正規と非正規と経験した私が思う。

今週、労働を巡る裁判があった。

非正規雇用の社員に対しての、賞与と退職金の支払いの是非を巡る裁判で、最高裁が原告の主張を棄却したという裁判。

中でも、東京メトロの関連会社に勤めてきた元契約社員の女性(70歳くらい?)が起こした訴訟は、非正規雇用を経験した俺としては、イマイチ賛同しかねる感じだった。

俺は、若い頃、所謂「就職氷河期」を経験して、就活に失敗した。

バイトをしながら、本当にやりたい仕事、出来る仕事を探すような生活・・・そんな20代~30代前半を送ってきた。

当然、収入も安定しないし、仲間内が例えば、彼女が出来たりとか結婚したり、クルマを例えばSUVとかミニバンにしたとか、若いのに家を建てたりとか言う話を聴いたりしたときの、ある種の劣等感というか引け目を感じた。まあ、自業自得ではあるけど、一言、しんどかった。

バイト、契約社員を経験するなかで、あるときから社員と同じ仕事をしてきたこともあったが、やはり皆が感じたように、正社員と非正規の「格差」を痛感してきた。それは、待遇とかはもちろんだけども、昇級とか保険関係・・・兎に角色んなシチュエーションで「格差」を感じた。

それこそ、非正規の時代に、雇い止めを経験して、やはり正社員にならないと生活の安定、未来を見据えることはおろか、仕事に於いての「発言権」が得られないと悟った。同時に「出来る仕事」と「やりたい仕事」は違うとも痛感した。

その後、今の会社で、ありがたいことに正社員登用試験を受けて、ようやく正社員となり、まあ、色々大変で苦しいこと、厳しいこともあるけども、忙しいながらも充実した日々を送らせてもらえてる。同時に社員になったことで得られる安心というか、引け目を感じることが無くなったことが一番大きい。

正規と非正規の違い・・・・それはやはり「責任と権限の範囲」の差だろう。

今の時代、非正規でも社員と同等の責任と権限を持たせてもらえる会社もあって、例えば飲食系で言うと、正社員の人が店長、契約社員の人が副店長もしくは主任、バイトやパートの人がバイトチーフもしくはバイトリーダー・・・って言うのが多いけども、非正規でも仕事が出来る人が店長を任せてもらえてるケースもあったりする。

責任と権限の範囲の括りを分けることで、格差を付けていると言うのが一般的だろう。

そうした制度があるのに現実は、社員と同じ仕事してて、売り上げも作ったのに、給与面で社員さんと大きな隔たりがあったり、昇級面でも「正社員登用制度」と謳っても、実はそれが叶わず、止むなく転職をせねばならないってケースがまだまだ多い。俺も「正社員登用」に至るまで、そうした部分でもの凄く苦労した経験をしてるし、そうした意味では、今回の原告の主張はある程度は理解できる。

しかし、どんなに「実力主義」とか「勝ち組負け組」とかが跋扈してる今の日本でも、どんだけ仕事で成果を上げても、所謂「社内政治」というか上の好き嫌いの部分が絡んだり、「派閥」みたいな部分も厳然とあったりする。そこでは「正当な評価」が果たして得られてるかと言う疑問も生じる。

あと、日本の企業の大半が中小企業で、中にはボーナスゼロは言わないまでも、ホンの気持ち程度だったり、退職金すらない会社も少なくない。最近は、コロナ禍の影響で、大企業でも売り上げが激減してて、リストラが始まってたり、基本給5パー削減、ボーナスも20パーカットだったり、中には社員の副業・バイトを解禁した大企業すらある。

そうした部分から「頑張ったから必ずしも報われない」現実が良くも悪くも横たわってて、原告の言うような「私も社員と同等、いや、それ以上の仕事をしてきたから、ボーナスや退職金をくれ。」って主張が通るとは到底思えないし、個人的な理由とかで訴えても厳しいのではとも思う。

それでも、日本がこの20年以上の不況を経験して、労働市場も大きく変わろうとしてる中で、「会社と社員の関係性」を変えないといけないとこまで来てるのは事実だと思うし、少子高齢化による労働人口の減少が進むとされる今後、そうした対策を企業が求められるのではないかとも、イチ労働者としては思うのだ。

そうした意味では、この裁判は、労働のあり方を問う、一つのトピックだと感じた。







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