2021年共通テスト第一日程 大問5・6

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いよいよ、近現代の問題になります。共通テストでも近現代は4割近く出題されています。この出来が高得点につながるかどうかの分かれ目になると思います。

■問題の概略

大問5は「影山英子(福田英子)に関する人物史」です。共通テストでもセンターのように個人が活躍した時期の人物史が出題されます。そして、今回は1問しかない空欄補充問題ですが、少しだけ出題パターンが変わっています。
大問6は「第二次世界大戦後の民主化政策」をテーマにした問題です。特に農地改革についてのまとめを出しています。気を付けることは、農地改革がテーマといってもそのきっかけとなった寄生地主の話も出てきます。この関連性ができていれば難しくはなかったと思います。

■大問5 解説

それでは、解説に行きましょう。

難易度:やや難(代々木ゼミナール公式サイトより引用)

問1 空欄補充問題です。しかし、今までの内容と異なるのが、アに入るものが語句ではなく大阪事件の内容が入ります。これで虚を突かれた人もいたと思います。ということは、今後の共通テストの空欄補充問題は語句だけでなく、内容が入ることがある、という警戒を高めなければなりません。そして、イも直接知らない内容ですが、イの後ろに社会主義の言葉があるため、平民社か政教社かどちらが社会主義に関する組織かが分からないといけません(恐らくこの問題は従来の空欄補充よりも正答率が低い可能性はあります)。社会主義の組織は平民社です(作った人物が幸徳秋水や堺利彦です。なお、内村鑑三は平民者に参加してません)。

問2 語句組合せ問題です。薩摩藩に関係するのは西郷隆盛です。木戸孝允は長州藩です。榎本武揚は函館の五稜郭で新政府軍に敗れて降伏しました。これはサクッと正答を出したいところです。

問3 組合せ正誤問題です。今回は史料の内容をじっくり読んで判定しなければなりません。そして、角筈女子工芸学校の設立である1901年も判定材料となります。
史料から前半部分に「生計の助けとなるものあらず」とあるので、英子は現実にそうなっていないことについて嘆いていることが分かります。そこから正誤判定をしましょう。c・dは1901年がポイントになります。dが分からなくても、cの教育勅語が1890年の発布だと分かれば誤文と判定できます。

問4 二文章正誤問題です。下線部に書かれている時期が1907年とあるので、そこから時期判定を行えばいいです。Xの新婦人協会の結成が1920年です(中心人物は平塚らいてうと市川房枝)。この後、女性が政治集会に参加することができました。女性の政治集会禁止を明記したのは1900年の治安警察法です。

■大問6 解説

それでは、最後の問題を解説しましょう。

難易度:標準(代々木ゼミナール公式サイトより引用)

問1 二文章正誤問題です。この話は寄生地主と小作人の関係性が分かっていれば容易に解答は出せます。
小作料は原則物納です。それを地主が現金に換えてから地租を政府に納めていた、ということが分かればいいでしょう。小作人は小作料が非常に高かった関係で購買力が低下していました。それにより、自分の子どもを工場に出稼ぎに行かせていたのです(この話は後の産業革命と関連させるとよい)。
このことが分かれば、問6の正誤判定も容易にできるようになります。

問2 単純語句選択問題です。センター初期の問題で出ていた形式が何と復活しました。といっても、時期判定問題であることは変わりません。1920年代に活動した組織は全国水平社です。日本社会党は1906年、明六社は1873年、翼賛政治会は1942年です。これは確実に点数にしたいところです。

問3 因果関係型組合せ問題です。これは今までのセンターでは見られなかった形式ですが、語句組合せ問題とやり方は大きく変わらないです。共通テストの施行調査ではよく出ていた形式でしたが、少し難易度を落として出題されていました。
寄生地主が横行していた時に、小作料が非常に高かったため、小作料を引き下げるために小作争議が起こっていた、とあるので、寄生地主の発展ではなく動揺だとわかります。

問4 二文章正誤問題です。砂糖・マッチなどは切符制、米などは配給制です。この区別ができていなければ判定に迷ったと思います。国家総動員法から価格等統制令が出た流れは押さえておきましょう。単純に国家総動員法だけ覚えていても意味がありません。

問5 因果関係型組合せ問題です。今回は目的定義型ですが……
農業統制の部分を読むと、小作料に引き上げ禁止、自作農創設の促進などから、食料確保をすることが分かるため、小作人の優遇措置を取ることになったことは疑いがありません。

問6 単純正誤問題です。今回は➀と②が知識問題、③と④が資料読解正誤となります。
➀も②も正文です。➀は問1の流れを受けて農地改革が行われた、ということがわかると容易に判定できます。②については、農地改革の内容が分からないと判定はできません。しかし、保留にしても今回は③と④がグラフを見れば解答が出せます。思い切って保留をうまく使いましょう。
④が誤文となります。兼業農家については前半部分はいいのですが、後半部分をみると、グラフを見ると専業農家が中心だったことが分かります。

問7 組合せ正誤問題です。減反政策は米の余剰米が多くなった理由が分かれば容易に回答を出せますが、これは中学地理の知識です。農業基本法の意味が分かれば問題ありません。決して、自作農を創設するための話ではないです。自作農を創設する法律は、農地改革の際につくられた自作農創設特別措置法というものがあり、後に農地調整法が制定された流れまで押さえましょう。

■中学内容の知識も活用

最後の問題を見てもらうとわかりますが、中学内容で習った内容も正誤判定になることがあります。よって、中学内容の土台はしっかりと押さえておかないといけません。これは他科目でも言えますし、社会科全体でも言える話です。科目間の横断知識をしっかりと身に付けておかないといけません

→まとめに続く

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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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