにソファや椅子があって、時間帯によっていろいろな人が座ったり、話したり楽しんでおられた。
なお、船内Wi-Fiの使用方法は乗降口近くの壁に掲示されている。客室内には説明がないので、わからなくなったら乗降口へ行こう!
案内所で、セーフティボックスの利用申し込みを受け付けている。乗船直後から、かなりの人が申し込んでいる様子なので、利用したい人は乗船したらすぐ案内所へ。
優しい色の照明が照らす廊下を歩いて客室へ向かう。
客室入り口のカードキーは、ビジネスホテルでもよくあるタイプだけれど、カードを差し込んでから、青いランプがつくまでのタイミングがすごい早いので、初めはびっくりしてしまう。
キーカードは持ち帰ってよい。旅の記念になる。
これが「デラックス和洋室」だ!
入室した瞬間、思ったより豪華な印象の客室に、かなり戸惑う。ベッドサイドのランプもちゃんと2人分ある。
バス、トイレは部屋にないが、廊下に出ると、トイレはあちこちに数多く設けられているのですぐたどり着ける。
入口ドアを開けると右手には洗面台がある。
歯ブラシセットや、女性に嬉しいヘアゴム・綿棒・コットンなどのセット、他にもなんかあったが忘れた(ごめんなさい)。
実は、名門大洋フェリーの客室ランクとアメニティの関係と、阪九フェリーのそれが、頭の中でごっちゃになってしまっていた。そのため、客室内のアメニティがあまりないと思い込み、歯ブラシやパジャマなども含めて持参してしまった。
だから、浴衣が用意されていることにも、けっこう驚いた。
和洋室なので、低いソファやテーブルが用意され、床に座ってくつろぐことができる部分がある。
普通のホテルと変わらないとはいえ、やはりここは船内なので、救命胴衣が用意されている。
新門司港から離れる
「いずみ」は定刻通り、17:30に離岸する。短い時間だったが、福岡の充実した旅を思い出す。
暗くならないうちに展望デッキへ
9月に入り、夕方の日が落ちるのが早くなっているため、まずは7階へ上り展望デッキを見学にいく。潮を含んだ風にあたることになるので、デッキへ出るなら入浴前にすることをお勧めしたい。
さよなら新門司、さよなら福岡。きっとまた来る! などドラマみたいにひたってみる。
自分自身がディンギーヨットで沈する(転覆して海に落ちる)経験を重ねているからか、救命用具に関してとても興味がわく。
レストランで夕食を
せっかくのフェリー旅だから、持ち込んだ食べ物だけじゃなくフェリーで出される食事を楽しみたいと思う。
私は数日前から胃がもたれる感じがしていたので、野菜サラダとコロッケ(ポテト、カニクリーム)、ご飯とごく軽めのメニューを。
ネットでたくさんの乗船体験記を読むうちに、「レストランは混んでいる」というイメージができ上ってしまい、外が見える展望席はきっと埋まっているだろうと思い込んで、内部の席(給湯器や給茶機の近く)で食事をする。後から見まわすと、展望席にも少しばかりの余裕はあったようだ。あぁ、ちゃんと確かめないと。。。
写真の野菜サラダは、けっこう強敵だった。食べても食べてもキャベツが出てくる感じ。野菜不足になりがちな旅行中には、よい料理かもしれない。
料理の値段は、阪九フェリーホームページでも公開されている。都市部のカジュアルなレストランでの料金とあまり変わらず、船内だから高いことを想像していた私には意外だった。もつ鍋850円など料理の台に出されていないメニューは、スタッフの人に頼んで、番号札を受け取り座席で待つ。
「いずみ」だけに限らず、阪九フェリーの船はレストランがカフェテリア方式であることも特徴的。他のフェリーはブッフェ式(バイキング式)のところも多いので、なぜだろうと疑問に思っていた。
食事中から食事後にかけて、お客さんの動きを観察していると、食べ終わった人はスムーズに退出してくという当たり前のことに気づいた。ブッフェ式の場合、制限時間はあるものの、お客さんの滞在時間が長くなるだろう。
また、「いずみ」ではレストランの囲いの外側にも着席できるスタイルになっているので、ブッフェ式にすると、入退場の管理にスタッフが必要になる。
あれだけの人数が席につけるレストランを狭い船内に設けるわけだから、ブッフェ式だと多くの人が料理の台に殺到して、混乱することも考えられる。いったん着席したお客さんが、あまり立ち歩くことのない店内は、実際に落ち着いて食事ができた。
このようなカフェテリア式のメリットを考えて、選んだのだろうと勝手に想像して納得した。
5階案内所の近くも楽しい
窓のある部屋を選んだので、外の景色も楽しみたい。確か、5階の案内所近くに、3つの橋を通過する時刻が掲示されていたことを思い出し、5階へ降りる。
21時半ごろ「本日最後の船内放送です」としてさまざまな案内があるが、橋の通過予定時刻も放送内容に含まれている。また船内放送は、客室にいても聞き取りのボリュームを上げないと聞こえづらく、廊下や売店などにいるととても聞こえない。分からなかった点は、スタッフの人に聞くと、ちゃんと教えてもらえるのでご安心を。
なお、客室内のテレビを12チャンネルに合わせると、船の現在位置を知ることができる。
売店の近くではコーヒーやカフェラテ、パンの販売がある。乗り慣れているらしい人たちの中には、コーヒーやパンをはじめから手際よく購入している人もいた。
売店のおみやげ物にはオリジナルグッズもあった。それらも、あまり高額という印象はなく、一般的なお土産店で買うのと同じくらいだった。
案内所の前の空間で、船内ライブがあるという案内があった。私は行き損ねた。
案内所付近のソファには、いつも何人もの人がくつろいでいる。満席という感じではないが、客室以外の広い場所で過ごしたい人が、のんびりしておられる。
船首にも展望ルームが
私自身は行き損ねたのだけれど、「いずみ」には6階展望ルームというものがある(7階展望スペースとは別のもの)。6階展望ルームからは、船首に向かって景色を楽しむことができるようだ。あぁあああああああ、行きたかったよぅうううう。なお、22時~5時までは立ち入れないので、私のようにならないよう注意を。
先にも触れたが、博多・小倉での観光で、想像以上に得るものが大きかったので、心地よい疲れを感じ、夜はこてっと寝てしまう。
朝の楽しみ方もある
4時20分ごろに目が覚めたので、明石海峡大橋の通過時刻には間に合った。
まだ暗い外の景色を見て、あぁ秋なんだぁと感じる。
室内の電気ポッドでお湯を沸かして、粉末のほうじ茶をいただく。けっこうおいしい部類だと思う。ほうじ茶のスティックは8つも用意されていた。
5時からはレストランが開く。その時刻には10人を超える人がレストラン入り口で待っている。でも、その人たちがレストランに飲み込まれた後は、大量に人が来るということはなく、全体としては空いている。
泉大津への着岸・下船は6時だが、「ゆっくりステイ」という7時30分まで、船内で過ごせるサービスがあり無料で利用できる。ゆっくりステイを利用するなら、レストランにそんなに早く行く必要もないだろう。
フルーツの盛り合わせがおいしそうで、手を伸ばしかけたのだけど、胃の調子を考えるとちょっと。。。フルーツポンチにする。お値段的にはあまり変わらず。
昨夜のキャベツと同じで、意外に「食べても食べても終わらない」感じのするボリュームだった。
売店で、コーヒーやカフェラテ(300円くらいだったと思う)とパンを購入している人も多い様子。
船を降りる
やがて下船時刻(6時)が近づき、船内放送で下船準備を促される。
空は徐々に明るくなり、海だけではなく、人間によって造られたものが視界に次々と入るようになる。
朝、レストランで食事して、送迎バスに間に合うように下船するためには、荷物は事前に片付けておいたほうが安心だ。また、一般的なホテルとは違い、客室内に収納がないので、荷物をあまり広げないほうが良いだろう。
フェリーが着岸すると、5階の乗降口から下船が始まる。チケットカウンター(9時から営業のため受付スタッフはいない)の横を通り抜け、送迎バスの乗り場に向かう。和泉府中方面、O-CAT方面行のバス(有料)と、泉大津までのバス(無料)で乗り場は分かれる。
送迎バスに乗り遅れた場合、公共交通機関がなくタクシーに乗るしかなくなるため、注意が必要だ。ただし、「ゆっくりステイ」の人は、その時刻に合わせた送迎バスがあるので安心して欲しい。
また、泉大津に送迎バスが着くのは7時前で多くの店舗は閉まっている。でも、アルザ泉大津1階のマクドナルドは開いてるし、近くのココスが7時から朝食バイキングを提供しているので、うまく利用されてはいかがだろうか?
こうして、私にとって初めてのフェリー1人旅が終わったのだった。
知っておいて欲しい「いずみ」で便利に過ごすポイント
★船内Wi-Fiの使い方が分からなくなったら、客室内に利用案内はないので、乗降口付近の掲示を見よう
★セーフティボックスを利用したい人は、乗船後すぐに案内所で手続きを
★船内放送はボリュームを上げないと聞こえづらいので早めに調整を
★21時半ごろ「本日最後の船内放送です」としてさまざまな案内がある
★客室内のテレビを12チャンネルに合わせると、船の現在位置を知ることができる
★レストランは特にぼったくり的価格ではないので、うまく利用を。価格の心配をして、荷物になる食事を船内に持ち込むよりは、レストランで食事するほうが荷物は減らせる。
★入浴はどの時間帯でも混んでいるので、混んでいるものと割り切って、自分のペースで利用を
★6階にも展望ルームがあり22時まで利用できるので、私のような悔しい思いをしないようにして欲しい
★泉大津に送迎バスが着くのは7時前で、多くの店舗は閉まっているが、マクドナルドは開いている。また近くのココスは、土日祝限定だが7時から朝食バイキングを提供している。
今後に向けて
私はかつて、パニック障害やメニエール病で乗り物全般に乗ることが、とっても苦手だった。でも今年は、すごくたくさんの乗り物に乗り、車中泊や船中泊も体験した。足を踏み入れた地域は、兵庫、岡山、福岡、京都、和歌山、奈良、滋賀、三重、愛知、岐阜、静岡、東京、神奈川、埼玉、千葉など(抜けもあると思う)。
そんな私の過去と、今の姿を見て、誰かが「私もあんな風になりたいな」って思ってくれるなら、私としては嬉しい。
これからも積極的に旅をして、自分自身のためにも、そのほかの人のためにも多くの情報を伝えていきたい。
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