「いつかあなたをゆるす日(手紙部追記版)」明里好奇
(詳細は上記をご覧くださいませ。この作品は、数年前に書いた作品になります。ご了承くださいませ)
(#手紙部 用に結構追記いたしました)
いつかあなたをゆるす日
私はあなたを、今許すことはできません。
あなたの怒声に今もおびえています。
あなたの手が平穏を壊すから、今もまだあなたがこわいの。
深夜の物音が今もまだ、とてもこわいのです。
あなたがまだ生きていることが、どうしようもなくこわいのです。
あなたが私を見つけることはもうないのだと私はすでに知っているのに。
あなたが私の世界と心を壊すことができないのだと、私はすでに理解しているのに。
あなた譲りの指先も、髪の毛も、シルエットも、煙草を吸う仕草も、
私はまだ許せないでいるのです。
私自身を、ゆるせないままでいるのです。
あたたかく大きな手に触れられると、今も身体と心が離れてしまうのです。この人はあなたではない、そうわかっていても涙があふれるのです。心臓が跳ねるのです。
心がひび割れてしまって、いつまでも治らない傷が涙を流すのです。
それでも、私はそれでも、
大好きだったんだよ、お父さん。
まだ私を覚えていますか?
私の名前を、
私の顔を、
私の面影を、あなたはまだ覚えていますか?
私はすっかり大人になりました。
あなたが知らない間に大きくなりました。
いくつかの感情を知りました。
何人かと出会って、それから別たれました。
触れては離れ、恐くなって逃げてしまうのです。
今、あなたはどこに居るんでしょう。誰と、生きているのでしょう。
私はあなたに似ているけれど、歩く道まで似たくはありません。
私はこの人と、生きていくって決めたの。あなたが大人になった私を知らない間に、あなたが見たこともない人と私は歩いていくつもりです。
どう? ちょっとは寂しく思ってくれてる?
馬鹿にしてた骨格、全部あんたの血筋よ。身長だってあんたの血。私は間違いなくあんたの子ども。
だから、私はあなたを、今も許すことはできません。
大好きだったから、ゆるしてなんてあげません。
それでもいつか、あなたが私を覚えていてくれるのなら。
きっといつか、あなたをゆるせる日が来ると祈っています。
だからどうか、お元気で。