歌声ベーコン試作記
「やってみたで」
想良は玲美の前にタッパーを突き出して見せた。
昼休みの中庭。想良はお弁当を開きかけた手を止める。
「あ、こないだのやつ?味つけたの?」
歌による振動で熱を発生させ料理ができないか、そんな話を元に想良が「でけたで」と火の通った豚こまを持ってきたのが三日前。
下味つけたほうがいいんじゃないか、というのがその時の玲美の感想。
「うん、あらかじめ塩胡椒してみた」
「へえ。それじゃ」
添えられたピックで一切れ。もぐもぐ。なるほど味はついた。だが。
「これ……」
「ん?なに?」
「煙臭い?」
「あー、気のせいやないんやな」
想良はため息をついた。
「うまいこと火ぃ通そうとするとな、何でかそうなってしまうんや」
肉自体の変化か、周囲の空気に影響するのか。
「どうやろな、これ、燻製の一種ってことで」
「いやあ、無理っしょ」
「そっかあ。『女子高生の歌声ベーコン』売れへんかあ」
「売る気だったんかい!」
本気だったのかどうか、想良は高らかに笑う。
たらはかにさん主催の上記企画参加作品です。
と同時に、同人誌で発表している「放課後の調律師」シリーズの番外編。
本編の設定知らないとわかりにくいだろうか(汗)
シリーズについては第一話を近くこちらにも転載予定です。
しばしお待ちを。