公立高校入試解析 2024年和歌山県

本日もよろしくお願いいたします。
さて、今回も公立高校入試解析を行います。ここ最近は高校入試ネタが多いですが、それだけ今回の記事は「今までの学習だけでは対応できない」入試になっていることを知っていただきたく思い、記事にしています。
なお、使用については、都道府県教育委員会様より使用の許諾をいただいています。その関係で原則メンバーシップ限定公開です。ただし、今回は一般で公開しても大丈夫という許諾もいただけましたので、無料公開といたします。
記事を閲覧して、メンバーシップに参加いただけると幸いです。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。


■和歌山県公立高校入試概要

和歌山県の公立高校入試は大問6問です。昨年も解析しましたが、今年も変わりませんでした。
平均点は41.8点と予想以上に低かったです。もともと和歌山県は社会の平均点が低かったのですが、今年は過去8年で一番平均点が低かったのです(僕が調べた中では2024年入試で3番目のワーストの平均点でした)。つまり、何がどう難しかったのか、ということをしっかりと解析しないと次年度以降の学習をするのに支障がでます。
この解析記事を参照して、新語・新傾向入試の対応をしておきましょう。このマガジンはメンバーシップ限定公開(単品購読も可能)なので、このような記事を定期的に出していけたら、と思っています。
なお、今回より、和歌山県教育委員会様の素晴らしい英断により、入試問題の結果などをWeb公開していただけることになりました。そのため、正答率なども使って解析をしたいと思います。

解析記事を出すときには、①入試の難度が高く正答率が低い問題、②新語など新傾向に対応する必要がある問題、③入試問題の使用許諾を取った問題、を中心に記事にしています。特に③についてはこの許諾がとれなければ記事にすることはできませんし、教育委員会さまの指導が入れば一般公開はできなくなります。
よって、この記事を無料公開にしろ、という要求には上記の理由から応えることができないのです。もし、そのルールを破ってしまうと、次年度以降問題の使用許諾を取りにくくなるのです。そのあたりの事情はご容赦ください。

■大問1 解析

それでは、さっそく大問1から解析していきます。大問1は世界地理の問題です。

問1 略地図中の3つの緯線のうち、一番長いものを選ぶ問題です。これは赤道に近い緯線ほど地球上の距離は長くなります。緯度が高くなるほど地球上の距離は短くなります。これは地球儀やモルワイデ図法をイメージ出来たらそこまで難しくありません。よって、赤道に近い③が近いことがわかるので、正解はエとなります。
正答率は37.0%と点差がかなりつく結果となりました。こちらの解説については、今後、改訂版が出たときに紙面が許せばまとめたいと思います。

問2 ヨーロッパ州とアジア州にまたがるロシアにある山脈を答える問題ですが、これはウラル山脈です。
正答率は12.8%と予想以上に難問でした。原因としては、ロシア地方の学習が十分でないことが原因と思います。しかし、拙著ではカバーしています。ただし、今回の正答率を受けて、入試ランクがCに変わる可能性が高いです

入試ランク(ウラル山脈):(一問一答)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問3 アメリカのサンフランシスコ南部に位置する、情報通信技術関連の企業が集中する地域はシリコンバレーです。
正答率は53.4%と期待よりは高くありません。と言いたいのですが、実はシリコンバレーの入試ランクはBなので、これは妥当な数値かもしれません。

入試ランク(シリコンバレー):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問4 グラフを見て、中国で一人っ子政策が見直された理由を短文記述問題で出題しています。一人っ子政策が行われたことにより、年少人口がだんだん減少しています。その一方で、老年人口が増えていることを表から読み取ることができれば、少子高齢化が進んでいることにつなげれば問題ありません。採点基準としては、グラフの読み取り、少子高齢化の記述、この2点が書けているか、がポイントです。
正答率ですが、満点正答率が28.8%、部分正答率の合計で82.3%ありました。これはそれなりに記述できていたのでは、と思います。このように、資料読解と関連知識の活用は正答率を下げやすい傾向になりますが、今回はそこまでの難度ではなかったと思います。

入試ランク(一人っ子政策):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問5 さとうきび・とうもろこしなどの食物を原料とした燃料でバイオ燃料(バイオマスエネルギー)を答えましょう。
正答率は72.9%とできていました。この問題で点差がつく場合は短文記述問題で出題された時です。環境保全との関連知識を意識しておきましょう。

入試ランク(バイオ燃料):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問6 ロシア・アメリカ・ブラジル・オーストラリアの4か国の品目を見て、オーストラリアを選ぶ問題です。すでに中国とカナダは判明しています。今回は人口と人口密度、国内総生産で判定ができます。
アは国内総生産がダントツに多いことからアメリカと判定できます。イは鉄鉱石などの輸出品目よりブラジルと判定します。ウは原油、人口密度の低さからロシアと判定します。エは人口、人口密度、輸出品目などからオーストラリアとなるので、正解はエとなります。
正答率は62.6%とまずまずの出来でした。この形式の問題は、重要品目で判定できるものから消していく方法で選択肢を絞っていくのが近いと思います。このやり方は東京は北海道のようにすべての品目を判定しないといけないときにも活用できます。

一問一答形式の問題も多いのですが、思ったよりも正答率が低い問題もあり、従来の一問一答形式の学習だけでは対応しにくくなっているのでは、と思います。

■大問2 解析

大問2は日本地理の問題です。テーマは日本の空港の愛称に関するテーマです。

問1 富山県に隣接している県のうち、県名と県庁所在地が異なる県を選び、その県庁所在地名を答える2段階問題です。
まず、隣接しているのがアが石川県、イが岐阜県、ウが長野県、エが新潟県となります。この中で県庁所在地名が県名と異なるのは石川県です。県庁所在地は金沢です。
正答率は43.7%と予想よりも低いです。原因としては、日本地図の知識が乏しいこと、県名と県庁所在地名が一致していないなどの原因が想定されます。時折県名と県庁所在地名は出題されますので、位置関係と合わせて整理しておきましょう。

問2
(1) 本州四国連絡橋のそれぞれの名称をすべて答える問題です。
尾道・今治間がしまなみ海道、児島・坂出ルートが瀬戸大橋、神戸・鳴門ルートが明石海峡大橋となります。これらはそれぞれ地図の左からだとわかれば容易に判定できます。
正答率は42.4%とやや差がついています。拙著では瀬戸大橋を出していますが、主に出題されやすいのは、人の輸送面の話です。あとは明石海峡大橋を使って野菜などを輸送していることも近年では出題されています。合わせて押さえておきましょう。

入試ランク(瀬戸大橋):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

(2) 岡山県、富山県、沖縄県、高知県の県庁所在地の雨温図のうち、岡山県のものを選ぶ問題です。つまり、瀬戸内の気候を選びましょう。瀬戸内の気候は冬の気温が高いが、年降水量が少ないことがわかります。
今回の問題は年降水量が少ないのはアしかありません。よって、正解はアとなります。富山県は日本海側の気候なので、冬の降水量が高いイ、沖縄県は南西諸島の気候なので、冬の気温が10度を上回ることからエ、高知県は太平洋側の気候なので、夏の降水量が多いウをそれぞれ選びましょう。
正答率は53.5%と2人に1人の正答率でした。しかし、問題はこのような雨温図問題は頻度が高いので、正しく確認してください。瀬戸内の気候については、瀬戸内海で降水量が少ない理由を短文記述問題で出題してくるものもあります。

入試ランク(瀬戸内の気候):(記述問題など、頻出)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問3
(1) 土佐湾に深さがおよそ200mまでの傾斜が緩やかな地形が広がっていますが、これは大陸棚です。
正答率は37.0%と予想以上に低いです。拙著では記載はしていませんでしたが、それはここ7年で出題があまりなかったこと、正答率データがなかったことから、掲載の優先度が低かっただけです。

入試ランク(大陸棚):(一問一答)

吉野自作の中学社会用語集より

(2) 地形図の読み取りとして正しいものを選ぶ問題です。ア:傾斜が急なのは等高線が狭いところです。よって、傾斜が急なのはC・D間なので誤文と分かります。イ:標高が高いのはEです。よって正文です。ウ:博物館は佐川駅から南東ではなく南西にあります。エ:紫園周辺にみられるのは茶畑ではなく水田です。
正答率は60.8%とまずまずでした。この問題は知識問題よりは資料読解問題です。知識として必要なのは、地図記号と等高線の関係、縮尺問題が中心です。

問4 航空貨物が海上貨物に比べての特徴を短文記述問題で出題しています。航空貨物の輸出品目に着目すれば解答が見えると思います。
日本の主な航空貨物は半導体等電子部品、科学光学機器(カメラ・レンズなど)とわかります。主な海上貨物は機械類、乗用自動車などです。よって、航空貨物は高価だが軽量であることがわかります
正答率は完全正答率が19.5%、部分正答率を含めると66.1%でした。成田国際空港の輸出品目もほぼ同じなので、それを応用できれば、最低でも部分点は取れたと思います。

ここから見ても正答率が60%を超えている問題が1題しかありませんでした。ほとんどの問題は正答率が40%台以下で推移していました。つまり、単純一問一答形式の学習では限界が来ていることを知ってほしいです

■大問3 解析

大問3は前近代の歴史です。テーマは歴史の転換期です。

問1 古代中国で起こった出来事を古い順番に並び替える問題です。ア:甲骨文字は殷の時代です。イ:シルクロードが開かれたのは漢の時代です。ウ:万里の長城が築かれたのは秦の時代です。中国王朝は順番通りに抑えておきましょう。よってア→ウ→イの順番です。
正答率は63.0%とまずまずの出来です。注意点としては、中国の王朝の判定を内容で行わないといけないため、王朝だけを押さえていた人、内容が整理できなかった人は少し苦戦したと思います。
なお、旺文社の電話帳では「やや難」指定でしたが、正答率と比べると乖離していると判断できます。

問2 アテネ・スパルタのような都市国家はポリスです。
正答率は42.0%とやや差がつきます。古代世界史の内容を定着できていなかった生徒には苦労した問題だったと思います。

入試ランク(ポリス):(一問一答)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問3 飛鳥文化の特徴を選択させる問題です。ア:遣唐使、国際色豊かな文化から天平文化(奈良時代)の説明なので誤文。イ:上方を中心とする文化は元禄文化(江戸時代)なので誤文。ウ:南北朝時代、西アジア・インドの影響を受けた文化なので飛鳥文化なので正文。エ:貴族の文化と武士の文化なので鎌倉文化(鎌倉時代)なので誤文。よって、正解はウとなります。
正答率は30.7%と苦戦していました。おそらく誤答の大半としてはアを選んだのでは、と思います。

問4 律令国家について述べているものを選ぶ問題です。ア:正文。イ:地頭から鎌倉時代の説明なので誤文。ウ:楽市令から安土桃山時代の説明なので誤文。エ:冠位十二階から飛鳥時代の説明なので誤文。よって、正解はアです。
正答率は34.6%と差がつく問題となりました。歴史名辞(1つの語句で1つの時代を特定できる語)を意識できていれば正答に近づけたと思いますが、それが意識できていなかった受験生は苦戦したと思います。つまり、単純知識の定着を中心に行った生徒は苦戦したのでは、と思います。

問5 元寇の際に幕府軍が苦戦した理由を短文記述問題で出題しています。
元軍が用いた戦術が集団戦法と火薬兵器(てつはう)です。これらを使ったことで、幕府軍の戦い方と異なるために苦戦したといわれています。元寇の後に起こった御家人の不満についても記述問題で出題されます。
正答率は完全正答率が27.3%、部分正答率を合わせると65.8%です。この記述は定番問題なので、確実に解答しておきたいところです。拙著でもこちらは解説をしっかりしています。

入試ランク(元寇):(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問6 足利義政のあとつぎ問題がきっかけとなった戦乱は応仁の乱です。
正答率は50.3%と思ったよりも低いですが、入試ランクから見ると実は妥当な正答率です。戦乱と時期、関連人物の意識づけができているかどうかが点差を分けます。

入試ランク(応仁の乱):(一問一答、頻出)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問7 江戸幕府が大名を統制するために出した法令は武家諸法度です。
正答率は54.7%とこれも点差がついていますが入試ランクから見ると妥当な正答率です。間違えた生徒は参勤交代や御成敗式目などと混同したのでは、と思います。

入試ランク(武家諸法度):(一問一答、頻出)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問8 三都をそれぞれ答える問題です。➀:朝廷や寺社、西陣織から京都と判定できます。②:「天下の台所」から大阪と判定できます。③:「将軍のおひざもと」から江戸と判定できます。
正答率は37.7%と思ったよりも正答率は低いです。すべての組み合わせができていないと得点にならなかったことが原因だと思います。

問9 幕府が権威を取り戻すために行った公武合体の政策の内容を短文記述問題で出題しています。公武合体の「公」は朝廷・政府のことで、「武」は幕府のことです。つまり、朝廷と幕府が協力して政治を行うのですが、そのために天皇の妹(和宮)を将軍に嫁がせたことを記述できればいいでしょう。
正答率ですが、完全正答率が0.9%、部分正答率を合わせると2.2%しかありませんでした。こちらについては、内容については記述があったものの、ほとんどの受験生はここまで手が回らなかったのでは、と思います。あとは公武合体が教科書に記載がなかったのも困惑した要因になったのでは、と思います。
こちらについては、2025年最新問題を作成したときにまとめたいと思います。

入試ランク(公武合体):(記述問題など)

吉野自作の中学社会用語集より

歴史の正答率が全体的に低いため、難問と言われているのでは、と思いますが、短期間の学習だけで社会が仕上がるほど甘くありません

■大問4 解析

大問4は近現代の歴史です。テーマは国民の生活です。

問1 土地の所有者に発行された権利証は地券です。
しかし、正答率は40.3%と思ったよりも低いです。原因としては、地租改正は知っているものの、その内容が十分でないことが原因とされています。写真でも出題されますので、しっかりと確認してください。

入試ランク(地券):(一問一答)

吉野自作の中学社会用語集より

問2 ロシア・ドイツ・フランスが三国干渉で日本に求めたことを短文記述問題で出題しています。これは遼東半島を清に返還すること、と記述できれば問題ありません。用語説明型の記述問題なので、そこまでの難度ではないと思います。
正答率は完全正答率で20.8%、部分正答率を合わせると39.8%と予想外の結果となりました。実は、三国干渉の一問一答も短文記述も平均正答率は55%前後と思ったほど高くありません(一問一答は2021年福岡県の89.1%、記述問題などは2019年の岐阜県の83%は例外ですが……)。いえることは、単純な一問一答形式の問題でも記述問題でも楽して理解しようとした結果、思ったほど定着できていなかったのでは、と思います。また、記述の練習の際にも自分で記述しないことも正答率低下の原因を作っているのでは、と思います。単純に演習量不足であることもあり得そうです。
定期テストで必出の問題でも入試ランクになるとこのように変わります。教科書などで太字になっているから、といって過信しすぎないようにしましょう

入試ランク(三国干渉):(一問一答)、(記述問題など)
※記述問題などの入試ランクは2024年度はBランクに下がります。原因としては、山形県と和歌山県の正答率がどちらも50%未満だったこともあり、平均値にするとAランクの基準から落ちました

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問3
(1) 大正デモクラシーの時期に起こった出来事を選ぶ問題です。ア:明治文明開化期の人物、イ:明治後期の政治家、ウ:明治後期の社会主義者、エ:大正デモクラシーの人物、と考えれば正解はエとなります。
正答率は44.6%でした。これは人物と政策・活躍時期が整合できなかったことが原因では、と思います。語句を覚えるとき、人物を覚えるときも時期判断ができていなければ正答率は上がりません。

(2) 西光万吉らを中心とした被差別部落の人々が1922年に結成した団体は全国水平社です。
正答率は46.1%と思った以上に低いです。これについてですが、おそらく西光万吉に引っ張られすぎたのでは、と思います。

入試ランク(全国水平社):(一問一答)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問4 1960年から1980年までに起きた出来事を選択する問題です。この時期は高度経済成長が起こり、その後石油危機を経て安定成長期に移ります。
ア:闇市は戦後すぐなので1946年ごろ、イ:マスクをしている四日市の子どもより四日市ぜんそく(公害病)なので1965年ごろ、ウ:ラジオ放送の開始は1925年の大正末期、エ:日本国憲法の公布は1946年11月。よって正解はイとなります。
正答率は48.9%とやや差がついたと思います。高度経済成長期の内容をしっかりと整理して、関連事項などと合わせてまとめておきましょう。

近現代の歴史はどの問題も正答率が50%を超えた問題はありませんでした。つまり、この時期の学習ができていない生徒は点差がついてしまった可能性があります。

■大問5 解析

大問5はサミットにかかわる公民分野の問題です。

問1 首長の権限として正しいものを選択させる問題です。一つは議会を解散することです。よって、正解はイの議決を拒否する・再議するです。ア:教書の送付は保留でいいです。説明するとアメリカ合衆国の大統領が持つ権限です。ウ:開示請求を行うのは住民が行う直接請求権のことです。エ:弾劾裁判所の設置は国会が持つ権限です。
正答率は64.5%とまずまずでした。知らない語句が出ても保留を使って解答を出すこともできますので、慌てないようにしましょう。

問2 円安が経済に日本経済に与える影響についての空欄補充問題組み合わせ問題です。円安になると主に輸出産業が有利になります。海外旅行については外国人が日本に来ることが多いです(現在のインバウンド需要がわかれば行けると思います)。よって、正しい組み合わせはアになります。
正答率は47.6%と思ったよりも高くありません。円安や円高の外国為替相場に関する問題は全体的に点差がつきやすいです。しっかりと仕組みを押さえておきましょう。

入試ランク(円安):(一問一答)、(記述問題など、頻出)

吉野自作の中学社会用語集より

問3 パリ協定の内容をまとめたことを短文記述問題で出題しています。➀で世界の気温上昇を抑える努力についてまとめています。それを受けて②をまとめるといいでしょう。つまり、温暖化の原因は温室効果ガスの排出量が増えていることです。パリ協定では温室効果ガス排出量の削減を先進国だけでなく発展途上国にも義務付けられました。つまり、批准国すべてに温室効果ガスの削減義務を課したのです
指定語句にも「削減」とあるので、すべての国が温室効果ガスを削減すること、と記述できれば問題ないでしょう。
正答率ですが、完全正答率が15.1%ですが、部分正答率を合わせると65.1%と最低限のことは記述できたのでは、と思います。といっても、今回はパリ協定の内容を理解できていれば解答にたどり着けたと思います。
近年では、出題頻度が高まったこともあり、やや正答率に関しては改善傾向がみられます。京都議定書と混同しないようにしましょう。

入試ランク(パリ協定):(一問一答、頻出)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問4 2022年の国連予算の分担率をアメリカ・中国・日本の正しい組み合わせをすべて答える問題です。ポイントは加盟国の支払い能力がカギとなるので、GDPともやや関係性があると思います。
まず、約2割弱を占めるのがアメリカになります。よって、X=アとなります。続いて、約15%を占めるのが中国になります。あくまでも国連予算の分担率なので、ここでは中国になります。よって、Y=イとなります。残った日本は約8%を占めることになります。よって、Z=ウとなります。
正答率は31.4%となっています。これはY=ウ(日本)と思った人が多いと思います。それは無理もない話で、確かに以前までは日本はアメリカに次いで2番目の予算分担率になりましたが、2018年には中国の経済成長の影響で中国が2位になりました。なお、日本のGDPはドイツにも抜かれて4位になったそうです。先入観で解いた人は大きな影響を受けたと思います。
つまり、先入観で問題を解いてはいけないのです

問5 人権を保障するため、憲法によって国家権力の濫用を防ぐ考え方は立憲主義です。
正答率は14.3%とかなり低いです。今年の沖縄県ではAランクの正答率(数値は持っているものの、Web上で非公開のため数値の掲載はできません)でしたが、全体的にいうと20~30%台の正答率がほとんどでした。よって、この語句は点差が非常につきやすい語句となります。

入試ランク(立憲主義):(一問一答、頻出)、(記述問題など)
※今年の入試出題数の基準により、拙著では頻出マークはついていませんでしたが、2024年は頻出マークがつきます

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問6 国際社会や国際協調の仕組みの中で世界的に広がった新たな概念は人間の安全保障です。その内容はⅣです。よって、正しい組み合わせはイとなります。
正答率は44.8%と点差はつきました。これは消去法で平和主義を削ることができるので、そこまで難しくはないのですが、もともとのランクから考えると実は妥当な正答率になります。

入試ランク(人間の安全保障):(一問一答、頻出)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

首長の権限問題は60%をいっています(パリ協定は部分正答率を合わせると60%をこえます)が、全体的に正答率が低いため、難度は高いと思います。単純な一問一答の練習をしても正しいやり方でできなければ効果はイマイチです。

■大問6 解析

大問6は平成史を公民分野を中心とした問題で出しています。

問1 消費税の逆進性について用語説明問題です。消費税の逆進性とは、所得の少ない人も同じ税率を負担するため、所得に占める負担率が高くなることです。解答例としてはこんなところが書ければいいでしょう。
正答率は完全正答率で15.4%、部分正答率を含めても23.8%しかありません。逆進性の意味は教科書では記載が教出と日文しかないため、意味が分からなかった受験生も多かったと思います。

入試ランク(逆進性):(一問一答)、(記述問題など)
※拙著では記述問題などのランクはDでしたが、2024年入試の結果を受けて、2県で一問一答形式の出題があり、4府県で短文記述問題で出題されていたため、平均正答率が変更となり、上記の新ランクを採用しています

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問2 2019年に制定されたアイヌ民族に関する法律はアイヌ民族支援法です。アイヌ施策支援法でも正解となります。
正答率は11.2%と定着ができていなかったと思います。アイヌ文化振興法は知っていたものの、アイヌ施策支援法(アイヌ民族支援法)まではわからなかった受験生も多かったと思います。なお、拙著では購入特典で入れていますので、確認を忘れないようにしましょう。

入試ランク(アイヌ民族支援法):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問3 デフレーションの仕組みを空欄補充問題で出題しています。物価が下がれば、企業の利益が下がり、家計の所得が減ります。また、家計の消費が減ることでさらに物価が下がります。よってXからウ→イ→アとなります。
正答率は50.2%ですが、すべての空欄が正しく埋められなければ点数になりません。それが遠因で正答率が少し低かったのでは、と思います。

入試ランク(デフレーション):(一問一答)、(記述問題など)
※拙著では記述問題などのランクはありませんでしたが、2024年入試の結果を受けてランクをつけることになりました

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問4 平均構成人員と核家族世帯の割合が減少している理由を選択肢から選ぶ問題です。理由としては、単独世帯の割合が増えたからと分かります。よって正解はウです。ア:夫婦と子供のみの世帯は核家族です。イ:祖父母と夫婦と子供で構成される世帯とは構成人員のことです。エ:老年人口の割合が減少は現在の状況からはあり得ないです。老年人口の割合は現在25%を超えています。
正答率は69.3%とまずまずの正答率でした。世帯構成を考えることができればそこまでの難度ではなかったと思います。

問5 検察官が事件を起訴しなかったことを適切かどうか判断する組織は検察審査会です。
正答率は1.5%とほぼ壊滅的な正答率です。教科書では6教科書中4教科書で記載がありました。また、これについてはニュースでも近年聞かれるようになっています。どういうときに検察審査会が動くかを意識して整理しておきましょう。
なお、検察審査会をカバーしている一問一答集は拙著だけです

入試ランク(検察審査会):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問6 農林水産省が担当している取り組みと関係のあるSDGs目標と関係のあるものをすべて選ぶ問題です。内容としては、国産食品の安全性向上があるので、食品の生産が関係あるとわかります。よって、ウは入ります。次の消費者の健康への悪影響を未然に防止することから、健康に関することだとわかります。よって、アは入ります。微生物の汚染実態調査からエネルギー関係と思いがちですが、発電関係の話がないため、イを含めるのは少し無理があると思います。エについても含めるための要件は十分ではないと思います。よって、正解はア・ウとなります。
正答率は23.2%とかなり差がついた問題です。事例とSDGs目標との整合性ができないといけないので、語句を知っているだけでは太刀打ちできない問題だったと思います。

全体的に正答率が低かったですが、部分正答率を含めても正答率が60%を超える問題が少なかったこともあり、かなり難度が高かったと思います。

■ここからもわかるように

北海道での解析でも言いましたが、単純な一問一答知識程度で学習が定着できるとは思わないほうがいいです。2010年代前半までならそれでも対応できましたが、2020年になってからは思考力・判断力を意識する問題が増えたことで、従来の学習法だけでは高得点がとりにくくなっています。
過去問演習も大事ですが、類題演習もしっかりと行わないといけません。
そして、単純な一問一答学習からいち早く脱却し、語句と内容の関連性、資料などの活用を意識した学習を進めてください。ただし、前提となる知識を覚えるのは言うまでもないですが、語句だけ暗記しても高得点は期待できません

今年の社会は全体的に難化しています。全国平均点で56点くらいあったのが、7/24現在で54点といつもよりも低いので、正しい対策ができなければ今後も同じような結果が出るのでは、と思います。
言い方を変えると、単純な一問一答集での学習では対応しにくくなっているため、記述式にも対応できる一問一答集を使ってほしいのです。
その問題点を唯一解決できるのが、拙著の『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)です。一問一答集でありながら用語集の役割も果たしています。解説と用語説明なども入試によく出るものを中心に編纂しています。また、新規の用語などが出た場合は随時追加していきたいと思っています。そのため、新語などにも十分対応できる唯一無二の一問一答集として日々進化しています。
一部紹介しましたが、今年の入試に受けた平均正答率の変化によって一部語句の変化が起こるものもありますが、こちらについては追って公式noteで記事にしてまとめたいと思います。

この記事が出ているときは夏休みになりますので、今のうちに地理と歴史の学習、公民の経済分野を早めに仕上げておくといいでしょう(政治分野は学校でも少し時間かけて行うが経済は十分な時間が取れない可能性がある)。

ここから先は

0字

入試解析の記事特別公開

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

皆様のサポート、よろしくお願いいたします。