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控え投手が最後の試合で涙したわけ。中学野球で愛されるチームとは。
次男がお世話になっている中学硬式野球クラブチームのパイセンの話です。
次男のクラブチームは全国大会の常連で、全国制覇の実績もあります。
1学年の部員数は25名(3学年で75名)
しかも、下級生から有能選手を上げる方針で、僕が見ていてもレギュラーになるのはそこそこ大変です。
3年生の中に、控えピッチャーA君がいました。
今回はそのA君の物語を通じ、僕が考える愛されるチームの在り方を書きたいと思います。
A君が背負っていたもの
A君のおじいちゃんは超有名元プロ野球選手。
お父さんも有名なアスリート(野球選手ではありませんが、たぶんご存じのアスリートです)
情報は周りも知ってます。
次男が入部した時まず聞いたのは、他の選手よりもA君の親戚情報でした。
しかも、A君の身体は大きく、がっちり体型、血筋の良さを感じさせました。
(アスリートのフィジカルは、DNA8割と言われるのがよくわかります)
しかし、ピッチングの方は、なかなか結果が出ませんでした。
よってレギュラー投手陣に入ることはできていませんでした。
周りには厳しく見られますし。まだ中学生のA君が感じていたプレッシャーは、とても大きかったと思います。
最初のころは、残念ながら、ネガティブに話す大人もいました。。
A君の心情を察するといたたまれない気持ちになったものです。
毎日の夜間練習場でのA君の姿
A君はどちらかというと温厚なタイプで、人にやさしく、いつもニコニコしている子です。
僕は、アスリート一家の人たちはもっとガツガツ(強制的に?)しているものだと思ってましたが、A君は逆でした。
次男のクラブチームには室内練習場があり、月曜日以外の
夕方~21:00まで自由に使用できます。
平日の夜間練習は強制ではなく、あくまで
「自主性を重んじて練習場は開放しているだけ、練習したい子は好きなだけどうぞ」
というスタンスです。
ただ、選手の出席率は、どうしても意識の高いレギュラー選手が高くなり、それ以外の選手は低くなります。
監督も
「出席率が高い年代は強く、低い年代は弱い」
と言っています。
でもレギュラー投手ではないA君の出席率が非常に高い。
いつもピッチング練習やトレーニングをする姿を目にしました。
しかも、自発的にコーチのアドバイスを聞きに行ったり、学校の定期試験前には、参考書持参で練習していたほどでした。
そんな姿は、いつしかA君の周りの雑音を消し、チームのみんなも人間としてのA君を認めていきました。
A君に寄り添い続けたコーチ
A君を支えたコーチがいました。
コーチは
「A君はA君、親の過去は関係ない。今を楽しみなさい!」
と言って、彼を励ましていたそうです。
練習試合では
「いつもの笑顔のままマウンドに立て!ピンチの時はもっと笑顔で!」
「自分を信じて!毎日成長している!」
コーチは脇隔てなく選手と話しできる方でしたが、A君が腐らずに野球を続けられたのはそのコーチの影響も大きかったのだと思います。
A君のお母さん
A君の野球の送迎は、いつもお母さんでした。
応援も皆勤賞です。
明るく、優しい、素敵なお母さんでした。
自分の子供はほぼ試合に出場できないのに、自分からチームのカメラ担当をされていました。
お母さんから毎回送られてくる写真に、A君の姿はほとんどありません。
それでもいつも素晴らしい写真を撮ってくれていました。
そして、A君最後の大会
A君の最後の全国大会予選が始まりました。
トーナメント表が発表されました。
トーナメントの勝ち上がりを見ると、強豪チームのほとんどが同じ山。
ヤマ場は準々決勝、準決勝。
よってこの2試合はレギュラー投手陣で行くことになりました。
チームは順当に勝ち進み、決勝戦へ。
しかし、レギュラー投手陣の球数がかさみ、決勝戦はスクランブルとなります。
そして、コーチの推薦でA君が決勝の先発ピッチャーに指名されます!
A君が大会で先発登板するのはこれが初めてでした。
A君、決勝のマウンドへ
緊張の初回。
1番、2番と連続四球。。
その後もクリーンナップにタイムリーを打たれ、初回降板。
攻撃陣が奮闘し、サヨナラ勝利寸前まで追い詰めましたが、惜しくも敗戦。チームは準優勝。
3年生の引退が決まりました。
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A君の涙がチームを一つにした
試合後、A君は号泣していました。
大事な決勝戦の先発でチームに迷惑を懸けてしまったと思っていたこと。
A君は他の3年生たちに謝りまくっていました。
でも、迷惑だとはだれも思っておらず、みんなが彼のこれまでの労をねぎらっていました。みーんなわかっていたのです。
キャプテンは
「全国は残念だけど、悔いはない、ありがとう、おかげでチームが一つになったよ!」
と抱擁していました。😢
A君の涙は、彼のこれまでの苦しさ、周りの感謝によるものだったのでしょう。責める人は一人もいませんでした。
お母さんも感極まってました。
最後のコーチの言葉は
「負けたのはコーチの責任。君は精いっぱい頑張った!
悔しさは、高校野球で晴らしなさい!」
A君は県外の高校で寮生活をしながら野球を続けます。
後で聞いたはなし
その後、お母さんから聞いた話です。
A君のおじいちゃんは、A君がこのチームでまだ活躍できるとは思っていなかったみたいで、常にA
「試合に出られなくてもできることがある、君が必死に野球する姿をみんなが見ている。それがチームを一つにするんだよ」
ということを言い続けられたそうです。
本当にそうなりました。さすが、元プロ野球選手。
そして、それを実行し続けたA君、すばらしかった。
寄り添い続けたコーチとA君の信頼関係も美しかったです。
よいチームの条件
僕は。よいチームかどうかは最後の試合にわかるのではないでしょうか。
よいチームとは、
控えの選手も一丸となれるチーム
だと思います。
また、A君は
「指導してくれたコーチに報いることができなくて悔しい」
とも言っていました。
中学生でこの発言はすごいですが、このチームで良かったとの思いも感じられます。
どのチームにも、選手一人一人にドラマがあります。
僕も良いチーム、よい選手たちと巡り会えたことに感謝しきりでした。
ではまた。