守らなければ大幅減点?公務員試験の論作文ルールについて解説
論作文試験では、出題されたテーマに対する深い理解と、それを文章として論理的に表現する能力が求められます。しかし、その一方で多くの受験生が見落としがちなのは、優れた内容を書くことだけでは不十分という事実です。
論作文の採点には厳格なルールがあり、それらを守らないと大幅な減点につながります。
また、公務員試験の論作文では、学校の入学試験や民間就職試験の論作文とは異なる傾向・注意点があります。
この記事では、公務員試験の論作文で減点されないためのルールについて詳しく解説していきます。
書き始める前の心構えから、主な減点要因とその対策、さらには原稿用紙の使い方まで、受験生が知っておくべきポイントを網羅的にカバーしていますので、必ずチェックしておきましょう。
ちょっと待って!書き始める前の2つの心構え
公務員の論作文試験では、ただ意見や知識を羅列するだけでは高評価とはなりません。出題文の問いに対して解答を導き出す「問題解決能力」と、その思考を筋道立てて展開する「論理的思考力」が求められます。そのため、ペンを走らせる前に、以下の3つの心構えを持つことが重要です。
問題文の趣旨を押さえる
論文試験において最も重要なのが「趣旨の理解」です。どれだけ優れた論述を展開しても、本来の問題の趣旨からズレた内容では意味がないからです。
出題文の趣旨を見誤らないために、特に重点的にチェックすべき項目は以下の2つです。
問題へのアプローチ方法は指定されているか
論作文試験の出題文では、「このような状況を踏まえた上で意見を述べよ」「これまでの経験を踏まえた上で施策を提案せよ」などという形で、答案する上での条件が示されている場合があります。これらの条件は、問題へのアプローチ方法を出題者側が指定しているものですので、必ず守るようにしましょう。
たとえば、" 自身の経験を踏まえた意見 " を求められているに、知識や一般論に基づいて答案を書いてしまうのはNGです。問題解決の主体は誰か
問題を解決する主体が誰なのかを間違えないことも重要です。出題文が求めているのが「行政機関としての取組」なのか、「個々の職員としての取組」なのか、明確に区別する必要があります。
たとえば、問題文では " 個々の職員としての取組を提案せよ " と問われているのに、組織全体で取り組むようなスケール感の施策を提案してしまうのはNGです。また、新たな技術開発が必要な施策など、行政機関のみでは達成不可能な取組を提案するのもNGです。
これらのポイントは、一見簡単そうに思えますが、受験生が特に見落としやすい部分です。出題文を読む際は、これらのキーワードやフレーズを重点的にチェックし、出題者の意図を冷静に見極めましょう。
全体の構成を考える
私が採用試験で試験官をしていた頃、試験開始の合図と同時に猛烈な勢いでペンを走らせる受験生をよく見かけましたが、これはあまりおすすめしません。なぜなら、質の良い答案を書くためには、まず全体の構成をしっかりと計画することが非常に重要だからです。
試験開始後、まずは問題用紙の余白などに、序論、本論、結論の大まかな流れを書き出してみましょう。それぞれの部分でどのような内容を述べるかを予め決めておくことで、論理的な構造を持った答案を書きやすくなります。
行政・公務員の視点で書く
当然ながら、公務員試験の作文・小論文試験では、行政機関・公務員の視点で論述することが求められます。公人としての立場や責任、公共の利益などを考慮した答案が求められるため、個人的な偏見や感情を排除し、客観的かつ中立的な視点で問題にアプローチするよう心がけましょう。
2.主な減点要因とその対策
公務員の論作文試験における減点の大部分は、単純に論作文の書き方のルールを守っていないことに起因しています。
内容的には優れた答案であっても、小さな減点が積み重なり不合格となるケースも多いです。
ここでは、主な減点要因とその対策について詳しく解説します。いずれも、少し注意していれば回避できるポイントばかりですので、必ずチェックしておきましょう。
文字数制限を守っていない
文字数制限は、作文・小論文において最も基本的な試験条件です。文字数制限を守らないと、採点対象外となるか、大幅減点の対象となりますので注意しましょう。
以下に、文字数条件ごとの理想的な文字数を例示しますので、参考にしてください。
「〜字以内」または「〜字未満」
指定文字数の9割を目指す。たとえば、指定文字数が「1000字以内」または「1000字未満」であれば、900字は書く。なお、細かい点でいうと、「1000字以内」の場合は1000字まで許容されるが、「1000字未満」の場合は999字までが許容される。「〜字以上、〜字以内」
最高文字数の9割を目指す。たとえば、指定文字数が「600字以上、1000字以内」であれば、900字は書く。「〜字程度」
指定文字数のプラスマイナス2割程度の範囲内で書く。たとえば、指定文字数が「1000字程度」であった場合は、800字〜1200字の範囲で書く。
なお、指定文字数の8割を目指せるのであれば、内容の無い文章で無理やり文字数を水増しするのはやめましょう。文字数が増すことによる加点幅よりも、答案の質が下がることによる減点幅のほうが大きくなってしまいます。
誤字脱字が多い
誤字脱字は、ひとつひとつの減点数は小さいものの、採点者にとっては一番分かりやすい、かつ絶対に見逃されることのない減点項目です。
特に都市部の自治体など、規模の大きい官公庁の公務員試験では、非常に多くの候補者が同時受験するため、わずかな点数差で順位を大きく落とすことになります。合否を左右することもしばしばありますので、見直しを重ね、確実に減点ゼロを目指しましょう。
文末表現が統一されていない
文章の文末表現には、主に「だ・である調(常体)」と「です・ます調(敬体)」があります。このうち、公務員試験の作文・小論文では、必ず「だ・である調」を使用してください。
「です・ます調」で書かれた文章は幼稚な印象を与えるほか、それ自体を減点対象としている試験も多いです。また、「だ・である調」と「です・ます調」が混在する場合も、大幅減点となる可能性が高いため注意しましょう。
字が汚い
文字の美しさは主観的なものであり、基本的に読める文字であれば減点はされません。しかし筆跡が汚いと、同じ内容の文章でも説得力が下がるのは事実です。
雑な筆跡が直接低評価につながるわけではありませんが、その他の評価項目(文章の明瞭さ、説得力など)の部分で厳しめな採点を受ける可能性はあります。
美しい筆跡は短期間で習得することは難しいため、日頃から丁寧に字を書く習慣を身につけましょう。
原稿用紙の使い方を守っていない
原稿用紙の使い方には、特有のルールがあります。代表的なものを以下に挙げますので、必ずチェックしましょう。
題名は、原則不要。出題文の中で題名を付けるよう指示された場合は、前に2~3マスあけて書き始める。
本文の書き始めや、改行して新しい段落にする場合は、1マスあけて書き始める。
句読点(「。」「、」)とカギカッコ(「」『』)は、文字と同様に1マスに1つずつ書く。
句読点は行のはじめに書かない。句読点が行の最後にきてマス目がない場合は、最後のマス目に文字と一緒に書き込む。または、欄外に書く。
小さな「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」は、1マスに1文字書く。
会話文は、カギカッコ(「 」)を用いて表現する。
会話文の終わりの句点(。)とかぎかっこ(」)は1マスに一緒に入れる。
感嘆符(!)、疑問符(?)、三点リーダー(…)の記号は使わない。
横書き原稿用紙の場合、英数字(1、2、3...)を使用する。
英数字が2文字以上続く場合は、1マスに 2文字ずつ書く。
アルファベットは大文字なら1文字1マス、小文字なら2文字を1マスに書く。
なお、カギカッコ(「 」)と二重カギ(『 』)は、以下のような使い分けをします。
かぎかっこ
・会話や語句を引用するとき
・語句を強調するとき二重かぎかっこ
・カギカッコ中で、さらにカギカッコを使う必要があるとき
・図書名などを示すとき
これらのポイントは、一朝一夕の努力で身に付くものではありません。日頃からルールを理解し、演習を繰り返し、意識することなく実践できるように準備しておきましょう。
まとめ:ルールを守って高得点を目指そう
今回は、公務員試験の論作文ルールについて解説しました。
公務員試験では、論作文が面接に次ぐ重要科目となっており、合格を左右する大きなファクターとなっています。本記事のルールを参考に、できるかぎり減点を回避し、良質な答案を仕上げましょう。