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空の器03/妊娠検査薬の陽性ラインと胎嚢


 働く女性や妊娠を望む女性(もしくはその逆)は、もしかしたら常備しているかもしれない「妊娠検査薬」

 私は「仕事があるからなかなか休めない、周りに迷惑をかける前に、もしくは迷惑をかけるならなるべく軽微になるように妊娠したら早めに知りたい」と思っていたので検査薬を常備していた。
 たった1週間月経がズレているだけなのか、授かったのかを知るために妊娠検査薬を使用した。


 不器用だから紙コップに採尿して、検査薬を指示通り使う。数秒すると検査用の窓から陽性のラインがはっきりと浮かび上がった。


はじめて見た。こんなにはっきりと線が浮かび上がるのか。


その2日後、夜勤明けで婦人科を受診する。
早く知りたかった。
本当は早く会ってみたかった。
自分のコピーに見えるんじゃないか。憎たらしく思ってしまったら怒鳴って手をあげるかもしれない、愛せなかったら? 私と同じように生きにくく感じていたら? 申し訳が立たない。だったら子どもを授かってはいけない。
そう思って妊娠しないように生活をしていた。

 でも本当は、多分本当は会ってみたかった。私は赤ちゃんに会ってみたかった。

 夜勤明けなのでうとうとしながら待合室で名前を呼ばれるのを待った。初診だから呼ばれるまでに本当に時間がかかった。ようやく名前を呼ばれて、内診室に通された。
下着を脱いで、慣れない内診台に座って。膣の中に入った冷たいエコーが不快で気持ち悪かった。不快感の中で、初めて胎嚢を見た。
モノクロのノイズだらけの画面の中に、黒い丸があった。
「子宮の端っこに、いるかもね。はっきり見えなくてあれだけど。旦那さんは? ひとり? そう・来週もまた来てくれる? 次は心拍が見られると思うから、確認してみよう」
 先生は「これが赤ちゃんの袋」と説明しながらその黒い丸を指した。

エコーで胎嚢が見えたこと、妊娠しているかもしれないこと。夜勤明けのぼんやりとした頭で、先生の話を水の中みたいにぼんやりと聞いていた。

 自分の人生で妊娠することはないと思っていたから、この時は本当にびっくりした。それから、すごく嬉しかった。ここに、居るのかもしれない。腹の中に、自分の腹の中に。
しかし、その次の週も胎児心拍は見られなかった。

栄養剤をぶっ差してやってくださいませ(´・ω・`) ナニモノにもなれないようなナニモノにかはなれたような、不完全で不器用な人間のはず。良かったら戯れてやってくださいませー!