公立高校入試解析 2024年高知県

本日もよろしくお願いいたします。今回は公式Xでアンケートを取りました2024年高知県の入試解析を行いたいと思います。今回解析を行う際の条件に見事に合致しましたので、解析のほうをさせていただきます。
この入試解析シリーズのマガジンは原則メンバーシップ限定公開です(単品購読は可能です)。今回は教育委員会様の指導の下、一般公開も可能となりましたので、そのまま公開させていただきます。次回行う予定の2024年宮崎県につきましては、教育委員会様の指導の下、メンバーシップ限定公開のみ(単品購読は可能)とさせていただきます
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

問題については、高知県教育委員会のHP、『全国高校入試問題正解』(旺文社)、赤本(教学社など)を参照ください。


■2024年高知県概要

高知県の公立高校入試は時間は50分、50点満点です。社会の問題は大問6題構成です。

【2024年高知県 大問形式】
大問1 日本地理総合
大問2 前近代の歴史(産業発達史)
大問3 政治総合(現代社会も含む)
大問4 世界地理総合
大問5 近現代の歴史(年表を使った総合問題)
大問6 国際社会と経済総合

このような感じで出題されていました。
2024年社会の平均点ですが、38.0点(昨年は50.2点)と8/10現在の平均点ではワーストの平均点となりました(2位が北海道、3位が石川県、4位が和歌山県、5位が福井県)。
この平均点ですが、過去8年でも最低でしたが、2020年入試の平均点である38.8点も下回っていました。去年から12点ほど下がっていますが、それらの原因とは何か、をこれから問題を通じて解析していきたいと思います。

なお、今回の入試ランクですが、拙著の『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)を使用しますが、ランクが変更されているものは僕の別記事で確認をしてください。

■大問1 解析

では、早速解析を始めましょう。大問1は日本地理総合問題です。


(1) 農業・林業、製造業、宿泊業・飲食サービス業の就業者数の割合を見て、Dに当てはまる府県を選ぶ問題です。アが青森県、イが静岡県、ウが大阪府、エが沖縄県です。ポイントは、青森県は農業・林業の割合が高いものを選べばいいのでAとなります。静岡県は東海工業地域がある関係で、製造業の割合が高く、大阪府は阪神工業地帯があるので、BかCで迷います。大阪府は大都市のため農業・林業の割合が低いことから静岡県がC、大阪府がBとなります。沖縄県は、宿泊業・飲食サービス業の割合が高いDを選びましょう。ただし、沖縄県は観光業の割合が非常に高いです。よって、正解はDとなります。
正答率ですが、57.8%と2人に1人の割合で正答していました。実は、今回の高知県の正答率ですが、正答率が50%をこえている問題が、30問中9題しかありませんでした。

(2) 地形図を見比べて誤っているものを2つ選ぶ問題です。イの志度駅と郵便局との間の地図上の直線距離が資料Ⅱで1センチ、資料Ⅲで2.7センチとありますので、実際の距離(地形図は25000分の1)ですが、資料Ⅱは1×0.25より0.25㎞となります。また資料Ⅲは2.7×0.25より0.675㎞となります。
差は400mほどとなるため、2㎞以上広がったは誤文です。ウは標高50m以上の山の斜面は針葉樹林と果樹林だったのが、広葉樹林となったわけではないので誤文です。よって、正解はイとウになります。
正答率ですが、20.6%とかなりの難問でした。これは正しく地形図が比較して読み取れたか、また、正しく正誤文の誤文の理由を正しく指摘できたか、で点差が分かれたと思います。なんとなくでやると正答率は下がります

2 九州地方南部にみられる土壌を答える問題です。火山活動、堆積できた台地、稲作に適さず、畜産が盛んなどのキーワードからシラスを入れればいいでしょう。シラス台地のことだと思えばいいと思いますが……
正答率は22.4%と予想以上に低かったです。僕もこの結果には疑問符が付きました。おそらくカルデラと間違えた人が多かったのでは、と思いますが、カルデラは火山活動によってできた地形のことで、噴出物ではありません。

入試ランク(シラス台地):(一問一答・頻)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

3 九州地方の産業の特色を述べた文の正誤判定をそれぞれ行う問題です。Yは正文です。1960年代以降から機械工業への転換がはかられ、1970年代にはIC工場や自動車工場の進出が盛んとなりました。九州地方ではシリコンアイランドといわれていることがわかれば容易に回答できます。Zも正文です。廃棄物をリサイクルする工場が集まっていることからエコタウン、環境モデル都市のことだと判定できます。よって、正しい組み合わせはアとなります。
正答率は26.2%とこれも予想以上に低いです。原因ですが、九州地方で自動車の生産が盛んであることをわかっていなかった、エコタウンや環境モデル都市に関する関連知識を理解できなかったのでは、と思います。

4 東京都だけ夜間人口に比べて昼間人口が多い(資料Ⅳより判定できる)理由を資料をもとに指定語句を用いて答える問題です。
資料Ⅴを見ると、東京都の住宅地の平均地価が1㎡あたりで37.81万円となります。これは神奈川や埼玉などよりも地価が2~3倍以上の差があります。大学・大学院数の数も4~6倍以上の差があります。事業所数も2~4倍強の差があることから、東京都に住むよりは周辺の県に住んで、東京には通勤・通学のために行く人が多いと判断しましょう。ニュータウンもそのような傾向が強いです。以上のことを記述すれば問題ないでしょう。
正答率ですが、完全正答率は45.8%、部分正答率を含めると56.7%となります。昼間人口関係の問題は出題頻度が高いので、確実に押さえておきましょう。

標準的な問題が多かった印象でしたが、正答率20%台の問題が多かったこともあって、単純な知識問題だけでは対応できていない問題が多いことも事実です。もしくは問題慣れしていないのもあるかもしれません。

■大問2 解析

続いて、大問2は前近代の歴史ですが、産業史のテーマ問題です。

1 佐賀県にある吉野ヶ里遺跡は弥生時代の代表的遺跡になります。そこから弥生時代を選びましょう。正解はウです。
正答率は66.6%でした。これは出来がいいほうの問題ですが、確実に正解しておきたい問題です。

入試ランク(弥生時代):(一問一答)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

2 律令国家の仕組みを整備した目的を短文記述問題で出題しています。律令国家とは、天皇を頂点として、皇族・貴族や役人たちが全国を支配する中央集権国家を形成することが目的です。太政官や各省庁は貴族が就任しており、地方の郡は豪族が就任しています。それらの背景を押さえておけばいいでしょう。ただし、天皇中心の中央集権国家、という記述を書けないといけないでしょう
正答率は完全正答率は46.1%で、部分点を含めると49.9%でした。書きたいことはわかるものの、いざ自分で記述しようとしたら記述できないことで正答率を下げていることもあります。

入試ランク(律令国家):(記述問題など)

吉野自作の中学社会用語集より

3 鎌倉時代の政治と文化のできごとの組み合わせをそれぞれ選ぶ問題です。鎌倉時代の政治は御成敗式目が制定された、で問題ないです。公事方御定書は江戸時代中期の享保の改革のときに制定されました。文化は道元が曹洞宗を開いたでいいでしょう。空海が真言宗を開いたのは平安時代前期のできごとです。よって、正しい組み合わせはイとなります。
正答率は25.2%と4人に1人しか正解できませんでした。政治・仏教の政策、関連人物と時期の判断ができていない受験生が多い気がします。時期判定の問題は大学入試でも正答率が低いため、語句だけを覚えている受験生は苦戦したでしょう。

4 商業の発達に関するできごとを古いものから選ぶ問題です。ア:馬借や問が活躍したのは室町時代です。イ:楽市・楽座が実施されたのは安土桃山時代です。ウ:平城京より奈良時代です。エ:五街道が整備されたのが江戸時代です。よって、ウ→ア→イ→エの順番になります。
正答率は26.0%と年代並び替え問題の正答率は低いです。原因としては、一問一答集の学習を行っている人の大半は、時期判定を行っていない可能性が高いため、型にはまらない問題が出たときに対応できなければ失点を重ねてしまいます。

5 作業を分担し、製品を作らせる仕組みなので、工場制手工業(マニュファクチュア)です。
しかし、正答率は16.3%となぜか正答率が低いです。実は、入試ランクもマニュファクチュアは一問一答でCランクなので、入試においては難語になるのです。確かに教科書にはほとんど掲載があるので、定期テストではよく出るはずですが、入試問題になると難語に突然なる問題もあります。それを踏まえて、正しい指導を行ってください。

入試ランク(工場制手工業):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

問1の66.6%の正答率以外は50%を切る正答率ばかりでしたが、ほとんどが正答率30%を切る問題でしたので、問題文の言い回しなどに気を付けてください。

■大問3 解析

大問3は公民の政治分野総合問題となります。単元別問題でない分、正しい知識を身につけていれば正解にたどり着きます。


(1) 三権分立について誤文を選択する問題です。内閣が国会の信認に基づいて成立し、国会に対して責任を負うことを議院内閣制といいます。行政権の拡大は行政の行う仕事が増え、行政機関の役割や影響力が大きくなる状態のことです。そのために行政改革を行うことになります。よって誤文はウとなります。
正答率は72.0%とよくできていましたが、今回の正答率で70%を超えている唯一の問題なので、いかに受験生が苦戦したか、がわかります。

(2) 国会の仕事として誤っているものを選ぶ問題です。天皇の国事行為に対する助言と承認は内閣の仕事です。よって、誤っているものはアとなります。ほかの弾劾裁判所の設置、予算の議決、条約の承認は国会の仕事です。ただし、条約の締結は内閣の仕事となります。
正答率ですが、45.8%と2人に1人しか正答できていません。つまり、国会の仕事、内閣の仕事、地方自治の仕事がそれぞれごちゃごちゃになって整理されている可能性が高いのでは、と思います。

(3) 内閣が裁判官に対して行える権限を答える問題です。内閣ができることは最高裁判所の長官を指名することです。指定語句に「指名」とあるので、内閣で任命できない人物を考えればいいと思います。 
正答率ですが、完全正答率が14.5%、部分正答率を含めても15.0%しかありませんでした。これはどういうことか、というのですが、三権分立の仕組みがわかっていないこともそうですが、だれを任命するのか指名するのか、という内容が定着できていなかったことも原因では、と思います。

2 表を見て、効率がどのような点で成り立っているか、を短文記述問題で出題しています。公正に着目すると、「どのクラスも体育館と音楽室を1回ずつ使用できる」という点です。ここから効率の点から見ると、体育館と音楽室に空きが出ないように無駄なく使用できています。このタイプの問題は効率・公正の問題としては定番問題になりつつあります。
正答率ですが、完全正答率が15.5%、部分正答率を合わせても15.8%とかなり難問でした。では、なぜこの問題はここまで正答率が低かったのか、ですが、公正と効率の意味は大体わかると思うのですが、表などを使って効率と公正の理解ができていなかったのでは、と思います。

入試ランク(効率):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

3 マララ=ユスフザイさんがスピーチした資料と日本国憲法の条文の語句に共通するものを答える問題です。(  )を受ける権利、とあるので、教育が入ります。
正答率ですが、65.9%とまずまずの正答率でした。
なお、マララ=ユスフザイさんのスピーチについてですが、拙著でもしっかりと空欄補充問題で対応しています。近年は日本国憲法の条文だけでなく、マララ=ユスフザイさんの演説を資料として出題する問題も増えています。

公民についてはそれなりの正答率でしたが、短文記述問題での正答率がほぼ壊滅的でした。ただし、高知県の問題のついては1/10の抽出での統計となりますので、もしかしたらもう少し正答率が上下した可能性があるかもしれません。

■大問4 解析

大問4は世界地理総合の問題となります。


(1) 資料ⅠのXの海洋名、それが略地図ではどこに当てはまるか、という問題です。アメリカ大陸の東なので、大西洋です。略地図中ではCになります。
正答率ですが、54.4%でした。大西洋の場所を正距方位図法・メルカトル図法で把握できていなかった可能性があると思います。場所を間違えると太平洋と誤答する恐れがあったと思います。

入試ランク(大西洋):(一問一答、頻出)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

(2) ロンドンの1月の平均気温が札幌の1月の平均気温より高い理由を短文記述問題で出題しています。つまり、西岸海洋性気候の特徴を答えられたら問題ありません。大西洋上を通る暖流の北大西洋海流とその上空を吹く偏西風の影響を受けているから、と記述できれば問題ありません。
正答率ですが、完全正答率が20.9、部分正答率を合わせても24.2%と思った以上にできていません。海流名と風の名前が一致できていなければ減点された可能性があったと思います。定番問題といわれている問題なので、確実に正解しておきたかったと思います。

入試ランク(西岸海洋性気候):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

(3) アメリカ合衆国のYの地域でみられる農業を選択させる問題です。ロッキー山脈の西部となれば、放牧がおこなわれています。ここでは乾燥帯であるので、センターピボットを使った灌漑かんがい施設での農業がおこなわれています。
正答率ですが、28.8%とやや低いです。近年、適地適作の問題が出題が減っているものの、アメリカの農業の特徴は出題されることがあるので、気候と土地利用などの関連性を意識しておきましょう。

入試ランク(放牧):(一問一答)

吉野自作の中学社会用語集より

2 アメリカの工業について述べた文を古い順番に並び替える問題です。ア:デトロイトの自動車産業、流れ作業から19世紀ごろのできごとと判断できます。イ:鉄鋼や自動車がアメリカ合衆国へ輸出されたのは1980年代のできごとと判断できます。これを契機に日本との貿易赤字となるもんだいが起こります。ウ:シリコンバレー、コンピュータやスマートフォンから1990年代から2000年代と判断できます。エ:五大湖周辺で重工業が起こったのは18世紀ごろと判断できます。五大湖の水運を利用してデトロイトで自動車産業がおこった動きは理解しておきましょう。よって、エ→ア→イ→ウとなります。
正答率ですが、37.2%と点差がつきました。ポイントとしては、アとエ、イとウで時期が大きく変わるので、そこの時期判定ができれば正答しやすかったかもしれません。

3 米・とうもろこし・小麦の作物を生産量上位5か国から判断する問題です。アメリカが1位となっているのはとうもろこしなので、aがとうもろこしとなります。中国が1位となっている作物については、3位以下で判断します。3位以下がアジアの国の場合は米、3位以下が先進国の場合は小麦となります。よって、bが米、cが小麦となります。
正答率ですが、54.2%とやや点差がつきました。生産量については主な上位国に着目する、1位もしくは2位が同じ国の場合はどこで目星を付けるか意識しておけば問題ありません。これら3つの穀物は非常によく出ます。

正答率が60%オーバーの問題がなかったことで平均点の下落につながっているのでは、と思います。

■大問5 解析

大問5は年表を見て答える近現代の歴史の問題です。

1 日本が開国したのちに外国人が外国の銀貨を日本に持ち込んで日本の金貨と交換した利点を短文記述問題で出題しています。日本の金銀比価は1:5ですが、外国の金銀比価は1:15となります。そこから、外国人は日本で銀を交換することで少ない量で金と交換することができるからです。これに準することが記述できれば問題ないでしょう。
正答率ですが、完全正答率が44.5%、部分正答率を合わせると50.1%となります。
実は、この話については紙面講義でも解説しています。拙著では紙面の関係上掲載ができませんでしたが、企画が通れば外交史では掲載する予定です。

2 岩倉使節団の結果、岩倉使節団に同行した女子留学生を答える問題です。岩倉使節団の交渉は失敗に終わりました。その時に同行した女子留学生は津田梅子です。よって、正しい組み合わせはエとなります。
正答率ですが、44.5%と思ったよりも点差がつきました。拙著では岩倉使節団の結果についての話、目的もしっかりと解説でカバーしています。津田梅子については、貨幣史の関係で出題された可能性もあります。

入試ランク(岩倉使節団):(一問一答)、(記述問題など)
入試ランク(津田梅子):(一問一答)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

3 ビゴーの風刺画を見て、どの人物がどの国を表しているかを答える問題です。Xは魚なので、朝鮮と判断します。Yは橋の上から見守っているためロシアと判定できます。
正答率は28.6%と思った以上に出来が悪かったです。ところが、拙著ではこの問題について、ビゴーの風刺画について指摘をしており、また、それぞれどれがどの国か、ということも簡単にまとめています。これは単純な一問一答集では対応が難しいです(気を付けて学習されている方は除く)。

入試ランク(日清戦争):(一問一答)、(記述問題など)

『高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本』(かんき出版)より

4 1895年から1945年までのできごとを古い順番に並び替える問題です。今回は3題も出題されているので、時期判定が十分でない受験生は苦戦したと思います。ア:二十一か条の要求は第一次世界大戦中のできごとで1915年、イ:第二次世界大戦は1939年のできごと、ウ:伊藤博文の暗殺をきっかけに勧告を併合したのは日露戦争後で1910年のできごと、エ:日英同盟を結んだのは日露戦争前で1902年のできごとです。よって、エ→ウ→ア→イの順番です。
正答率は12.5%とかなりの難問でした。原因としては、どの中心時期の前後なのか、という時期整理が十分でなかったのが原因では、と思います。歴史名辞や活躍した人物で時期整序を行うのも対策の一つとなります。あとは、中国王朝と日本の時代の整合も忘れないようにしましょう。

5 第四次中東戦争の影響で原油価格が急激に上昇したことを石油危機といいます。
正答率は60.8%とまずまずでした。しかし、戦後史の学習が間に合っていない受験生は正答できなかった可能性はあります。

60%を超えたのが1題と苦戦していたと思います。特に近現代は正答率が低く出やすい傾向のため、点差を付けられるチャンスでもあります。

■大問6 解析

大問6は経済と国際社会に関する問題です。

1 国際社会について述べた文で正文を選ぶ問題です。ア:発展途上国の間の経済格差問題は南南問題です。南北問題は先進国と発展途上国との間の経済格差問題です。イ:国際的な慣習や条約からなる国際法というルールは正文です。ウ:地球温暖化の防止に向けて2015年に採択されたのはパリ協定です。TPP協定は環太平洋経済連携協定のことで、環太平洋の貿易関係の協定となります。エ:国境を越えて多くの人や情報などが移動して世界の一体化が進むことをグローバル化といいます。イノベーションは技術革新のことです。よって、正解はイとなります。
正答率は41.5%とやや低いです。語句だけを覚えていても正誤問題には対応できません。語句と内容(歴史では時期も)との関連性を意識しておきましょう


(1) 企業・家計・政府の経済活動の表中のA・Bを入れる問題です。AはBに対して賃金・商品などを出す、Cに対して税金・商品などを出しているところから企業と判断できます。BはAから賃金・商品などを受け取ること、Cに対して税金・労働力などを出しているので、家計と判断できます。よって、Cは政府となります。よって、Aが企業、Bが家計となります。
正答率は61.1%と期待した正答率とは言い切れません。この経済活動の表については頻出です。拙著でもP216にも掲載しています。

(2) 関税について正しく述べているものを選ぶ問題です。つまり、関税の内容を選びましょう。ア:企業の利潤にかかる税金は法人税、イ:賃金や給与にかかる税金は所得税、ウ:土地や建物などの資産にかかる税金は固定資産税、エ:海外からの輸入品にかかる税金は関税です。よって、正解はエです。
正答率は54.2%と差がつく問題となります。租税の種類と内容は確実に整理しておきましょう。

入試ランク(関税):(一問一答)、(記述問題など)

吉野自作の中学社会用語集より

(3) 2020年の女性の就業率を表すグラフを選ぶ問題とそのグラフを選択した理由を論述問題で出題しています。まず、判定しやすい2020年男子の就業率はエです。理由は25歳から59歳までの就業率が安定して90%前後であることから判断できます。次の判定がしやすいのが1980年代の女性の就業率です。25歳から34歳までの就業率が50%前後になっていることから判断します。理由としては、当時の女性は結婚したら家庭に入って専業主婦となる人が多かったため、結婚と同時に退社する人が多かった背景があります。よって、アと判断します。似たようなグラフがイですが、これは2000年の女性の就業率です。結婚の平均年齢が26~30歳と上がったのが要因の一つで、もう一つはこの時期ごろから女性が結婚しても仕事を続ける人が増えたのも要因の一つとなります。よって、正解はウとなります。理由としては、25歳から34歳の女性の就業率が高いグラフがウであるからです女性の就業率が下がっているのが25歳から34歳である、ということを入れておくとより正確な回答となります。
正答率は、記号は39.2%、理由説明は完全正答率が9.9%、部分点を含めると10.7%です。つまり、グラフを選択することはできても、そのグラフを選んだ理由を言語化できていない受験生がほとんどだった、ということがわかります。そのため、理由説明の正答率がここまで低かったのでは、と思います。

全体的に正答率が60%を超えている問題が少なかったことで、平均点が相対的に下がっているのでは、と思います。つまり、単純な一問一答形式の学習だけでは対応ができない、ということです。

■関連知識・背景知識の獲得を強化する

今回の平均点の低さの要因ですが、「社会は直前に詰め込んでも何とかなる」「社会は語句を暗記すれば高得点が取れる」といった、一昔前に通用していたことが通用しなくなっているのです。言い方を変えると、変化している入試問題に学校・塾の指導者が全く対応できていない、ということなのです。そして、歴史の近現代(前近代の時期判定も含む)、公民の経済や国際社会の分野での正答率が低いのです。高知県では今年は全体的に低かったため、入試対策のそもそもの学習法を間違えているといわざるを得ません。もし、間違っていなければ、平均点が38点になることはないと思います。

一つの対策としては、一問一答形式の問題を行った後に関連知識・背景知識などの記述に対応できそうなところをしっかりと補う学習をしてください。近年の公立高校入試では対応する必要があります。この記述式問題などに対応できる一問一答集の本は現状拙著のみです。旺文社の一問一答や受験研究社の一問一答などではここまでは対応できません(だからといって、これらの一問一答集が悪いとは一言も言っていません)。
あとは、実戦問題をしっかり解いてください。入試対策用の問題集のほうがいいです。間違っても、解答を写して勉強したフリをすると、後々で痛い目に遭います。これをしっかりと行わないといけないと思います。ただし、偏差値が50未満の人は3年間のまとめを完璧にすることの方が優先されます。そこの優先順位は間違えないようにしましょう。
上位校の受験生は拙著「高校入試 社会が一問一答でしっかりわかる本」を完璧に使い倒して、記述式でも点数がとれるようにトレーニングを重ねておきましょう。詳しくは使い方の記事でまとめています。

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