【大学入試紙面講義】2020年追試験 大問6

共通テストまであと3日ほどになりました。この3日でどこまで仕上げることができるか、でまだ点数を上げることはできます。日本史や世界史などは1問正解が増えるだけで2・3点上げることができます。その正解する問題数が増えるだけで点数が上がります(当たり前ですが)。
その最後の追い込みにふさわしい近代文化史を扱いたいと思います。この単元は予想以上に現役生は学習が追い付いていないところです。ということは、この単元さえできれば、点差を付けることができる、ということです。
最後の追い込みです。しっかりと解説をしていきますので、最後までお付き合い、よろしくお願いいたします。なお、問題は「大学入試センター」のサイトにありますので、そちらからダウンロードしてください。
次回からは私大マークを中心に解説を行いますので、よろしくお願いいたします。

■問題の概略

今回は、徳富蘇峰・徳富蘆花兄弟にスポットを当てた人物史です。今回は個人が活躍した時代の人物史のため、個人と関わってきた人物も出てきます。文化史が中心の問題となるため、この単元の学習が追い付いていない人は大変なことになります。正誤問題については、保留にしても対応できる問題もあるので、慌てずに取り組んでいくといいでしょう。

■解説

それでは、解説を行いましょう。


問1 下線部ⓐ(キリスト教)に関連して述べた次の文Ⅰ~Ⅲについて、古いものから年代順に正しく配列したものを、下の➀~⑥のうちから一つ選べ。(29)
Ⅰ 大日本帝国憲法の制定によって、制約付きながら信教の自由が認められた。
Ⅱ 政府は、欧米諸国からの非難を受け、キリスト教禁止の高札を撤去した。
Ⅲ キリスト教徒の内村鑑三が、教育勅語への拝礼を拒否したために教壇を追われた。
➀ ⅠーⅡーⅢ ② ⅠーⅢーⅡ ③ ⅡーⅠーⅢ
④ ⅡーⅢーⅠ ⑤ ⅢーⅠーⅡ ⑥ ⅢーⅡーⅠ

この問題は時期が非常に近いため、西暦年で判別します。西暦年の判断が難しいのはⅡですが、ⅠとⅢは重要な年のため、これは知っている人が多いです。Ⅰは大日本帝国憲法の制定が1889年で、Ⅲの教育勅語が1890年とわかるなら、ⅠーⅢの順番は疑いの余地はありません。よって、この時点で➀・②・③に解答が絞れます。Ⅱの高札撤去のきっかけは浦上信徒弾圧事件で1871年のできごとです。このことを知らなくても、明治新政府は当初はキリスト教の禁止の立場だったが、のちに欧米諸国から非難を受けキリスト教の信仰を認め、その後、大日本帝国憲法に記載した、という流れが分かれば、Ⅰより前にⅡが来ることは疑いの余地はありません。よって、正解は③となります。

問2 下線部ⓑ(当時の雑誌や新聞は、民権運動の高まりの中で、欧米の思想や言論を急速に広める役割を果たす一方、日本の文化や伝統の固有性を重視した近代化が主張される場ともなった)に関連して、自由民権運動期から日清戦争が始まるまでの時期の思想に関して述べた次の文a~dについて、正しいものの組合せを、下の➀~④のうちから一つ選べ。(30)
a 徳富蘇峰は、『国民之友』で明治政府の欧化政策を批判した。
b 加藤弘之は、『民約訳解』でルソーの社会契約説を紹介し、立憲政治の必要性を説いた。
c 陸羯南は、『日本』を創刊し、国家の自主独立や国民の統一の実現を主張した。
d 志賀重昂は、『平民新聞』を創刊し、日本の伝統的な思想・文化の尊重を説いた。
➀ a・c ② a・d ③ b・c ④ b・d

この問題は人物と作品(雑誌・新聞も含む)の整合性が取れれば解答は簡単です。
aは正文です。bは中江兆民の説明です。加藤弘之は『国体新論』などを著した人物です。
cは正文です。dの平民新聞は幸徳秋水・内村鑑三らの説明です。志賀重昂は三宅雪嶺らと同じグループで政教社を創設(機関誌は『日本人』)したグループです。よって、正しい組み合わせは➀となります。

問3 下線部ⓒ(首相である桂太郎の政策や政治行動)に関して述べた次の文X・Yについて、その正誤の組合せとして正しいものを、下の➀~④のうちから一つ選べ。(31)
X 第一次桂内閣は、ポーツマス条約を結び、賠償金と領土を獲得した。
Y 憲政擁護運動が盛り上がるなかで、桂は新党を結成して対抗しようとした。
➀ X:正 Y:正 ② X:正 Y:誤
③ X:誤 Y:正 ④ X:誤 Y:誤

今回は政治史との関連問題です。今回は聞き慣れない言葉がありますが、周辺知識が足りなければ正誤判定に微妙に狂いが生じてしまいます。
Xは誤文です。ポーツマス条約は賠償金を得られませんでした。領土の獲得は正文で、南樺太の獲得が行われているのが証拠です。Yは正文です。この時に結成した新党は、立憲同志会です(私立受験者は気を付けてください)。その一部が後に革新倶楽部に合流していきます。よって、正解は③となります。


問4 空欄( ア )( イ )に入る語句の組合せとして正しいものを、次の➀~④のうちから一つ選べ。(32)
~小説『黒い眼と茶色の目』(1914)年では、同志社を創設した( ア )をモデルとした校長が登場し、~
~無政府主義者が摂政宮(のちの昭和天皇)を狙撃した1923年の( イ )に対しても、大逆罪による死刑判決を疑問視し、減刑を訴えた。
➀ ア 森有礼 イ 血盟団事件 ② ア 森有礼 イ 虎ノ門事件
③ ア 新島襄 イ 血盟団事件 ④ ア 新島襄 イ 虎ノ門事件

この問題は同志社の創設者が誰かを知らないといけません。アは、森有礼は文部大臣にはなっているものの、学校創設については直接関係ありません。同志社の創設者は新島襄です。同志社系列の大学を受ける方は気を付けてください。イは摂政宮を襲撃した虎ノ門事件です。血盟団事件は1931年ごろに起こった事件です。よって、正解は④となります。

問5 下線部ⓓ(黒田清輝)の描いた絵画として正しいものを、次の➀~④のうちから一つ選べ。(33)
➀ 海の幸 ② 金蓉 ③ 湖畔 ④悲母観音

実際は写真を見て答える問題です。➀は青木繁の作品で、②は安井曽太郎の作品で、③は黒田清輝の作品で、④は加納芳崖の作品です。➀と③は洋画、④は日本画です。②は大正時代の洋画です。よって、正解は③となります。


問6 空欄( ウ )( エ )に入る語句の組合せとして正しいものを、次の➀~④のうちから一つ選べ。(34)
~1937年には、植民政策を研究する東京帝国大学教授( ウ )が、政府の大陸政策に批判的であると非難され、辞職に追い込まれる事件が起きた。一方、戦争に協力する文学者の団体として、1942年に( エ )が結成され、蘇峰はその初代会長となった。~
➀ ウ 矢内原忠雄 エ 日本学術会議
② ウ 矢内原忠雄 エ 日本文学報国会
③ ウ 美濃部達吉 エ 日本学術会議
④ ウ 美濃部達吉 エ 日本文学報国会

この問題はウは難しくないものの、エはほとんどの方は知らないと思います。ウは美濃部達吉は天皇機関説事件で貴族院を辞任した人なので、空欄ウには矢内原忠雄が入ります(矢内原事件)。問題はエです。徳富蘇峰が初代会長となったのは日本文学報国会の方です。日本学術会議は1949年に設立されました。この日本学術会議は、2020年に菅首相が6名の任命拒否の問題でも取り上げられました。日本文学報国会については、難関私立は押さえておかないといけません。
よって、正解は②です。

問7 下線部ⓔ(文化勲章)に関連して、文化勲章受章者について述べた次の文X・Yと、それに該当する人物名a~dの組合せとして正しいものを、下の➀~④のうちから一つ選べ。(35)
X この科学者は、地球の緯度の変化を観測し、Z項を発見した。
Y この科学者は、脚気を防止するオリザニンを抽出した。
a 長岡半太郎 b 木村栄 c 高峰譲吉 d 鈴木梅太郎
➀ X-a Y-c ② X-a Y-d
③ X-b Y-c ④ X-b Y-d

ここの学習は明治・大正期の自然科学の学習ができていなければ歯が立ちません。時折、私立入試でも出題される内容なので、しっかりと学習しておいてください。
XはZ項の発見は木村栄です。長岡半太郎は原子構造の研究を行った人です。Yはオリザニンの抽出より、鈴木梅太郎を選択してください。高峰譲吉は、アドレナリンの発見やジアスターゼの創製で有名です。よって、正解は④です。

問8 下線部ⓕ(兄弟と交流のあった熊本出身の女性史家・高牟逸枝は、蘇峰の生き方を「孤独」と表現したという)に関連して、蘇峰の死後に定められた女性の地位に関する法制度について述べた文として正しいものを、次の➀~④のうちから一つ選べ。(36)
➀ 刑法の一部改正により、姦通罪が廃止された。
② 男女雇用機会均等法が制定された。
③ 男女共学の理念をうたった教育基本法が制定された。
④ 男女同一労働・同一賃金などを定めた労働基準法が制定された。

リード文より、徳富蘇峰の死去は1957年とあります。これ以降に制定された法律を答えるといいです。
➀は1947年に改正されました。②は1985年に制定、③は1947年に制定、④は1947年で、②以外は全て戦後すぐに制定されたことが分かります。内容は正文のため、時期ズレの判定を見るのがいいです。1957年以降に制定された法律は②しかありません。よって、正解は②となります。

■共通テスト直前の仕上げ

いよいよ、今週末に共通テストが行われます。そのために、基本事項の再確認をしておくこと、正誤問題を解いておくことなどやることはたくさんあります。そのやることは日本史に限らず、英語・国語などのほかの科目とのバランスを取ったうえでやらないといけないのです。
ここで、間違ってほしくないのが、一問一答形式の問題で学習するとき、語句だけのチェックでなく、内容のチェックも合わせて行ってほしいと思います。流れ文で確認した方が本来はいいです。それを最低でも1周しておくといいでしょう。もちろん、私立入試や国公立二次試験で日本史が必要な場合はさらに周回を重ねなければなりません。

正誤判定をするときには、誤文を正文に直すトレーニングも忘れないでください。史料や図版・グラフなどの読み取り学習も合わせて行っておきましょう。日本史でも最後まであきらめずに学習したら+10点は取ることは可能です。学習した範囲が出題されるかも、という気持ちで問題にとりかかってください。

来週の日曜日辺りに問題を解いて解答解説速報ができれば、と思っています。施行調査・過去問のチェック(今まで受けた模試・実戦問題集なども活用してください)などもこの直前期にやっておきましょう。頑張ってください

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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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