2021年共通テスト第一日程 大問1・2

受験生の皆さま、1日目の試験お疲れ様でした。この記事がアップされているときは理科のテストが行われている最中だと思います。
本日は予告通り、昨日行われました大学入試共通テストの日本史の解説・概観を話したいと思います。なお、1月31日も第二日程の問題も解析できたら、と思います。もし、第二日程を受けられる方は、本日の紙面講義を参考にしていただけたら、と思います。
注意点があります。すでに解説速報を出している教育系YouTuberもいらっしゃいますが、僕の解説はこれから学習される方に向けたものも入れています。そのため、関連知識なども盛り込んでいます。多少説明は長いかもしれませんが、その分、今後の学習指針に役立つ話をしていきたいと思っています
実際の問題は下記のサイト、新聞などから取っていただけると幸いです(問題の直接の掲載は著作権に反するため、サイトなどのものを活用ください)。

■問題の概略

大問1は「貨幣の歴史」をテーマに事前学習のために行った博物館での会話やメモなどをもとに問題を解きます(古代~現代まで幅広く出題)。ここから見えることは、2024年に新紙幣と新500円硬貨の発行の話、キャッシュレス時代などという時事的要素も入れてきた、という感じです。貨幣史となると、社会経済史の知識が入っていなければ苦戦した受験生もいたかと思います。
大問2では、「文字使用の歴史」がテーマで、文化史の知識が必要になります。となると、文字を日本に伝えた渡来人の話も出てくる、と思います。一部外交、メインは文化史と思ったらいいでしょう。恐らく、今後もこのような形式の問題が出てくると思うので、来年以降受験される方は、単純知識だけでなく、関連させた知識を身に付けておくといいでしょう。

■大問1 解説

それでは、解説を行いましょう。解答についても、上記のサイトなどを参照ください。ここではアプローチ法と正誤判定などに重点を置きたいと思います(いつもの紙面講義と異なり、こちらに問題を掲載はしません)。
なお、僕が解いていた時に引っかかってしまったところについては、引っかかった理由も解説します。

難易度:A=標準、B=標準(代々木ゼミナール公式サイトより引用)


問1 メモのまとめにある、「銭貨の流通について、国家は自ら鋳造したものしか認めなかった」、「国家が発行した銭貨は、様々な財政支出に用いられた」、ということに関連のある法令を選ぶ問題です。今回の問題は組合せ正誤形式の問題が非常に多かったです。やり方などは従来のセンター試験とほぼ同じなので、過去問などでこの形式に慣れている方はそこまで難しくなかったと思います。選択肢の史料はcを除くとほぼ初見史料となりますが、今回の問題ではそこまで気にする必要はありません。
国家が自ら鋳造した貨幣しか認めていないなら、勝手に貨幣を作ることは禁止されているはずです。よって、bが関連性が高い、といえます。また、国家が発行した銭貨は、財政支出に使われた、とあります。cは蓄銭叙位令の史料ですが、位を与える役割はあるものの、財政支出に関するものではないので、誤りと判定できます。このように、消去法をうまく活用していけば、初見の問題でも対応できます

問2 「一遍上人絵伝」の一部を取った問題で、この図版から読み取れるものを選ぶ組合せ正誤形式です。この図版の読み取りについては、「詳説日本史図録」(山川出版社)で詳解に解説されています。よって、図表の活用もしていただきたく思います。
a・bの判定は、銭貨の流通が一般的なのか、限定的なのか、という違いです。中世からは貨幣経済が流通しています。代銭納も定期市などでは行われていたことも一因となります(この図版からは出ていないが、全体が描かれているものはその様子も描かれています)。c・dの判定ですが、dの判定は保留にする人が多いと思います(僕も実際に解いた時は保留にしています)。cは明らかな誤文です。瓦葺の建築が見られる箇所がないからです。奈良時代から瓦葺の建築は見られるものの、一般に流通するのはもう少し先になります。よって、dは正文となります。そこで、dの正誤文は周辺知識として新たに加えておきましょう

問3 この問題は二文章正誤問題です(大まかにいうと正誤組合せ問題としてもよいが、僕は組合せ正誤と2文章正誤は区別します)。この問題は僕が少し勘違いをしていた部分です。撰銭令は戦国大名も幕府も出しています。細川氏と大内氏が寧波で争ったのは1523年の寧波の乱の説明です。これに勝った大内氏が日明貿易の支配を行うことができました。


問4 ようやく、単純正誤問題が出てきました。この問題を正しく判定するキーワードは「金の成分比率」です。これと重量の違いに気を付けないと③と④の正誤判定ができなくなります。ちなみに、似たような問題として2013年センター本試の問題があります。
➀と②はグラフを見ると判定は容易です。③は元文小判以降は金の成分比率が高かったのは正文です。ここで重量のことを気にしなくてもいいです。これを深読みすると正しい正誤判定ができなくなります(僕が間違えた原因はこれでした)。そう考えると、④が矛盾することが分かります。重量は減らしているものの、金の成分比率は変えていないのです。

問5 受験生が悩む年号並び替え問題です。しかも、金本位制や銀本位制など受験生泣かせの近代社会経済史の並び替え問題です。しかし、金本位制と銀本位制、どちらが先だったか、はそこまで難しくありません。「金銀複本位制→銀本位制→金本位制」の流れが分かればいいです。もし、金本位制の時期が分からなくても、Ⅱの中に対外戦争の賠償金、とあるので、これが日清戦争のこととわかればいいです。難しいのはⅢの戦費調達のため、ですが、これは西南戦争の内容です。当時の政府は西南戦争のための戦費が賄えなかったため、第十五銀行が戦費調達のために不換紙幣を発行しました(これが後のインフレに影響を及ぼし、松方財政につながります)。西南戦争は日本が銀本位制になる前のできごとです。銀本位制になったのは、1885年の兌換銀行券条例が制定されてからです。銀本位制が行われた時期が判定できれば解けたと思います。

問6 貨幣史のまとめ問題で、組合せ正誤問題です。a・bは知識問題、c・dは図3と解説文を用いて判定します。
中世に中国銭が流通、については正文です。しかし、私鋳銭は使われていました。よって、bが正文になります。c・dは解説文に1946年に新円切り替えにより、とあるので、金融緊急措置令の交付が正しいです。dはドッジ=ラインの説明で、固定相場制になった話です。

■大問2 解説

難易度:A=やや難、B=やや難(代々木ゼミナール公式サイトより引用)


問1 1・3・5世紀の中国の地図を古い順番に並び替える年号並び替え問題です。1世紀は漢(後漢)、3世紀は三国時代、5世紀は南北朝時代とわかれば並び替えることができると思います。ここは確実に正解を出したいところです。

問2 史料読解の2文章正誤問題です。Xの判定はリード文を参考にしていく必要があります。そうすると、張安とそれ以外の名前の表記が異なることが分かります。張安以外の漢字は当て字に近いことが分かるので、正文と判定できます。Yは日本史の知識で判定可能で正文です(実際は東北南部にまで支配が及んでいますが、ここではそこまで深読みする必要はありません)。


問3 事例をもとに正誤判定を行う組合せ正誤問題です。ここでは7世紀後半のできごと、であることを頭に入れておかないといけません。この正誤判定は時期相違で判定できます。
漢字の伝来は5世紀ごろに渡来人が伝えたとされています。史部という品部があるため、漢字なども使われていたことはわかると思います。このことが分かれば、実は問5も同様の根拠で正誤判定ができます。cは吉備真備が8世紀前半に遣唐使として遣使されたことがわかれば時期相違で誤文と判定できます(それ以前に、奈良時代の聖武天皇のもとで橘諸兄や玄昉とともに政治を行ったことが分かれば容易に回答できます)。何度もいいます。文章自体は誤りではありません。文章の時期が指定時期と合致しないから誤文なのです

問4 今度は評価と根拠を組合わせる組合せ正誤問題です。aは時期正誤で誤りです。勅撰の和歌集が「古今和歌集」とわかればすぐに判定できます。cはわからない人は保留にすると思いますが、正文です(分からなかった人は周辺知識で加えておきましょう)。dは前半部分の説明は寝殿造なので正文ですが、後半の畳の話は中国風の話ではありません。よって、こちらが誤文となります(ただし、文自体は正文で私立入試でも正誤判定で使われてます)。もっともらしい正誤文を用いているように思いますが、正しい日本史の知識を使えるようにしないとこういう問題で引っかかります(特にcの正誤判定に迷った人は苦戦したと思います)。なお、dの正誤文は周辺知識で押さえてください

問5 単純正誤問題です。この根拠は問3の内容が分かっているなら、➀が誤文というのはすぐにわかります。中国の冊封体制からの離脱は7世紀の遣隋使の派遣のときです(史料は非常に有名です)。文字の使用は渡来人が伝えた5世紀以降とわかるなら明らかな誤文となります。③は周辺知識として加えておきましょう。

■その後の問題は

今回は全ての解説をするならかなりの分量を要するため、大問2つごとで区切っています。

→続く

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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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