【大学入試紙面講義】2019年龍谷大学(1/30実施)大問1 問3~7
今日から共通テスト対策と同時に私立入試のマーク形式の問題を行いたいと思います。今回はその中でも偏差値の割に難しいといわれている龍谷大学を扱います。日本史において関西のマーク式の問題で難しいのは関西学院大学と龍谷大学辺りです。そういう問題に対してどう攻略していけばいいかを話したいと思います。
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■問題の概観
この問題は中世の史料をもとに問題がつくられています。しかし、所々で古代の問題も混じっているため、関連知識が必要な問題もあります。正誤問題は細かい知識が必要で、年号並び替えは流れが掴められたらそこまで難しくはないです。史料については内容が必要、というわけではないので、関連知識が分かればいいでしょう。
■解説
それでは、解説に行きましょう。
問3 下線部③(平治)の乱に関する記述として、不適切なものを次の中から1つ選びなさい。
➀ 皇位継承をめぐる争いである。
② 藤原信頼が、源義朝と結んで兵をあげた。
③ 藤原通憲(信西)が、自殺に追い込まれた。
④ 源頼朝が、伊豆に流された。
平治の乱の内容が分かっているか、の問題です。これはそこまで難しくないと思いますが、対立した人物の関係が分かれば簡単です。
➀は誤りです。②との関係がわかれば➀は保元の乱の原因とわかります。③は平治の乱が起こった過程です。④は平治の乱の結果です。その後、頼朝は伊豆で平氏打倒の挙兵を行ったことが分かれば正文となります。
よって、正解は➀です。
問4 下線部④(武家の沙汰として政務を恣にせしかども)に関連して、鎌倉幕府の「政務」についての記述として、不適切なものを次の中から1つ選びなさい。
➀ 幕府支配の根本には、御恩と奉公という将軍と御家人の主従関係があった。
② 北条政子の父時政が、初代執権として幕府の実権を握った。
③ 頼朝以来の先例や武士社会の慣例・道徳が尊重された。
④ 幕府は、皇位継承に関する両統迭立の方式に反対した。
幕府の政務についての正誤問題です。丁寧に吟味すればそこまで難しくないと思います。
➀は正文です。鎌倉幕府の基本的な仕組みです。②は親子関係の正誤と、役職に関わる正誤が合わさっていますが、どちらも正文です。古代・中世は人物の親子関係で正誤問題を作ってきます。今回は正文ですが、特に古代の天皇と藤原氏の系図は気を付けておいてください。③も正文です。このことを言っている史料として、「愚管抄」、「御成敗式目」などでも記載されています。ということで、④が誤文です。今回は内容正誤になります。両統迭立の話は14世紀に入ってからですが、幕府は両統迭立について介入した方です。そのため、誤文です。両統迭立に反対したのは大覚寺統の後醍醐天皇で、父である後宇田天皇の院政を廃止した人です。
問5 下線部⑤(元弘三年)の前後のできごと(a~d)を、年代順に古いものから並べるとどうなりますか。適切なものを次のなかから1つ選びなさい。
a.正中の変 b.後醍醐天皇の吉野への脱出
c.中先代の乱 d.元弘の変
➀a→b→c→d ②a→c→d→b ③a→d→c→b
④d→a→c→b ⑤d→b→a→c ⑥d→c→b→a
元号が分かればaとdの組合せは判明できます。中先代の乱は建武の新政のときにおこった北条氏の生き残りがおこした反乱です。後醍醐天皇の吉野への脱出は建武の新政が失敗したのちのできごとと判明できます。よって、c→bの順番は確定します。よって、c→bになっていない➀と⑤は除外できます。正中の変と元弘の変は鎌倉幕府打倒の話です。先に起こった正中の変は後醍醐天皇はお咎めなしでしたが、その後の元弘の変は後醍醐天皇が隠岐に配流されました。よって、a→dとつなげないといけません。そして、c→bよりも前にいないといけません。よって、正解は③となります。
問6 下線部⑥(君の御聖断)に関する記述として、不適切なものを次の中から1つ選びなさい。
➀ 摂政・関白を重んじた。
② 多大な費用のかかる大内裏の造営を計画した。
③ 鎌倉将軍府や陸奥将軍府を置いた。
④ 土地所有権の確認には、天皇の綸旨が必要であるとした。
この問題は、少し難しいですが、内容としては建武の新政であることが分かります。そこから正誤判定をしていきましょう。
➀は保留でいいです。公家は重宝した、とあるが、摂政・関白については判定できません。結論から申し上げますと、これは誤文で、摂政・関白については院政を否定していることから判定してもいいでしょう。
保留にした以上は、残りの選択肢を吟味する必要があります。②は正文で、武士が不満を持った原因の一つです。この記述は教科書にも載っています。③は建武の新政の系図を見ると正文です。室町幕府との系図の違いに気を付けてみておきましょう。④も正文です。土地所有にも天皇が介入していたことが分かります。天皇の偽綸旨も横行したことで武士の不満が高くなったことが分かります。簡単に言うと、天皇中心の新政策は、武士社会の慣習を無視していたのです。この説明は、「詳説日本史」では注3に説明があり、御成敗式目を根拠に説明しています。よって、保留にした➀が誤文となります。
問7 下線部⑦(延喜・天暦)に関連して、「延喜・天暦の治」と呼ばれた醍醐天皇・村上天皇時代の政治に関して述べた次の文X・Yについて、その正誤の組合せとして、適切なものを、次のなかから1つ選びなさい。
X.醍醐天皇の時代には、延喜の荘園整理令が出された。
Y.村上天皇の時代には、乾元大宝が発行された。
➀X=正、Y=正 ②X=正、Y=誤
③X=誤、Y=正 ④X=誤、Y=誤
中世の問題が続いていた中、ひょっこりと古代の正誤問題が入ってきます。慌てる必要はありません。史料を用いる問題は、成立時期と史料の内容の時期が合致しないときがあります。
Xは正文です。延喜の荘園整理令は902年に発布されましたが、その前年に藤原時平が菅原道真を大宰府に配流した昌泰の変が起こりました。この時の天皇が醍醐天皇なので、正文と判定できます。Yも正文です。村上天皇の政治は日本史ではあまり掲載がありませんが、唯一出てくるのが皇朝十二銭最後の乾元大宝の鋳造です。
よって、正しい組み合わせは➀となります。
■私立でもマーク形式の攻略はセンター試験と同じ…だが
見てもらったら分かりますが、私立でも正誤問題の解き方はセンター試験とアプローチ法は基本は同じです。相違点といえば、その問われている語句・内容が重箱の隅を突っつく問題が出ることがあるのです。つまり、正誤判定のレベルがセンター形式よりも高いことが分かります。
正誤問題で難しいといわれている関西学院大学では、最初の問題が2文章正誤の問題になります。ですが、その正誤判定が非常に難しく、細かい知識が問われることがあります(消去法も選択肢の関係上使えません)。早稲田大学も正誤判定で語句を用いない問題も出てきます。以下の例は早稲田大学で実際に出た正誤文です。
例 旧石器時代には主に打製石器を用いていたが、縄文時代には主に磨製石器を用いていた。
この正誤問題は語句で正誤を判定しようとしたら、正文と判定する人が多いですが、この文章は誤文です。え!どこが誤文なのか?これを語句で探そうとしたら誤った先入観をもって判定してしまいます。実は、誤文の正体は「主に」の部分です。主に、というのは、中心という意味合いがあり、他にも使われている、ということがわかります。つまり、難関校は表現・言い回しでも正誤問題がつくられ、それが判定材料となっているのです。
日本史の知識で解説すると、旧石器時代は打製石器しか使っていません。よって、ここで主にと付けると、他にも使われていたことになります。ここが誤文になります。ちなみに、後半は正文です。縄文時代は磨製石器が中心ですが、打製石器も使っています。よって、正文です。ここに先入観を入れるのはダメです。日本史で習った知識を使って正誤問題を解いてください。
その上で、教科書学習も忘れないようにしましょう。特に早慶の正誤問題等でも、細かい問題も出てくると思いますが、教科書を中心とした学習でも高得点は取れます。足りない知識を問題集や赤本などを用いて補充していけばいいのです。
近年、歴史能力検定の問題も正誤問題の判定法が難しくなっています。今までの学習法では通用しない問題も出てきているくらいです。そのため、マーク形式の私立大学を受験される際に、歴史能力検定2級を受けるといいでしょう。1級は論述が必要な方が受けるなら効果はあります(もちろん、2級でも1級でもいいですが……)。
正誤判定の根拠に困ったら、まずは教科書や自分のノートなどを用いてください。そこで知識の漏れがあったら、その場で定着し、その場で覚えてしまいましょう。入試まで2か月を切りました。共通テスト・私立入試など今年はいろいろと大変な受験ですが、頑張ってください。