共通テスト追試験解析2 大問3・4

本日もよろしくお願いします。前回の追試験解析の続きを行いたいと思います。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。前回の記事は下記に掲載しています。そちらに問題のDLなどができますので、確認ください。

■大問3 解析

大問3は中世の法制史とみていいでしょう。法制度は以下の3つを知っておくといいでしょう。

【前近代の法制度】(意味は「日本史用語集」を参照にしています)
1 武家法:武士の社会で育ってきた慣習や道徳をもとに成文化した法令、主には御成敗式目、建武式目、分国法、武家諸法度などが該当
2 公家法:平安中期以降、朝廷を中心として行われた法。律令法を引き継ぐ。主には新制が代表的で、荘園整理令が該当
3 本所法:荘園領主の法。国司の支配から独立した荘園が独自に制定した法

これを知っていれば、問1のイは入れることができます。

問1は空欄補充問題です。アは御成敗式目を制定した人物を入れればいいです。イは上記の説明で解決できます。イの前に「荘園領主が自らの組織や荘園で発動した」ところから判定できます。知らなくても、惣掟ではないことは容易に判定できると思います。ここは落としてはいけません。

問2は史料読解正誤組み合わせ問題です。史料1より、人身売買の是非を問う問題となっています。これは「活命の計に充つるの間、禁制せらるれば還って人の愁嘆しゅうたんたるべきにより、この沙汰なし」とあるので、飢饉のときに人身売買を行うことは沙汰なしと読み取ることができるので、容認していたことになります。間違っても、「早くこれを停止せしむべし」でbを正文にしないでください。史料2は飢饉の救済策に関する史料です。これは注釈に着目したうえで読み取れば解答は容易になると思います。「出出挙(利息付きで貸与された米)を施し、その飢えを救うべきの由、倉廩そうりん(米や穀物類を納めておく倉)を有するの輩に仰せ聞かさる」とありますので、米を貸し与えよ、ということが読み取れると思います。つまり倉廩は倉を所有している富裕層と判定できます。

問3は年代並び替え問題です。今回は歴史名辞や内容・人物などにそれぞれ着目しておきましょう。今回は具体的な年代がわからなくても判定はできます
Ⅰは綸旨、混乱や不満が広がった、より建武の新政の時と判定できます。綸旨の乱発に関する話は「二条河原の落書」という史料でも読み取ることはできます。Ⅱは異国警固番役より元寇の時と判定できます。なお、異国警固番役が始まったのは1271年です。間違っても1275年にしないように。これは私立の正誤判定でも狙われます。Ⅲは一条兼良が将軍に与えた書物より室町時代後半と判定できます。「樵談治要しょうだんちよう」は足利義尚に献上したという話が分かれば十分です。

問4も史料読解正誤問題です。今回の問題の着眼点が注釈にあることが分かれば、それだけで解答が判定できます。その注目箇所は、「無人の時分」の意味です。ここに「犯人や関係者がすべて殺害されてしまった今となっては」という意味と書いています。それを踏まえると、②の選択肢は犯人を含む母子の殺害、とあるので、これが有力ではないか、と目星をつけておきます。そうすると、①は地下請の説明としては誤文、③は最後の念仏は自分たちが処刑した、という部分が誤文、④の飢饉が早く収束するような祭礼も読み取れません。よって、②が正文となります。

問5は語句・内容組み合わせ問題です。Xは人の世の無常から方丈記、Yは中世に普及した輸入品種より大唐米がそれぞれ当てはまります。

大問3は2つの史料読解が少し面倒だったかもしれません。最低でも基本的な古文の知識は入れておかないと読めない人が続出したのでは、と思います。「沙汰」や「是非に及ばず」などの基本的な読解知識はつけておいた方がいいかもしれません。難易度は標準からやや難になると思います。

■大問4 解析

大問4は江戸時代の戦乱と災害の歴史です。今回の問題で僕が解いた中では一番面倒だったところでした。

問1ですが、これは文面だけで判断しないように気を付けてください。ここは思い込みが発動すると途端に正答率が下がってしまいます
Xは幕府や藩による軍事動員が行われたことはなかった、が誤文で、石高に応じた軍役は課せられています(加えて普請役も課せられています)。Yは戊辰戦争に至るまで外国から攻撃されることはなかった、とありますが、幕末に薩英戦争、四国連合艦隊下関砲撃事件などから攻撃を受けています。よって誤文です。鎖国の間でもイギリス船が侵入したこと(フェートン号事件など)、文化露寇事件などでも攻撃は受けています。この知識が入っているならそこで誤文と判定できます。

問2は明暦の大火が発生したときの将軍、つまり家綱の時期の正誤判定問題です。このタイプは選択肢の正誤文自体は正文ですが、人物・時期が異なることで判定する必要があります。①は寛政の改革の時、②④はそれぞれ享保の改革の時と判定できればそれぞれ誤文となります。

問3はそれぞれの史料を読み取って正誤判定をする組み合わせ正誤問題です。今回の問題で非常に面倒だった問題です。a・bは史料のそれぞれの読解判定問題ですが、c・dは史料1を読んだうえで史料2の解析を行うという時間がかなりかかりそうな問題です。ここは思い切って史料2だけを見て判定していきます
史料2より、「御蔵にある金がわずか37万両しかなく、このうち24万両は武蔵・相模・駿府三州の地の灰砂を除くべき役を諸国に課して、100石の地から金2両を徴収したところ、約40万両のうち、16万両をその用(灰砂を除くべき)に充てた」とあります。つまり、蔵にあるお金が37万両しかなく、その中の24万両は灰砂を除く予算に充て、諸藩から徴収した40万両のうち、残り16万両を灰砂を除くための費用にした、とあるので、bが誤文であることは明白です。
後半部分の「其余分を江戸城に建設予定の御殿を造る予算に残した」とあるので、残り24万両はその費用になった、とあります。よって、dが正文になります。cの「被災地の救済費用に充てた」とは書いていないので、誤文と判定できます。
つまり、史料1は最悪読まなくてもできる問題だったのです。実際には最後の2行でaが正文と判定はできます。

問4は江戸時代の日本人と外国人との関係を答える正誤問題です。今回の注意点は時期の特定が江戸時代全般のため、時期正誤の時は明らかに江戸時代ではないものを選ばないといけません。大抵このタイプだと内容のどこかに誤文があることが多いです
そこで②をみると、薩摩藩の浪士がイギリス公使を殺害する事件、とあるので、生麦事件ではないのか、と判定できます。注意点は、生麦事件は薩摩藩主島津久光が薩摩に帰る途中で起こった事件のため、殺害したのが浪士であるわけがありません。よって、これが誤文となります。なお、残りの選択肢は全て正文です。私立では④のシーボルトの出身国で正誤判定してくることもあります。しっかりと注意しておきましょう。

問5は年代並び替え問題ですが、今回は時期の大きなずれがあるので、判定はしやすいと思います。Ⅰの二宮尊徳の活躍時期は19世紀前半です。Ⅱの青木昆陽は享保の改革の人物です。Ⅲの宮崎安貞は元禄期の人物と判定できます。このように、人物の活躍時期は並び替え問題の判定材料となりますので、「年代サーキットトレーニング」(かんき出版)などで見ておくといいでしょう。

今回の問題は問3が非常に大変な問題だったと思います。そして、問4は注意深く読まないと引っ掛かりやすいです。そういった判定から、難易度はやや難と判定しています。

では、次の問題にいきましょう。

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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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