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空の器16/終わらない出血、そのまま第二ラウンド

 一回目の手術から出血は続いていて、私の場合は大体生理三日目くらいの出血が一週間続いていた。生理よりはましだけど、やっぱり体感として血が足りない感はある。
その状態で二回目の手術に挑むことになった。


二回目の手術は「子宮口を開かないでいいから、ちょっと遅くに来てもらって大丈夫」と言われた。それでも一日拘束されることになる。
さて、手術を一回経験しているから、不安は別のところにあった。
仕事だ。


我々看護師はなかなか勤務調整がむずかしい。随所で説明している通り、慢性的な人員不足で日ごろからかつかつのきゅーきゅーで運営していることが多い。幸い術後二日間は日勤だったので、そのあたりの勤務調整をお願いすることになった。
術後一日で出勤してもいいよと言われていたけれど、出勤すれば走ったり立ちっぱなしだったり担いだりするわけで、なかなか「ちょっときついんで休んできていいですか」と言っている余裕もなくなってしまう。それに外から見ても「なんとなくだるそうでやる気がなさそうなスタッフ」程度にしか見えないだろうから、余計である。

ついでに部署の師長と(ちょうどよく会ったから)看護部の部長にも報告しておく。(ついでに、何が気に食わないのか重箱の隅をつつくように個人的攻撃を続けてくれていた主任にも、一応報告だけをしておく。詳しくは話していない。話したくもなかったから)


あと、これは個人の好みがあるからおすすめしませんが「口が軽めで噂好きのスタッフ」数名を部署を跨いだりしながら「妊娠したと思っていたら胞状奇胎っていう病気でね、手術して来るんですよ」なんて軽めに言っておく。「胞状奇胎」を知っていれば事の大きさに吹聴していってくれるだろうし、そうじゃなくても「日帰りでも手術」というワードで、親切に配慮してくれたりするから、伝達してもらう。
(これに関しては結構なリスクを伴うからおすすめはしない。勝手にうわさが流れていって、収拾がつかなくなる可能性があるから。個人的に面白がって話を聴きに来る者もいるだろうし。それもわかったうえで私は伝えておいた)
(あの人仕事さぼって信じられない!! みたいな風に勝手に受け取られるよりも、噂を聞いてくれて勝手に解釈してくれる方が数倍楽だと思った)

二回目の術後、仕事を半日で切り上げてきてくれたパートナーと一緒に主治医から話を聴く。良く言う「病状説明」である。
「家族の人は、来れますか?」みたいなのの、ああいうあれです。

胞状奇胎の説明、今後の予定や経過、リスクの説明なんかを一緒に聞いた。
一回目の手術のあとhCGは90000から6400程度にまで一気に減った。それでもまだ数値は高いから、妊娠初期の症状は残るねっていう説明もあった。


hCGの数値が正常に下がるのかを診つつ、絨毛細胞の増加がないかを見ていく。不自然に増加していた場合は、子宮内に(水疱化した)絨毛細胞が残存していないか、子宮筋層に侵入して「侵入奇胎」になっていないか、多臓器(主に肺や脳)に転移していないか、経過をたどっていく必要がある。
生理は3か月くらいで来るだろうけど、その後も観察は続けていくし妊娠しないように避妊をしていく。
(妊娠するとhCGが上昇して妊娠による上昇か胞状奇胎の上昇かの判断が難しくなってしまうため)
もろもろのリスクを考えたうえで、次の妊娠を考えられるのは一年後だという話をした。
つまり、次にその子が宿ってくれる準備ができるまで、一年間を要するということだ。

 二回目の手術のあとは、出血はかなり落ち着いた。とても楽。痛みも一回目に比べると軽くなった。貧血らしき症状は持続しているが、これも数日で回復してくれるんじゃないかと思う。
お薬は一回目の手術と同じ「胃薬、抗生剤、子宮収縮剤」の3つ。毎食後に処方された。子宮収縮薬は子宮を収縮させるので、生理痛のような鈍痛が起こる。慣れるまではこれも結構苦痛だ。

あと、実は私が医療者だったからだろうが、内緒で「摘出した子宮内容」をこっそり見せてもらった。本当に「水疱化したつぶつぶ」がたくさんあって、その中に血液の塊も含まれていた。ということは、長いこと出血していて子宮内で凝固し始めていたということだと思う。赤ちゃんらしきものは、うつってなかった。
「お前たちが腹の中に入ってたのか」と、平坦に思った。


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明里好奇(アケサトコウキ)
栄養剤をぶっ差してやってくださいませ(´・ω・`) ナニモノにもなれないようなナニモノにかはなれたような、不完全で不器用な人間のはず。良かったら戯れてやってくださいませー!