立方体の思い出
「それ、誰かにもらったの?」
「自分で買ったんだよ。彼氏が買ってくれないからね」
「そんな言い方しなくても」
「冗談冗談」
「でもさ、立方体のネックレスって、見慣れねえけど」
「そ?別に普通だと思うよ」
「そうかあ?なんか意味とかあんの?」
「んー。ある人の思い出っていうか」
「えっ」
「いや、違うよ?そういうんじゃないよ?むしろ、その人のおかげで、今あんたと付き合ってるっていうか」
「俺の知ってる人?」
「ううん。知らないと思うよ。会ったことなくはないけど、気づいてないでしょ」
「何それどう言う意味?」
「なんでもない。で、なんなのよ、いきなりそんな話」
「いや、その……」
「何?」
「ええっと、あのさ、これ、一応渡すけど、つけなくてもいいから」
「これって」
「もうすぐお前、学校戻っちゃうだろ。だから。付き合い始めた記念っつうか」
「開けていい?」
「いいけど。あ、でもそれもネックレスだからさ、つけなくても」
「つけるに決まってんじゃん、ばか!」
たらはかにさんのこちらの企画への参加作品です。今回のお題は「立方体の思い出」。あれこれ考えた結果、どんな「思い出」かは書かずに書くっていうチャレンジをしてみました。な、何も思いつかなかったわけじゃないぞ!ちゃんと考えてあるぞ!
というか同人誌で発表してる「空色の明日」のスピンオフだと言う噂もあったりなかったり。
「空色の明日」は文学フリマ東京35で売ってる「流れ星の行方」で読めるよ!(ステルスしないマーケティング)