空の器11/子宮内清掃術
休めない看護師にも等しく病は訪れる。
次はあなたの番ですよ。
医療が進んでくれたおかげで、どうやら日帰り手術できるらしい。
胞状奇胎に対する手術は「子宮内清掃術」子宮の中を綺麗にする手術。だいたい流産や堕胎と同じようなことをすると思ってもらっていいと思う。厳密には違う。
それから手術当日は絶飲食です。結構辛い。
さて、働く女性が多い昨今ですから「急いで手術しましょ!」なんて言われてもなかなか調整はできないと思います。(私も相当無理を言った)
手術を受けるにあたって、私個人の話をしますと。術後最低でも一日は休みました。二回目の時は二日休んでいます。これは一回目の手術後に貧血の症状を抱えながら通常業務をこなす羽目になり、大変しんどかったのでおすすめしません。
なので手術一日+二日くらいあるととても楽です。業種によりますが座っての事務作業がメインであればもしかしたらそこまで調整は必要がないかもしれません。でも立派な病気なので本当は休む権利はあるんですけどね?
病気の時くらい自分を大事にしても罰は当たらないと思うんですけどね? 看護師って変ですよね。
(ちなみに通常業務をするのがしんどい、抜ける理由として診断書を三日ほど書いていただけぬかと先生に行ってみたところ「動いてほしいからだめ。安静にしてても血が溜まってだめだもん」と言われましたので、適度に動くくらいは必要みたいです)
この日帰り手術で入院する病棟は産婦人科病棟。外来受診をするときは産む気で通っていたから不安もそこまで大きくなかった。
それが病名を告げられてから、すぐにどういう病気かわかってしまってから、私にとってあの場所は悲しい場所になってしまった。
病棟はもっとずっと、悲しく感じてしまった。
赤ちゃんを授かったと思った。
確かにあの時に見えた黒い丸は、満ちて満ちすぎてしまって、命になり切れなかった。
私の体が、あの命を消してしまったのかとも思いながら、満月でたくさんの命が生まれた新生児室の、すぐ向かい側の重傷者個室に通された。
多分病棟側の配慮だろうと思う。ありがとう。
生まれたばかりの彼らの声に悔しく思いながら、それでも確かに慰められた。生まれたんだよ愛してという彼らの声は、皮肉にも私の背中も押してくれた。
すごく辛いけど、乗り越えないといけないと思った。一回目の術前のことである。