共通テスト第二日程 日本史 大問1・2

2月になり、私立入試も本格的になりました。一日一日を大事に過ごし、最後の仕上げ、本番に向かって頑張ってください。
さて、本日は3回に分けて、共通テスト日本史の解説を行いたいと思います。解答・問題などは下記のサイト(河合塾)を活用ください。なお、難易度については代々木ゼミナールのサイトを参照しています。
もちろん、無料公開で行います。来年受験をされる方は是非参考にしてください。

■大問1 解説

大問1は女性史をテーマとした問題です。そして、史料を活用する問題が中心となります。難易度は以下の通りです。

難易度:A・Bともに標準(代々木ゼミナールより引用)

僕の感じではBがやや難になる、と思っています。特に問5の正誤判定が少し面倒のため、リード文に注目できたかどうかです。問4も史料が何かが分からないと解けない、と思いますが、キーワードを見つけることができたら何ら難しい問題ではなかった、と思います。

それでは、解説に行きましょう。前回同様、解答は公式サイト、大学入試センターより発表されたものを使ってください
問1は空欄補充の組合せ問題です。( ア )の部分が2カ所ありますが、決起した、とあり、米不足や米価の問題解決のために、声を聞いていれば……とあるので、アに入るのが、民衆とわかります。となると、選択肢の中では『女房連』が入ります。もちろん、関連知識で「米騒動のひとつに越中の女一揆がある」ということを知っていれば、絞れます。( イ )は普通選挙についての話ですが、1918年当時のことが入るため、普通選挙は実現していないのです。この時は直接国税を10円以上納めた25歳以上の男子が選挙権を持つ制限選挙です。普通選挙法が成立するのが1925年です。

問2は、年号並び替え問題です。古代史の学習をするときに女性史は単独で出題されることがあります。その際は、天皇名・政策・都・関連人物などを押さえておくといいでしょう。
Ⅰは恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱とわかれば、この時の天皇は称徳天皇と判定できます。Ⅱは隋に国書を出したことから、この時の天皇は推古天皇と判定できます。Ⅲは阿倍比羅夫を東北地方に派遣したことから、この時の天皇は斉明天皇と判定できます。日本史の学習は、政権担当者別で整理しておくと時代の流れも掴みやすくなります。もちろん、その後の教科書学習も忘れないようにしましょう。

問3は単純正誤問題です。今回は誤文を選べばいいので、明らかな誤りがあればその時点で判定しましょう(保留の選択肢があっても、誤文は選べます)。
➀は禁裏御料は天皇の所有する土地のことです。幕府が整理して1万石にしたのです。よって、天皇から幕府に与えるについては明らかな矛盾です。②は江戸時代の女性天皇は明正天皇、後桜町天皇の2名がいます。私立は最後の女性天皇の後桜町天皇は気を付けてください。③は保留にする方が多いと思いますが、正文です。『詳説日本史』や『新日本史』などには大嘗会(大嘗祭)についての記述がされています。綱吉は朝廷儀礼の整備を行ったことも合わせて押さえましょう。④も正文です。これは、別に教科書に無くても、15代将軍徳川慶喜が京都の二条城で大政奉還を行ったことから京都に出向いた将軍がいることは事実です。

問4は単純正誤問題ですが、正誤文が史料になっている私立向けの問題です。ですが、この問題は、「君死に給ふことなかれ」の作品が日露戦争のことを言っていることが分かれば、②が「日露の戦争」とはっきりと書いているので、これが正解とわかります。
➀は軍国主義が駆逐よりポツダム宣言、③は攘夷論、開国貿易より江戸後期の話と分かります(史料はわからなくてもよい)。④は蒙古人襲来、鎮西に下しより元寇のできごとと判定できます。

問5は二文章正誤問題です。判定の材料は基本的には史料の内容、と言いたいのですが、Xの正誤文のみ会話文(リード文)からの判定となります。そこを読むと、明らかに正文とわかります。このタイプは一時期出題された正誤判定タイプとなります。今回の共通テストで出題してきた、となると、今後もリード文や会話文にも気を付けないといけないことが分かります。Yは史料の後半を読むと正文と判定できます。その記述自体ははっきりとは書いていないが、尼御前の経営店に人をやってほしい、とあるので、そこで対応してもらう旨を伝えているとわかります。

問6は組み合わせ正誤問題です。aは私大では頻出していた石棒ですが、これは男性の特徴を示したものと言われています。女性の特徴を表しているなら、土偶です。dは津田梅子が創設した学校は、女子英学塾(現在の津田塾)です。東京専門学校(現在の早稲田)は大隈重信です。
後半の問題で渋沢栄一が出題されていますが、津田梅子と合わせて共通点は、2024年に新紙幣になる人物です。こういうところで時事的要素を取り入れてくるので、気を付けておきましょう。

■大問2 解説

三善清行の『意見封事十二箇条』の史料をもとに政治史・仏教史の問題が出題されています。後半では史料をもとにレポートを作成した内容から問題が出題されています。空欄補充は共通テスト第一日程でも出題された文章挿入問題となっています。今後もこのようなタイプは出てくると想定しておきましょう。

難易度:標準(代々木ゼミナールより引用)

僕の体感では、問3を丁寧に読み取れるかどうかが分かれ目になったと思います。それ以外は基本的な問題なので、十分に高得点が期待できると思います。

問1は単純正誤問題です。史料の内容を丁寧に読み取れば正解に近づけます。➀の仏教伝来は欽明天皇のとき、②の仏教が広まったのは推古天皇のときとすぐに判定できます。問題は③と④の判定です。ですが、④は正文とすぐに判定できます(尽く調・庸の用を賦す、とある)。③は天下の費え、十分にして五、とあり、注を見ると、国家全体の資産の10分の5を失った、とあるので、資産が使いつくされたわけではありません。史料読解は、注にも気を配ってみると判定しやすくなります。

問2は内容組合せ問題ですが、実質は年号並び替えと大差はありません。飛鳥文化・白鳳文化・天平文化それぞれの特徴を理解すれば判定はできます。aは平城京から天平文化とすぐに判定できます。よって、この時点で④か⑥に絞れます。bの遣唐使は白鳳文化のときです。飛鳥文化のときは遣隋使だからです。飛鳥文化は、中国南北朝の文化の影響を受けています。彫刻で北魏様式・南朝様式の2種類があります(具体的なものは図表などで確認ください)ので、そこからも判定はできます。

問3は単純正誤問題としていますが、今回は破線部の正誤判定を行うことになります。ここの判定のキーポイントは時期と内容の整合性、内容と内容の整合性です。
➀は正文ですが、実は前述の問題が分かればすぐに判定ができます。②は正文です。大寺院が薬師寺・大官大寺と判定できればいいです。③は僧侶の活動が厳しく統制された、とありますが、これは僧尼令のことです。しかし、問題は後半部分で、僧侶が政治に介入することはなくなった、という部分が誤文です。政治に介入した代表的人物が行基で、彼は東大寺建立に貢献しました。その後、鎮護国家の世の中になり、道鏡が政治の実権を握るようになったことから、政治介入をするようになりました(都に寺院が増えたことで僧侶の権力が高くなった)。④は正文でこれは鎮護国家の説明そのものです。
ちなみに、この問題は唯一僕が間違えてしまった問題で、②の大寺院を薬師寺・大官大寺と整合しきれなかったのが原因です。このできごとを天平文化の東大寺・国分寺などと勘違いしてしまったのです。

問4(1)は空欄補充問題です。が、第一日程で出た形式と同様に空欄に文が入る形式のものです。攻略のポイントは「延喜・天暦の治」が10世紀前半のできごととわかれば、判定は容易です。
bは9世紀後半のできごとです。また、cも8~9世紀のできごとのため、時期整合ができません。

問4(2)は二文章正誤問題です。これはどちらも正文です。Xの女性の数が多くなった戸籍が横行したのは、税負担が女性が軽いからです。また、Yは延喜の荘園整理令のことで、律令制の立て直しを行うために行ったとされます。

■第一日程との違い

ここまで見た限りで、第一日程と大きく異なったところはあまりなく、実際の配点などは第一日程と第二日程は全く同じでした(4点にする所の基準だけはどうしてもつかみきれない)。前回との大きな違いは図版の読み取りが減った一方で、史料読解が増えたことです。しかし、問題の形式などは以前のセンター試験の形式を踏襲しているため、過去問対策、第一日程の問題解析などをしっかりと行えた人は高得点が期待できるのでは、と思っています。

この第二日程については、センター形式の踏襲が少し色濃く見えてるのかな?と思っています。関連知識で解決できる問題も少なくないので、単純な暗記学習ではなく、内容理解の学習に重きを置いてください。

→次回の記事

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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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