THE FIRST TAKE/SixTONES
SixTONESさんのTHE FIRST TAKE「Imitation Rain」
じっくり観察したので感想等々。
※個人的な考えや感覚なので悪しからず
まず公式Twitterの歌唱前ソロスポットを視聴。
メンバーに安心感を与えるような笑顔を向けタイミングを見計らい開始宣言をするジェシーくん。
声帯のチューニングはバッチリと言わんばかりに高揚感すら感じる微笑みで頷く京本大我さん。
短い低音発声の後、ガクッと膝を落として物理的に体の力みを抜く松村北斗さん。
一番緊張が伝わってくるけれどメンバーの顔を見たら優しい眼差しになる髙地優吾さん。
周囲をよく見て場の雰囲気を受け入れるようにニッコリ笑う森本慎太郎くん。
体のバランスを正すかのように静かに肩を回す田中樹さん。
それぞれスタンバイの仕方に性格が表れているようで面白いです。
これらの動画が徐々にアップされ、こちらも妙にドキドキしながら迎えた元日の22時。
まさにサプライズのお年玉でしたね。
さて本編ですが、原曲から極限まで音を抜いたであろうシンプルかつ複雑な演奏のアレンジにまず驚きました。機械的な音が一切ない弦楽器と打楽器の洗練されたメロディーラインの演奏の中、声質の異なる6人の重なりがより一層際立って耳に届いてきます。原曲の特徴を残しつつ大胆なアンプラグドアレンジによってまるで新曲のような仕上がりに。
特徴的なピアノのイントロから始まるImitation RainはYOSHIKIさん提供で話題になっていましたし、彼らのデビュー時期にはそこかしこで流れていたので流行りの音楽に疎い私でも馴染みのある曲です。掴みとしては抜群の選曲なのではないでしょうか。
イントロが短い、もしくはイントロ無しが多い昨今のヒット曲の中でも、耳を捉え、どこか懐かしさのある特異な楽曲という印象です。
ピアノのイントロから始まり、ジェシーくんの発音良い「Imitation Rain…」からの厳かな転調で、一気に雰囲気が変わり世界観に引き込まれる感覚。スイッチが入ったようなメンバーの表情の変化も印象的です。
Aメロのジェシーくんから京本大我さんのソロパート歌い継ぎは、さすがメインボーカルのお二人。しっとりと一音一音丁寧に言葉を発してとても耳心地が良い。語尾が流れないんですよね、単語の最後まで声が聞こえます。「Fake dreams」のスとかですね。
「Ah-」の時に急に流し目でカメラ目線になる大我さん、油断していたら視線に魂奪われそう。何も悪いことしていないのに謝りたくなってしまったし実際あっすみませんって心の中で言っちゃった。なぜだろう。
サビに入った瞬間の声の厚み、これがすごい。緻密なハモリ。音楽番組やライブだと個々の歌声の細部は聞こえにくいと思うので、ここまでしっかりハモリを理解したのは初めてかもしれないです。
北斗さんの低音の土台の上に主旋律があり、それをオーガンジーで包み込むような調和のとれたハモリです。6人でこの厚みにできるのがすごい。混声合唱を聴いているみたい。
ジェシーくん、歌う時は口をよく動かして滑舌が良いので単語がしっかり聞こえます。なめらかさとざらっとした質感両方の歌声を持っていらっしゃるな、という印象。レアチーズケーキとベイクドチーズケーキみたいな。今までは少し特徴(た行破裂音がツァ・ツェ・ツォになったり)のある歌い方だなと思っていたのですが、ファーストテイクでは柔らかくなったと言いますか、つっかかりを感じなかったんですよね。リズムのとり方や音のハメ方が本能的なのは、アメリカの国民性にも親しみがあり、玉置浩二さんお好きだとラジオでお話していたので、洋楽邦楽問わず幅広いジャンルを聴いてきたからなのかなと推測。耳がよくて音楽全般に対する勘が鋭そうです。節回しがどことなく歌謡曲っぽいのも合ってる気がします。
緊張しいでビビリとのことですが(かわいらしい)、緊張感を味方にできる人ですよね。その場を楽しもうとしているのがとても伝わってくるパフォーマンスです。ラスサビで両手を広げて歌うところ、音楽を自由に表現しているような解放感に満ちていて素敵だなと思いました。あと瞳がきれいね…… ピュア…
京本大我さん、特に「戻れない時を振り返る」からが圧巻。女性ボーカルでも難しい音域だと思うのですが、流れるように歌われていて思わず息を吞んでしまうほど。今までの歌唱映像では前傾姿勢をとっていたのが印象に残っているので、直立姿勢でこれだけの声量でスコーンと音をハメて歌える声帯と横隔膜の使い方にただただ脱帽です。余裕さえ感じます。色気と水分を感じる芯の通った歌声に続くビブラートがとても繊細に聞こえる… アップの映像なのでお顔を揺らして響かせているのがよくわかりました。耳心地最高。口を大きく動かして歌うのも彼の特徴でしょうか。ブレスの使い方もうまいなぁ。
それからCD音源と比べると英語の発音の進化が目覚ましい。これはFNS歌謡祭での「Tonight」を見たときも思いましたし先ほども書いたのですが、語尾が流れない。「comes to life」のフがもう色っぽくてね。とても丁寧に言葉を発して、まっすぐ届いてくる。京本大我さんの歌声はまるでストラディバリウス。
そして、全体を通して手の表現がとても美しい。音程をコントロールするために動かすだけではなく、情景や歌詞を表現する仕草としての手の動きがあるんですよね。1サビで言うと「心に」で胸を差し、「降り注ぐ」で手を上からゆっくりおろす仕草。マイクが固定されていて動きに制限がある中、ただ歌い上げるだけじゃなく情景を作り上げる姿に感服いたしました。シングルキャストでハードなミュージカルの座長を全うしただけあるな、と。全身で音楽を取り入れて表現して、たぶん手にも人格を持っていらっしゃる。
目をつむることが多くほとんど身動きをとらない田中樹さん。そんなに動かないでよくリズムとれますねというレベルなのにあの水面に波紋を広げるようなラップ。原曲とビートも違えばエコーもない、イレギュラーなラップがもう素晴らしくて。ずっと口元を見てしまってすみません。でも口腔内の空気の含み方がよく見えたので観察しがいがありましたほんっとすみません。音を持った吐息ってこんなに美しいんですね。
樹さんも音を外さない職人技をお持ちなので歌声もっと聴きたい。私は「Call me」2番が大好きなのですが、ざらつきのある歌声が良いですよね。ラップは低音でも歌声は高音寄りの中低音あたりが相性良さそう。特にバラードでは良いスパイスになっていると思います。
森本慎太郎くんはとにかく見た目から想像していた声とのギャップにキュン。守りたい、キャラメルボイス。甘いけれど少しビターで抑揚のある歌声なのでキャラメルボイスという言葉がしっくりきますね。名付けた方々に拍手を送りたい。程よく気の抜けたゆらぎのある歌い方が特徴的で、声質も一番アイドルっぽいなと思っていたのですが、すごく丁寧に音をハメて周囲と馴染む歌い方をされているので、声に対しての向き合い方が素晴らしいな、と。鼻腔に空気を含んでいて、常にベールを一枚纏っているようで扱いにくそうですが、フレッシュさも色気もあるボーダーレスな声に感じます。そしてすごく素直な歌声。
慎太郎くんも身体の動きは少なめですが、顔と手を動かして声を伸ばしている様子。表情は緊張感あるけれど、わりと目線は真っ直ぐに歌っているのが印象的でした。
髙地優吾さんはサビ以降柔らかい表情になったのが印象的です。ややハスキー寄りの声質が良い塩梅で馴染み、つなぎになっているように感じました。表情が歌声に乗るタイプの人。優しさ・柔らかさが滲み出ているのですが声の温度感が曲によって全然違うんですよね。2番Aメロ慎太郎くんとのハモリなかなか披露されないのもったいないな、すごく良いのに。この言い方良くないかもしれないけれどCD音源より好き。上手く聞こえるような歌い方はいくらでもできるけれど、髙地さんは素材そのものの持ち味を活かして提供される自然体の歌声が魅力的。だからこそ力量が丸見えになってしまうと思うのですが、日々磨かれているんだなというのが一番わかりやすくて聴いていてうれしい気持ちになります。
髙地さんお話しされるときもそうなのですが、開口幅が狭く、上下の歯の位置があまり変わらないのに唇は動くという面白い動きをされるタイプですね。一見すると歌いにくそうな動きなのに、言葉がくぐもったりしないのがすごい。どういうシステム?
松村北斗さん、Imitation Rainは徹底して低音ハモリなのであまり目立たないのですが、この低音が入ることで得られる全体の安定感は特筆すべきところ。ユニゾンでもハモリでもこの声で生まれる厚みの要素は大きいと思います。特にジェシーくん大我さんの下ハモを歌っているときの一体感が好きです。北斗さんは厚みを出す声で髙地さんは奥行きを出す声のイメージ。歌い方は文学的と言いますか、和歌を読み上げるような音の取り方だな、という印象です。抑揚がなめらかで言葉の発音が綺麗で、アレンジや小技を効かせて歌うよりはスッキリと堅実に音をハメる縁の下の力持ち。
北斗さんは声帯の使い方上手いんだろうなと思います。喉仏の大きさから推測できる声帯の長さからは本来出にくいはずの高めのキーでも歌われるので、その過程で低音がさらに安定していったのでしょうか。声帯強そう。ジャニーズじゃなかったら得られなかった歌声かもしれないと思うと感慨深いです。その喉仏でよく高音域を歌えますねオブ・ザ・イヤーを捧げたい。
収録後のインタビューも公開されましたね。
「6人で良かったよね」と京本大我さん。歌唱後に顔を上げてメンバーを見る姿がとても誇らしそうで印象的でしたが、他のメンバーはまだ各々の世界に入り込んでいたという。そりゃ最後まで緊張しますよね。大我さん精神的にめちゃめちゃ強くなっていらっしゃいますね。
画面の前にギュッと集まって笑い合う6人がなんとも微笑ましかったので、彼らには変わらずこのまま平和に音楽を楽しめる世界を生きて欲しい、と切に願ってしまいました。これが箱推しというやつですか……
SixTONESさんを追いかけ始めてからまだ3か月ほどなので手元に音楽番組の映像がほぼ無く、初期のImitation Rainパフォーマンスを知るためデビュー直前のコンサートが収録されているTrackONE-IMPACT-を購入し、デビュー後のツアーon eSTでのパフォーマンスとあわせて見比べてみたりもしました。
結論から言うと三者三様でどれも良いのですが、デビュー前の爆発的な感情を乗せた少し荒っぽいものから、だんだんまばらだった棘が取れて肌に馴染んできているようで。
デビュー前から2年間歌い込んで、育ててきた歌声なのだな、と感じました。これからさらに解釈を深めて熟成されていくと思うと、わくわくしてしまいます。
「我が子のように」
この言葉が全てですよね。
正直、アイドルはそんなに歌が上手くなくてもいいと思っていましたし、踊りに影響がでるなら口パクでもいいし、それこそグループだったらメンバー全員の歌唱力を求めなくてもいいと思っているのですが、SixTONESさんは特に音楽に対しての貪欲さが強いですよね。どの曲もユニゾンではなくハモリが多いのも、アイドルのくくりとしては珍しい。それでいて歌唱力に特化するわけではなく、ダンスやMV等パフォーマンス全体として表現することのこだわりも感じる。
最初はジャニーズっぽくない、アイドルっぽくない楽曲や雰囲気に惹かれるものがありましたが、少しずつ彼らを知っていくうちに、ジャニーズのアイドルという肩書きをうまく纏っている姿も良いなと思うようになりました。というよりも知れば知るほどジャニーズを感じます。ジャニーズってたぶん精神論なのかな。
私はジャニオタやドルオタではないのでそこらへんの理論には明るくありませんが、巨大なパブリックイメージとエンタメ界における枠組みの強さは簡単には揺るがないですし、魅せる力と活動範囲の広さはジャニーズアイドルならではだと思うので。そこは大いに活用していただきたい。彼らは実力で壁を壊して、それぞれの方法で山を登れる人たちの集まりだと思っております。
“ジャニーズ初”がレッテルではなく勲章になる。
そういうパフォーマンスを楽しませていただきました。
SixTONESさんは六畳一間くらいの空間に詰め込んで定点カメラ3台置いて、ご自由にどうぞと言って放置しておくのが面白いと思います。そういう番組待っています。
お付き合い、ありがとうございました。