そらいろのろけっと
「ねえ、どうしてろけっとってみんなしろいの?」
君に聞かれて、僕は首を傾げる。
「さあ、どうしてだろう?」
「あたしだったら、そらいろがいいな」
「空色? どうして?」
「だってそらいろなら、きっとおそらにとけていくみたいにみえるでしょ? すてきだとおもわない?」
「そうか。そうかもしれないね」
はっきり見えた方が安全なんじゃないか、そう思いついたけど、言わないでおく。だって君の瞳はきらきら輝いて、その奥で空色のロケットが空に溶けていくのを思い描いているのが、僕にもよくわかったから。
「のってみたいな、そらいろのろけっと」
「きっと、乗れるよ」
僕は君の頭を撫でながら言う。
「ほんと!?」
「本当だとも。君はなんにだってなれるし、どこにだって行ける。だから、早く元気にならなきゃね」
「うん!」
君はベッドの上で、嬉しそうにうなずく。
* * *
立ち上る煙の行方を、僕は目で追う。
『ごめんね』
僕は心の中で君に語りかける。
『空色のロケットには乗れなかったね。でもちゃんと、空に溶けていけただろう?』
青空が、にじむ。漏れそうになる声を、僕はこらえる。