「コミュニティ」との出会い
あれは8年前、2014年のことです。
「greenz.jp」というwebマガジンの取材で、神奈川県相模原市旧藤野町を拠点としている「トランジション・タウン藤野」というコミュニティに出会ったのです。
「トランジション・タウン」は、2005年にイギリス南部の小さなまち、トットネスで始まった、持続不可能な社会から持続可能な社会へ移行するための市民運動です。
大切にしていることは、「地球に気を配ること」、「人々に気を配ること」、「余剰を共有すること」。
経済成長神話からの脱依存も目指していて、そのための「レジリエンス」(柔軟に対応できる底力=創造力)を養うために、手帳型の地域通貨も発行しています。
このコミュニティのモットーは「やりたい人が、やりたいことを、やりたい時に、やりたいだけやる」という、とてもおおらかなもの。
ワーキンググループとして、太陽光発電の普及に尽力する「藤野電力」、野菜を栽培する「お百姓クラブ」、最寄りの山林を間伐して薪をつくる「森部」などがあり、なにしろ楽しそうに暮らしています。
一方、ちまたでは、食事にも事欠くシングルマザー、一流企業の社員の過労死や若者の自殺など、殺伐とした風景が広がります。多くの人々が、仕事や生活に追われ、とても楽しいとは言えない暮らしをしています。
この落差はなんだろう。
トランジション・タウン藤野との出会いは、そんな目からうろこのようなカルチャーショックでした。
どうやらこのように「暮らしを楽しむ」コミュニティが、当時、日本各地で広がり始めているようでした。
調べてみると、2007年頃から、経済成長やおカネを物差しにした既存の価値観とは異なる、心の豊かさを優先する価値観を持つ人々が集まるコミュニティが出現しています。
「これこそが次世代のコミュニティだ!」と確信しました。
今の時代、地縁、血縁、社縁(職場の縁)のつながりはどんどん希薄になっていますが、社会を支えるセーフティネットとしてのコミュニティはやはり必要です。
とはいえ、従来のコミュニティは、ともすれば「しがらみ」となりがちでした。だから、敬遠されてしまったともいえます。
しかし、次世代のコミュニティは、価値観を共有することで、助け合いながらも縛りつけない関係性を持っているところが新しい。
また、コロナ禍のおかげで自宅にいる時間が多くなったせいか、ネット上に多様なコミュニティが急増しています。
百花繚乱ともいえる新しく誕生したコミュニティが今後、どのように変容していくのか、ライフワークとして追っています。
(写真:袴田和彦)